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創世の絆第二部 第二回

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創世の絆第二部 第二回

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インテグラル・ナイトを倒せ2

 イコンともども倒れたナイトを見て、南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)はフーっと息をついた。
「しっかし……なんだよあのパワーは。まさしくバケモノだな」
アラビア語で突撃の意を持つファーリス、ラ・イーナのモニターに映し出される斃れたナイトの巨体。どこかニシキゴイを思わせる頭部を傾げ、ドラゴニュートのオットー・ハーマン(おっとー・はーまん)の目は、コ・パイロット席からじっと横倒しのまま覚醒の効果切れを待つ杏らの試乗機に注がれていた。
(ウゲンの復活とあわせたように配備されたシパーヒーにも未解明のヒミツがあったようであるが……。
 ……まあこのへんの頭を使う仕事は、同じガッコの頭のいい友人に任せると光一郎は言っていた。
 やはり第三世代機プロトタイプというだけあって、制御に難があるのであろうな……。
 乗ればわかるさ、きっと、などとも光一郎は言っておったが……。難しいようなのは今のやり取りでも明白。
 ここはそれがしがしっかりついていないとな)
オットーの物思いをよそに、行動派の光一郎は一体が斃れたと見てやってきたもう一体のナイトに釘付けになっていた。
「皆の役に立つために俺様ができることを考えてみたが、体を動かすしか能がねー。
 とはいえ、奇跡の薔薇の称号に恥じないよう華麗に舞いたいしよー。
 ここはやっぱ、今回の改造にかけて、ヒット&アウェイでアレを翻弄っていうのがいいだろうな。
 あのデカイの相手にどのくらい通用するかはわかんねーけどさ」
僚機のイフリート、ブリュンヒルデフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)から通信が入った。
「私たちのイフリートは召喚型のイコンだから、アイツの近くに召還するわ。
 ゼロ距離からのウイッチクラフトキャノンなら、ダメージは多少通るのじゃないかしら。
 私達に求められてるのは最悪持ちこたえる事。きつい戦いになると思うけど、大丈夫。私達にならできるわ」
フレデリカはイコンの特性を生かして、ゲリラ戦を仕掛けようと考えていたのだ。
「ですがフリッカ、召還を行うことができるのはこの戦いで一度だけ。慎重を期さなくてはいけませんね」
言葉では注意喚起を促したものの、ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)は無論全面的にフレデリカのサポートをする態勢をすでに整えていた。召喚を行ってう際のフレデリカの護衛、いつ、どのタイミングでイフリートを召還するか、また半端ではない間職を使用することも計算に入れ、叡智の聖霊と聖霊の力の準備も怠りない。飛行形態のスフィーダであるファーベル・バーニングソウルのコクピットから滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)の元気のいい声が皆に届く。
「俺らもたいしたことはできないかもしれないが、牽制に参加させてもらうぜ。
 皆で連携して、堅実に攻めていこう」
普段の面倒くさがりなところは消えうせ、それが今回の作戦への滝川の真剣さを物語っている。程イク 仲徳(ていいく・ちゅうとく)がパートナーに頷きかける。
「ボクは本来軍師だ。イコン操縦は上手くないけど 洋介君の支えになればいいなと思ってる。
 攻めのタイミングはボクの能力全てを動員させて当たるよ。
 この敵は、イコンファイターとしての高みを目指すのにちょうどいい相手かもね! 頑張れ! 洋介君!」
「ああ。ウゲンは一撃で葬っていたが、アレは異常だ。俺たちは俺たちのできるベストを尽くすのみっ!」
少し離れた場から支援攻撃を予定しているレイヴンTYPE―E、ダスティシンデレラのコクピットで、
マイ・ディ・コスプレ(まい・でぃこすぷれ)が呆然とナイトの巨体に目を見張っていた。
「えー? 初陣があんなのの相手ってちょっとスパルタ過ぎるんじゃないのぉ?
 てか、この機体ジャンク品の寄せ集めなんだけど大丈夫かな?
 ……いや、まぁ、きちんと使える部品は選んでるつもりだけどさ……」
メイ・ディ・コスプレ(めい・でぃこすぷれ)はキッとモニターを見据えてきっぱりと言った。
「気合で乗り切るのよっ! そんな弱気でどうするの!
 某先生も気合があれば大丈夫って言ってた!!」
「マイちゃーん? 気合でどうにかなるのは漫画だけの話だからね?
 ねぇ、やっぱり帰ろ……」
「……ねぇさん、情けない……そんなこと言ってると……」
ギっとメイがマイを睨めつける。
「あーうそうそ、それは勘弁して! あーもう、わかった!おねぇちゃんも覚悟決めればいいんでしょ、決めれば!」
「うん。……わかればよろしい。わたしの操縦技術だと直接戦うよりは援護。
 ともかく! みなさんの足をひっぱらないように。それが第一です!」
このメンバーの大本命、念願の第三世代機のテストパイロットとなれた柊 真司(ひいらぎ・しんじ)は嬉しさと興奮を押さえ込みながら、ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)と作戦を練っていた。
「序盤は大型荷電粒子砲で僚機と同様に牽制メインで。インテグラル・ナイトの最大のスキに合わせて『覚醒』。
 さっきのを見ていた感じでは、通常の銃撃と斬撃はあんまり効果無さそうだ。
 仲間と一緒に突撃、覚醒での溜め撃ちか溜め切りで一気にカタをつける」
「わかりました。最適なタイミングを計らせていただきます」
ヴェルリアが銀色の長い髪を後ろにさっと払った。海色の瞳が、コンソールに映し出される各種の情報を忙しくモニタリングし始めた。
ジェファルコンメイクリヒカイト‐Bst十七夜 リオ(かなき・りお)から、柊に向かって通信が入る。
「整備士としちゃ、新型とか試作機は早く弄ってみたいんだから、壊さずに持って帰ってよ。
 主に僕の為に!」
「……わかってる、ベストを尽くすよ」
リオはコ・パイロットのフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)のほうに頭をめぐらせた。
「修理できる範囲ならまだいいけど、大破しちゃ拙いから柊クンの護衛に回るよ。
 イレイザーは兎も角、それ以上格上の相手じゃ、こっちの攻撃はまず通らないのは前回で体験済み。
 足で引っ掻き回して、霍乱に回るよ。無理せず、無茶していくよ、フェル!」
「ええ……わかってますよ、リオ」

