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死神動画 後編

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■救世主の巣窟

 運営の住処へ突入よりも少し前の時間。
 関羽とアーデルハイトは安アパートを取り囲むように団員を配置させると、その住居を睨み付ける。
「ここに死神動画の運営共が潜んでいると」
「うむ、そのようじゃの」
 鋭峰が言う情報が正しければ、空京のこの住所がそうだという。
 それだけでは確信が得られなかったが、少し調べてみればつい最近に全ての部屋が同時期に入居したという話があった。
 それも、全く同じ日時に。
「これは間違いないな」
「まぁ、違ってもすみませんでしたで済むんじゃ、気にするでない」
「それはよいのか……?」
 カラカラと笑うアーデルハイトの考えに、関羽は驚きを隠せないと言った様子で呆れているようだ。
 最も自分達の役目は包囲網を崩さないことで、突入は契約者達に任せてある。
 信頼のおける彼らなら間違いなく連中を捕縛してくれるだろう、そう確信していた。


「流石、アーデルハイトの名前ね」
 これだけの人員が空京の市街地に配備さえ、安アパートを包囲する。
 簡単に考えれば何か事件が起きており、野次馬が出てしまいそうではあったが、リネンが『アーデルハイト・ワルプルギスがご迷惑をおかけします』と広告しただけで、野次馬は一切発生しなくなっていた。
「さて、ヘイリーの方はうまくやってるかしら?」
「その辺はセレアナも一緒にやってるからね、大丈夫よ」
 籠手型HC弐式・Pのサーモグラフィ機能を操作し、安アパートの熱源を確認しながらセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はそう返した。
 ヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は連中の脱出路を調べ、そこに罠を仕掛けている。
 セレアナの目的は脱出路を調べて待機する事だが、やる事は一緒なので2人で向かっていたというわけだ。
「15人、か。2階建てのアパートっていっても見た目だけで中は改造されて広間状態ね」
「あら、それはこっちにとっても好都合じゃない」
 表示される熱源は15。
 アパートの中を縦横無尽に歩き回っており、複数あるドアの中は1つの部屋になっていることがわかる。
 それは、アパートの中には一般住民が居ないことを示しており、住民を巻き込むという恐れがない。
「鳥さん達も、変な笑い声をする人達だけが出入りしていて、外に変な物を仕掛けてて危ないって言ってましたよ」
 両腕に鳩と鴉を載せ、話を聞いていたティー・ティー(てぃー・てぃー)がそう告げる。
「……大丈夫かしら?」
 どうやら、罠があるようだ。
 となると最も近い場所で調査をしているヘリワードとセレアナの事が気になり、リネンは2人が向かったと思われる方向へ視線を送る。
「お待たせっ!」
 リネンの心配はさておき、ヘリワードは駆け足でやってきた。
「ああ、よかった」
 リネンは無事な姿を見てほっと胸を撫で下ろす。
 また、あの猟犬によってやられてしまったのではないかという不安が胸をよぎっていたが心配で終わったようだ。
「セレアナは裏口付近で待機してるってさ」
「了解、じゃあ後は突入あるのみね」
 そんなリネンの心配はさておき、ヘリワードはセレアナの伝言をセレンに伝える。
「よーし、じゃあ行きますのー!」
 自分が一番先に行くんだとばかりにイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)はアパートのドアへと向かっていく。
「待て、イコナっ!」
「ふあっ!?」
 勢いよく歩き出したイコナの首根っこを掴み、抱きかかえるようにして源 鉄心(みなもと・てっしん)は引き寄せる。
「な、なんですの!?」
「見ろ、罠だ」
 困惑するイコナに鉄心は草むらに隠れるワイヤーを指し示す。
 簡単なブービートラップだが、死神動画という名前から電子的トラップを警戒してしまう心理をついた嫌らしいものだ。
 鍛え抜かれた第六感がなければ見逃していただろう。
「監視カメラの類はなさそうだが、念を入れて近づくぞ」
 そう言って鉄心はベルフラマントを羽織り、その気配を薄くさせるとイコナやティーも倣うようにして羽織る。
「じゃあ、僕は鉄心さん達と2階から間接的に攻撃を仕掛けますよ。合図をしたら突入を」
 鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)は鉄心達に続き、セレンとリネン達は頷き、それぞれに行動を開始する。