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食い気? 色気? の夏祭り

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食い気? 色気? の夏祭り
食い気? 色気? の夏祭り 食い気? 色気? の夏祭り

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デートは仲良く3人で 

 始まったばかりの祭りには、既に人々が集まって思い思いの出店を練り歩いていた。そんな中で浴衣ならぬカナン衣装を身に纏い、祭りを楽しむリネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ)フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)がいた。
「丁度、蒼空学園にもチラシが貼ってあったから来てみたけれど……結構盛況ね」
「リネン、迷子にならないように手を繋ぐ?」
「……いや、一応迷子を心配されるような年じゃないけれど」
 フリューネの言葉に深く考えず答えたリネンに、クスクスと笑いながら「そうね」と短く答えて軽くリネンの腕に自分の腕を絡ませた。
「せっかくリネンが誘ってくれたんだから、デートらしくしましょう」
 リネンが驚く前にフリューネは歩き出した。

 リネンとフリューネは出店を色々と見て回り、時には人混みに押されながらではあったがのんびり楽しんでいた。

 出店は食べ物を置いていたり、小物や手作りの装飾などが売っていたりと様々なものがあって見ているだけでも楽しめるものが多かった。その中でフリューネはある出店を前に惹かれるように立ち止まる。
「フリューネ? なに? 何か珍しいものが……あっ!」
「え? げ!? リネン……と、フリューネ!?」
 フリューネがカナンの雑貨に目が行ってしまい、売り子に気付かずにいると彼女の横からリネンが驚いた声を上げているのを耳にして、そこで初めてフェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)に気付いた。
「え、フェイミィ? あ……そういえば、お祭りでは出店も募集をしてたわよね」
「何してるのよ、フェイミィ……というか、『げ!?』て何よ、『げ!?』て」
 2人に見つかったフェイミィは、軽く頭を抱えてしまった。

「知らなかったわ……フェイミィ、このお祭りに来る事も出店出す事も言わなかったし」
「いや、だってそれは……リネン、普段はロスヴァイセ邸で暮してるだろ? それでオレも言いそびれたっていうか……」
 およそフェイミィらしくない、ごにょごにょと言い澱む様子にリネンとフリューネは2人で頷き合った。
「せっかくだから、私達もお店手伝うわ」
 しかしリネンとフリューネが言い出した事に、フェイミィは思い切り頭を横に振った。
「いや、それだめだろ! デートの邪魔しちゃわりぃし!」
 フェイミィが断る事は想定内だったのか、リネンとフリューネはフェイミィの両脇をがっちり固めて出店の手伝いを再度申し出た。
「カナン復興のお祭りでもこんな感じだったわよね。あの時はフェイミィが譲ってくれて……」
「ここで借りを返していかない? ね、フリューネ?」
 リネンの言葉に大らかな微笑みを見せて頷くフリューネに、それまで頑なに断っていたフェイミィもついに陥落せざるを得なかった――。


 ◇   ◇   ◇


 売り子が3人になったフェイミィの出店は客足も良く、雑貨やカナン風の衣装を手に取る人達が気に入った品物を買っていく。既にドライフラワーは売り切れて残す商品も僅かになってきた。
「3人で売り込むとやっぱりお客さんも呼べるわね。お手伝いを買って出てお役に立てないのじゃ申し訳ないし」
「美人3人で売り子してるんだもの、上出来よね!」
「……ありがとう。ごめんな、2人共……気使わせちゃって」
「全く……気を使っているのはフェイミィ、あなたの方よ」
 カナンの衣装を包み、買い物客に渡しながらリネンはビシッと言った。どこかギクシャクとした態度のフェイミィの様子を解ってはいたものの、いつもの彼女で接して欲しいという気持ちもどこかにあったのかもしれない。
「はい、喧嘩はしない。それはそうと、もうすぐ花火が始まるらしいから……どうぞ?」
 差し出されたのは爪楊枝とたこ焼き――
「……フリューネ、どこ行ったのかと思ったら」
「あら、そろそろお腹が空く頃だと思ったのよ。お腹が空くと怒りっぽくなるでしょう?」
 リネンとフェイミィへたこ焼きを差し出しながら、フリューネも1つ取って口へ運ぶ。それにつられて2人もたこ焼きを摘みながら出店から花火が上がるのを待った。


 ◇   ◇   ◇


 ドーーーーーーン……!


 未だ賑わう出店から見える花火は、夜祭の明かりでその鮮やかさが少々目立たなくなってしまったとはいえ、地球で上がるものよりも随分凝ったものであった。
「うわぁ……ハート型に上がるのも聞いた事はあっても見たのは初めてよ」
「大輪の花も勿論綺麗だけれど、時々こういうお遊びっぽい花火があるのは面白いわね」
 出店を行き交う人々も、今は花火を眺める事に集中しているらしく商売をする店の人も手を休めて夜空を飾る花火と音に祭りの余韻を楽しんでいた。

「……あ、あのさ。オレあっち向いてるから……」
「え?」
 フェイミィがリネンとフリューネに突然背を向けて花火が上がる方向とは逆を向いてしまった。
「フェイミィ、そちらを向いては花火が見えないんじゃ……?」

「気を利かしてるってどうして解ってくれねえんだよ!!」

「バカね、フェイミィ」
「フェイミィ、そういう気の利かし方はリネンが怒ってしまうわ……」
 リネンは後ろからそっとフェイミィを抱き締めると、更にリネンと一緒にフリューネがフェイミィを抱き締めた。


 暫く言葉も発せず、微動だにしなかったフェイミィが時間をかけてゆっくりと口を開いた。
「2人に、ずっと聞きたいと思ってた……2人共、幸せか……? 幸せにやってるか?」
「勿論よ!」
「ええ、幸せよ」
「……そっか。良かった……なら、良かった!」
 くるりと向きを変え、フェイミィはリネンとフリューネを抱き締め返した。

 大きな花火が3人を照らすように打ち上げられると、3つの影は1つになって祭り会場の地へ伸びていたのでした。