 6機は一斉に動いた。まずはリオの機体からレーザーマシンガンでの牽制射撃と、煙幕効果を狙ってミサイルポッドがばら撒かれた。ラ・イーナが持ち前の機動力を生かし、奇襲でマジックカノンでの先制射撃を撃ちこみ、さらにナイトの周辺を縦横無尽に駆け、幻惑を図る。ダスティシンデレラからウィッチクラフトピストルに続き、多弾頭ミサイルランチャーが射出された。ナイトの斧が一閃し、ほとんどのミサイルは空中で切り捨てられる。忙しくコンソールと戦っていたメイがそれを見て叫ぶ。
「うきゃぁ〜〜! あんな化け物相手、無理、やっぱ無理ッ! ねぇちょっとーっ!! いやあああああッ!」
「ねぇさん、騒がしい……んー……操作はきちんとしてくれてるから、ま、いっか」
ため息をつくマイ。
「さて、と。切り札を切らせて貰おう」
柊の第三世代機が光輝を放つ。パワーチャージにその行動の全てを注ぐべく、ナイトの攻撃をディメンションサイトと行動予測を駆使し、わずかな動きで回避する。目標をそれたナイトの攻撃は周囲の岩を砕き、弾けとんだ岩礫がガンガンと機体を打つ。ヴェルリアが覚醒の残り稼動時間をチェックしながらナイトの攻撃パターンをディメンションサイトで観察、分析しながら最高のタイミングを計る。ナイトの気をそらそうと、後方からラ・イーナのソウルブレイドがナイトめがけて討ち下ろされた。程?の指示に従い、滝川の機体からはナラカの禍々しい力を利用したヴリトラ砲がナイトのわき腹に炸裂した。
「注意をこっちに向ける。その隙に攻撃お願い」
リオの声が通信機から飛び出した。リミッター解除を行なったメイクリヒカイトはフルスロットルで加速、新式ビームサーベルを構えてナイトの巨体に体当たりをかます。
「ダメージは無理でも……隙ぐらいは作ってみせるっ!」
フェルクレールトが決意を秘めた声で囁く。ナイトがその重量に押されわずかによろめき、バランスを取るほうに注意が行く。そこに遠隔操作で何の前触れもなくナイトの眼前にイフリートの巨体が現れた。正対したイフリートからゼロ距離でウィッチクラフトキャノンの神炎がナイトの胸部めがけて墳出すると、さすがに不意を突かれたナイトの動きが止まる。ヴェルリアの凛とした声が響いた。
「今です!」
「こいつでトドメだ。受け取れ!」
柊の叫びとともに、ナイトの胸板に覚醒チャージショットが撃ち込まれた。同時に援護ないし牽制をしていたメンバーのイコンからも次々と追撃画が入る。胸板に巨大な穴が開き、苦悶の呻きを上げるナイト。馬に似た下肢ががくがくと震え、体を支えきれなくなったインテグラルナイトの巨大な体は横ざまに斃れた。