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番長皿屋敷へ



「はーい、チャーハン山盛り一丁、おまちどおさま」
 お菊さんが、野郎共が集まっているテーブルに、ドンとてんこ盛りになったチャーハンの大皿をおきました。
 ここは、番長皿屋敷です。相も変わらず、腹ぺこの学生たちには、お菊さんが格安で食事を提供しています。
 番長皿屋敷の隣では、食堂番長イコン食堂を開店していますが、大味のせいか、客入りは今ひとつです。
「で、ナンの奴はどこへ行ったんだ?」
 番長皿屋敷の大テーブルを占領して、シオン・グラード(しおん・ぐらーど)が、華佗 元化(かだ・げんか)に訊ねました。
「さあ、山へ行くとかなんとか言っていたがな」
 あまり興味なさそうに、華佗元化がシオン・グラードに答えました。つい先日、山へと旅立っていったナン・アルグラード(なん・あるぐらーど)を見送ったばかりです。
「山か。まったく、なんでそんな所へ」
 酒のコップをかたむけながら、シオン・グラードが首をかしげました。
「なんでも、元従者を見つける旅だとかなんとか。まあ、お前の嫁と娘といい、みんな旅好きだってことだ。お前だけだぞ、こんな所でくすぶっているのは」
「ほっとけ」
 そう華佗元化に言い返すと、シオン・グラードが酒をあおりました。
「シオンさん、奥さんに逃げられたんですか?」
 同じテーブルにいたフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)が、チャーハンの大半を自分の巨大取り皿に移しつつ容赦なくツッコミました。
「逃げられたんじゃないやい!」
 シオン・グラードが、即座に言い返します。どこか、痛いところを突いてしまったようです。
「まあまあ、シオン様よりも、今は、ナン様とうちのレティシア様のことでしょう?」
 すかさず、結城 霞(ゆうき・かすみ)が冷静にフォローしました。
 フレンディス・ティラの所のレティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)も、いなくなったニャンルーたちを追っていったのです。どうやら、ナン・アルグラードとレティシア・トワイニングのニャンルーたちが駆け落ちしたようなのでした。
「二人ともずいぶんと意気込んでたけど、猫に厳しくできるとは思えないし、帰ってきたら猫増えたりしてね」
 ジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)が苦笑します。
「ニャンルーが増えようが、減ろうが、どうでもいいよ、そんなこと」
 投げ槍気味に、シオン・グラードが言いました。
 そんなことだからと、華佗元化がまたシオン・グラードにツッコミます。
「まあ、二人とニャンルーたちには、待ちぼうけさせられることがたびたびでしたからね。もぐもぐ」
 すでにチャーハンを頬ばりつつ、フレンディス・ティラが言いました。
「フレイ様とシオン様は、そんなにもお二人をお待ちする機会が多かったのですの? わたくしもサクラ様と山田様にお会いしとうございましたわ」
 そう、結城霞が言いました。
「ああ、多かったさ、まったく。おーい、酒おかわり!」
「ああ、私も、チャーハンおかわりです!」
「はいよー」
 二人を待っていられるかと、シオン・グラードとフレンディス・ティラが、お菊さんにおかわりを頼みました。