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寝苦しい夏の快眠法

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寝苦しい夏の快眠法
寝苦しい夏の快眠法 寝苦しい夏の快眠法

リアクション

「また夢札だよ。しかも今度は快眠効果付き、これは使わない手は無いよね♪」
「前の時と同じく嫌な予感しかないが、折角だ使ってみるとするか」
 夢札使用の経験があるルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は使用法に戸惑うことなく無事に快眠した。ただルカルカがすっかり遊ぶ気満々に対してダリルは前回同様双子が茶々を入れに来ると考えながら。

 ■■■
 時は未来、謎の異星人の超長距離攻撃により地球は死の星になろうとしていた。

 宇宙戦艦のドック。

「人類滅亡まであと一年……こんな事もあろうかと密かに宇宙戦艦ラグナロクを建造した」
 ダリルは出艦を待つ宇宙戦艦を見上げながら乗組員の一人に説明していた。
「つまりそれに乗って人類を救う方法を見付けに行くって事だよね。よくあるSFだね」
 夢と分かっているためルカルカは気楽な返答である。
「よくあるかどうかは知らないが、ただ一つ問題がある。滅亡に近付きつつあるため人手も積み込むエネルギーも十分ではない故戦艦は完成したとは言え万全ではない」
 ダリルは手に持つ端末で宇宙戦艦の憂いを伝えた。話から分かるようにこのダリルはルカルカの夢の住人である。
「心配無い無い。乗艦して調整したりどこぞの星で補給すればいいって……というか凄い大きさ」
 ルカルカは脳天気に宇宙戦艦を見上げた。
 その時
「戦術長として乗り込む船員は君か」
 ルカルカにとって聞き知った声が背後からし
「……この声は……団……金艦長……それに羅副艦長」
 急いで振り返った。そこにいたのは見慣れぬ服装をした金 鋭峰(じん・るいふぉん)羅 英照(ろー・いんざお)がいた。一瞬、癖で団長と言いそうになったが頭にあるこの夢の設定を急いで口に通した。
「はい。そうです。どうかよろしくお願いします」
 ルカルカは敬礼し初対面の対応をした。
「あぁ、期待している」
 金艦長は現実と変わらぬ調子で言った。
「金艦長、羅副艦長、例の星との密かなる同盟が決裂したという話を聞きいたのだが、真偽の程は……」
 ダリルが人伝で聞いた他の星々の状況の確認を入れる。
「真実だ。故に例の星の助力は得られぬためこの艦の補給星も変更済みだが、全宇宙が滅亡が近いため航行中に進路変更は必要だろう」
 羅副艦長が淡々と答えた。滅亡が近いのは地球だけではないというとんでもないハザード状態。
「……影響はともかく原因は全宇宙共通。謎の異星人により宇宙滅亡時代に突入したと言われる今、解決法を発見した者が覇を得られるという」
 金艦長は宇宙戦艦を見上げながら淡々とこの先に待つ修羅を想像していた。
「……(設定は分かっているけど、凄い事になってるなぁ)」
 ルカルカは胸中で苦笑していた。
 ドックの場面はここまでとなりルカルカの夢はがらりと場面変更。

