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そして、蒼空のフロンティアへ

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    ★    ★    ★

 海京にあるイコン格納庫では、メイ・ディ・コスプレ(めい・でぃこすぷれ)が、ダスティシンデレラver.2の整備を行っていました。
 改造に改造を重ねられたイコンは、まさに掃きだめのシンデレラでした。
 初期のダスティシンデレラは、BMIが使えなきゃやだとばかりに、レイヴンのフレームを抜き出してきてベースとしています。それに、中古のスクラップ屋で見つけた、撃破されたシュヴァルツ・フリーゲの外部装甲を無理矢理貼りつけた物です。なにせ、そこで資金が尽きましたので、コックピット周りは喪悲漢と離偉漸屠から部品を拾ってくっつけています。BMIのおかげで動くものの、コントロールスティックなどはほとんど飾りです。
初陣は、確か、インテグラルナイト戦だったよね。まだ、訓練始めたばっかのひよっこにスパルタすぎと戦慄を覚えたものだったけど。でも、あの経験が、技量向上のモチベーションになったのは確かかなあ」
 思い出すも、最初から強大な敵と戦わせられたのは、良かったのか悪かったのか……。タイマンではなかったのは幸いだったと今でも記憶しています。
 ゴーストイコン相手に無双したこともありましたが、ドラゴンの群れ相手に慌てて逃げだしたこともあります。
 現在のバージョン2にレベルアップしてからは、BMIはセラフィム用の2.0に換装してあります。とはいえ、その他はほとんど変わっていません。
 けれども、この頃から、他のイコンと手合わせしたり、徐々にイコンの操縦にも慣れていったところです。もっとも、BMIのおかげか、イコンとの一体感のおかげか、いつの間にか猪突猛進の攻撃スタイルが身に染みついてしまっていました。周りからは、脳筋とまで言われる始末です。
 ちょっと、いろいろなことは思い出せない部分もあるのですが、そのせいで攻撃が単純になってしまっているのでしょうか。
「うーん、もっと、訓練しないとダメかなあ……」
 過去を振り返ってもしょうがないかなあと、メイ・ディ・コスプレはのろのろとダスティシンデレラver.2に乗り込みました。
 発進するダスティシンデレラver.2に続く形で、岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)山口 順子(やまぐち・じゅんこ)の乗った天雷も、イコンベースを発進していきました。
 ツインリアクターとトリニティシステムの長所の融合を計っていろいろと改造を施していますが、あまり成果は上がっていません。理論的には可能なはずなのですが、それぞれの調整が微妙すぎるのと、各種回路が特化しているために、どうしても過負荷がかかってしまいます。ブラックボックスが多いせいもありますが、やはり、第三世代機の延長線上の改修では、第四世代機を誕生させるのは難しいようです。バージョンが3.9になろうと3.91になろうと、第三世代であることには変わりはないのですから。
 とはいえ、誰かの手によって第四世代機の理論が確立すれば、そのときは岡島伸宏たちが一番第四世代機に近づいていたテストパイロットということになるはずです。少なくとも、そう評価されるように、岡島伸宏は頑張っていました。
「まあ、エネルギーケーブルやフレーム用新素材なんてホイホイ用意できるものでもないしな。まだまだ先は長いんだろうな。今日も、二人っきりの飛行を楽しむさ」
 暗にデートだよと言いながら、岡島伸宏はツインリアクターシステムを試験用の並行運転モードにしながら海京の周囲を遡行していきました。
 イコンベースのある離れ小島との間の試験空域内で、主に天雷の安定性能を試験していきます。
「ねえ、伸宏君、私、デートするなら、もっと落ち着いた場所の方がいいなー」
 山口順子が、ボソリと言いました。
 イコンに乗るのは嫌いではありませんが、デートまでイコンの飛行では、こう、ちょっと気の休まる暇がありません。たまには、のんびりとお互いを見つめあっていたいものです。
「んっ? 何か言ったか? ちょっとレーダーを確認してくれ」
 計器に集中していたらしい岡島伸宏が、山口順子に言いました。
 もう、仕方ないなあと山口順子がレーダーを再確認すると、何か巨大な質量物が近くに落下してきます。熱反応も散発的に変化していて、何やら戦闘でも行っているのか、小爆発を繰り返しているようにも分析できます。
「何これ。さっきまで反応なんてなかったのに……」
「ああ、突然現れやがった」
 戸惑う山口順子に、岡島伸宏が言いました。
「識別信号確認できず。高熱源体反応。攻撃来ます!」
 山口順子の報告に、岡島伸宏が慌てて回避行動をとりました。
 流れ弾らしいミサイルが、天雷をかすめるようにして飛んでいき、空中で爆発します。
「何よ、これ、やったなー!」
 流れ弾が近くで爆発して、メイ・ディ・コスプレがプッツンしました。
「空域にダスティシンデレラver.2を確認、攻撃を開始するようです」
「仕方ない、こちらも攻撃を開始するぞ!」
 岡島伸宏は、天雷にバスターライフルを構えさせました。