 艦橋。

「地球を救い、全宇宙の覇を手に入れるため出艦」
 金艦長は艦長席から少数精鋭の船員に命じた。
 その傍らには
「私達と目的を同じくする者の他海賊行為を行う不逞の輩もいるらしい故索敵は怠らぬようにしてくれ」
 羅副艦長。
「頑張ります!」
「任せてくれ」
 ルカルカとダリル。
 そこに
「ラグナロク砲のメンテ完了したぞ」
「積み込んだエネルギーが少ねぇから補充するまでは連発出来ねぇけど」
 技術者の格好をした双子が何食わぬ顔で現れた。
「ヒスミにキスミじゃない。どうしてここにいるの? というか本物だよね?」
 ルカルカは驚いた顔でツッコミを入れた。
「おう、本物だぜ」
「どうしてって決まってるだろ、面白そうだったからだよ」
 顔知ったルカルカに双子はカラカラと悪戯っ子の顔。実は他の夢で結婚式で悪戯をした後だ。
 その時
「前方に敵艦発見。当艦を包囲した模様」
 艦体の操作機器を確認していたダリルが声を上げる。
「ラグナロク砲で一掃せよ!」
 報告を聞くやいなや金艦長は鋭い双眸をさらに鋭くして命令を下した。
「了解!」
 ルカルカは急いでラグナロク砲発射パネルの所へ。
「それじゃ、俺達は仕事に戻るぜ」
「敵艦殲滅しろよ」
 双子は仕事に戻った。
「安全ロック解除! 行くよ!! 波動……じゃなくラグナロク砲発射!」
 ルカルカは安全ロックを解除してラグナロク砲を発射しようとした瞬間
「一寸待て」
 どこからともなく本物のダリルが登場し夢の住人ダリルを『光条兵器』で一刀両断。
「ああっ、もう、惨いなぁ」
 ルカルカは思わず声を上げた。
「どんな夢を見ようと勝手だが、これは幾つかまずい部分がある。却下だ」
 所々見覚えがある設定にダリルがツッコミを入れると
「え〜、だったらダリルの夢、見せなさいよう」
 ルカルカはぶぅと不満そうに反論。
 そのためダリルの夢へと行く事に。ついでに双子も連れて。

 ダリルの夢。

「ここが俺の夢だ」
 と言ってダリルが導いた夢はというと国軍の観兵式であった。
「……」
 いつもの威厳ある表情で国軍総司令たる鋭峰と傍らにいる参謀長の英照は一糸乱れぬ兵達の歩み、次々眼下に現われる戦車を始めとした陸戦兵器、空にはイコンの編隊などを見ていた。
「国力の隆盛が見事に現われた壮観な眺めだ」
 ダリルは鋭峰達を含めた幹部の警護を兼ねた随行員として付き添っていた。
 そして
「さて……」
 鋭峰が兵達に向い訓示を述べようとした時
「うわ、何これ現実的過ぎて面白みが無いよ。つまんない。ね、二人もそう思うよね?」
 ルカルカが大袈裟にがっかりを示し隣の双子に同意を求めた。
「あぁ、つまんねぇ」
「夢なんだからもうちっと面白いもの見ろよ。前の羊の方がマシだったぞ」
 双子も思いっきりだめ出しをするなり兵達の所に飛び込み派手に悪さを始めた。
「……あいつら」
 ダリルは通常運転の双子の様子に呆れた。戦車が見事に落書きされたり何かしらの魔法薬で兵士が可愛らしい動物になったり派手な花火が上がったりおかしなものが現れて踊ったりなど派手な悪戯ばかり。

「乱入者を速やかに確保せよ。出入り口は全て封鎖し、逃亡を防げ」
 鋭峰は訓辞を取りやめ、双子確保の指示を下す。
「……俺も行くか」
 ダリルは双子の知り合いとして武器を手に止めに行こうとする。
 その時、
「夢なんだから一寸くらい良いじゃん。邪魔をするっていうなら」
 ルカルカが楽しい悪戯だと判断しいつもと違って双子の味方になり武器を構えて立ち塞がった。
「……あいつらの味方をするという事か(相手をしている隙に被害が拡大する)」
 ダリルはちらりとルカルカから暴れる双子に視線を向ける。被害は拡大する一方。
「ここは私が引き受ける。現場に向かい、乱入者確保の助力をしてくれ」
 ダリルが被害現場を気に掛けている事を察した英照が間に入った。
「……では」
 英照の言葉に甘えて武器を握り直してから双子の元に向かった。

 ダリルが去った後。
「ありゃ、ダリル行っちゃった……という事は団長と参謀長がルカの相手って事。うひゃぁ」
 ルカルカは自分と敵対の構えを取る鋭峰と英照に苦笑する。
「君は有能な軍人だ。今ここで正しき判断をするのならば今回の件は不問にふすが」
 鋭峰が優秀で公私ともに信頼を置ける相手のため慈悲を見せ
「聞き入れないと言うのならば、こちらも容赦をする理由はない。拘束し、後ほど諮問させて貰う」
 鋭峰を護るべくルカルカの前に立つ英照は鋭峰に代わり処遇を伝える。
 現実でも付き合いのある二人をじっと見た結果
「……団長、参謀長、ごめんなさい」
 申し訳無さそうに謝り違反する事に決めた。
 その時、
 鋭いレーザー音、派手な爆撃音、大量の悲鳴が轟き、双子の悪戯のせいもあってかこの場にいる兵士達が対応する隙無く次々とやられ地に伏していく。
「ほえ!? あれはルカの夢の……しかも敵艦っぽい」
 ルカルカは鋭峰達から視線を外し、惨事の元凶である空を駆る幾つもの宇宙戦艦を睨んだ。
「おい、これを使え!」
「あいつらをやっつけろ!」
 双子がルカルカに声をかけ、ウォッチと小さな円形の板きれを投げた。
 上手くキャッチしたルカルカは
「何、これ?」
 手にある双子が作製したと思われる道具に疑問符を浮かべた。
「ふむ、フライボードに機甲鎧か。あの者達は技術者か?」
 鋭峰はルカルカの手元の道具を見るなりすぐさま正体を当てて敵艦の乱入で逃げ惑う双子に不審な顔を向けた。
「はい、宇宙戦艦ラグナロクの技術者です(団長達も夢の住人だからルカの夢設定も混じったのかな)」
 ルカルカは双子の身の潔白を明かしつつ目の前の鋭峰に自分の夢設定が混じっている事に気付いた。
「我らは兵を指揮し、地上から援護を展開する。君は機甲鎧を纏い、あの艦隊を」
「……ジンの護衛は私が務めます」
 鋭峰は敵対を崩し英照はルカルカに向けていた武器を降ろした。
「はい、任せて下さい」
 ルカルカはこくりと信頼の目を向ける鋭峰達の顔を見比べた後、腕にウォッチを巻き、何かしらのボタンを押して天へと掲げ
「機甲鎧:剣(つるぎ)、装着!!!」
 ヒーローもののように熱く叫び、変身シーンが展開した。
 展開後。
「うわぁ……でもかっこいいかも(何かカオス展開だけど面白いからいっか)」
 近未来SFの様な機械製の鎧を纏い二刀のブレードを手にしていた。
 そして、フライボードを地面に放って宙に浮かせてSFチックな長方形のボードに変形させた。
「団長、参謀長、行って参ります」
 ルカルカはフライボードに乗って敵艦へ突貫。
 そして
「はぁぁぁぁ!!」
 二刀のブレードを操り敵艦を容赦無く真っ二つに斬ったり飛んで翻弄し隙を突いて貫いたりと見事な戦いぶりを見せるルカルカ。
 その間に鋭峰と英照は地上兵を指揮しルカルカの援護に回った。

 一方。
「……素速いな。もう姿が見えない」
 ダリルは双子の元に駆けつけるもすでにこの夢から脱出し影も形も残っていなかった。
「……しかし、元々俺の夢だったはずがとんでもないカオス展開に成り果ててしまったな」
 ダリルはルカルカの夢が入り込みカオスな惨状に疲れの溜息を吐いていた。
 この後、無事に全ての敵艦を殲滅した所で世界は白んだ。

 ■■■

 覚醒後。
「どんな無茶も通るなんてさすが夢だね。折角だからあの二人に報告して盛り上がろう」
 ハチャメチャな夢を見てご機嫌なルカルカは夢の様子を胸中で反芻した後、双子に報告の連絡を入れて盛り上がっていた。

「……疲れを癒すはずの睡眠でなぜ疲れねばならんのだ……少し寝直すか」
 ルカルカとは対照的にダリルはお疲れであった。それも仕方無いだろう。何せ調子ノリノリの双子とルカルカを相手にしたのだから。
 ともかくダリルは寝直した。