First Previous |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
Next Last
リアクション
クイーンへ
時はやや遡り、ビショップと契約者たちが戦っているころ。
戦闘開始時に魔法によるかく乱攻撃隊に参加していた神崎 優(かんざき・ゆう)と、そのパートナー神崎 零(かんざき・れい)は、撤退後皆の邪魔にならぬよう戦況を見ていた。先ほど、ウゲンは非友好的な意図を持ってインテグラル・クイーンの元に向かう動きを見せた。となればインテグラル・クイーンと対話するにはウゲンより先に彼女のところにたどり着く必要があった。遺跡のはずれのやや開けた場所に、香菜の影といった姿のクイーンは音無 終(おとなし・しゅう)と銀 静(しろがね・しずか)の機乗するクェイルと、イレイザー4体に護衛されて佇んでいた。
「今すぐ戦う気はない。クイーン、貴女と話がしたい」
優が呼びかける。インテグラル・クイーンはしばらく黙ってこちらを見ていたが、護衛を制する様な手つきをし、前に進み出てきた。
「イイだろウ」
「インテグラル・クイーン、俺には解らない事がある。
貴女達は何故、力を取り入れる? 何故仲間を増やしていく? そして何故滅びを望むんだ?
このまま破壊を続けて何が残るんだ」
零が畳み掛けるように言う。
「私には貴女達が過去に受けた事への復讐をしているような……。
私達に絶望や試練を与え、それを乗り越える事の出来る器なのかを見極めているように思えてくるの」
クイーンは黙って二人を見つめていた。
優が両手を差し伸べ、武器を携行していないことを示しながら、再度呼びかける。
「破壊を続ける本当の理由があるんじゃないのか?
俺は……全ての者と絆を繋げる為に戦い続ける。例えそれが貴方達であろうと同じだ
貴女はこんな俺を嘲笑うかもしれない。だが理解しあえれば無駄な戦いは避けられるはずなんだ」
「嘲笑う……? 絆……? それはナンだ?」
クイーンが首をかしげる。終が脇から声をかける。
「嘲笑の意味は知らなくていい。絆は……愛情を持って助け合ったりすることだ」
クイーンの脳裏に先日異文化を知るためにもいいだろうと、終が読んでくれた童話が蘇った。雪の女王に囚われた大切な幼馴染を救うために女の子が一人で助けに行く話だった。大切な存在、それはあまりに彼女らの存在意義とかけ離れていてしかとは理解できなかったが、強い魅力を感じたのは確かだった。
零が言葉を変え、クイーンに訊ねる。
「貴女達が全ての破壊を望む理由は何?!」
「何故……? ソレが我々の存在意義。与えらレた唯一。そシて、我々は進化しなければいけナい、からダ。――“偽物の力”には限界があった」
ここで一旦彼女は言葉を切った。
「我々は滅びを望まれていル。……我々は滅びをもたらすために造られ、そのように造られている」
「でも、それじゃあなたたちはただの破壊の道具なの? 生きる意味は……ないの?
自分のことを……考えたことはないの? 偽者の力って何?」
クイーンは眉間にしわを寄せたまま、問いには答えなかった。
「破壊……道具? 生きる……意味……」
そこに拍手の音が響いた。ウゲンだった。ファーリスのコクピットを挑発するように開けている。
「甘ったるい茶番劇はもう十分。早いところ、その力をこっちによこしてもらおうかな」
終がイコンをすぐさまクイーンの前に移動させ、優と零はイコンに踏み潰されないよう、急いで横に飛んだ。尋人のイコンがすぐに2人をすくい上げ、安全な場所へ避難させた。
「ウゲン、何の目的があってクイーンの力を狙うのかは分かりませんが……邪魔ですよ?」
終が言ってウゲンの機体をロックオンしたまま全てのセンサーを動員する。イコンが動く際のわずかな重心移動に注意を払い、動きを可能な限り読むためだ。
「目的? 身内が取られたものを、ただ取り返すだけだ。大したことじゃないさ」
「……彼女はまだまだ成長する。その先が見たいんだ! ウゲン、お前がそれを邪魔するというのなら死んでもらう!」
終が叫ぶ。終始無言のまま、静が殺気看破、フォースフィールド、マインドシールドを作動させる。ミラージュ分身を作り、その分身に紛れて嵐のフラワシでウゲンのファーリスに向かって飛びかかる。そこに尋人のテュールが飛び出してきて、2機のイコンは激しく衝突した。
「俺の邪魔をするな!」
終が叫ぶ。
「あんたがクイーンを守ろうとしているのと同様、オレもウゲンを攻撃させるわけには行かないんだ!」
そのとき、ビショップのいたほうで凄まじい光が炸裂した。
クェイルはすぐに体勢を立て直し、テュールとウゲンからインテグラルクイーンを守る位置に立ちふさがる。静が鉄のフラワシで防御を固めたとき、左上半身を大きく損傷したインテグラルビショップが駆けつけてきた。クイーンのほうを向いて炎の剣を振ると巨大な剣から大量の炎が滴り落ち、ウゲンらとの間に炎の壁が出現する。静が焔のフラワシでさらに2重の防壁を築く。
「急いで」
終の言葉にクイーンは頷き、ビショップと生き残ったイレイザー2体とともに森の奥へと姿を消した。ニル子がウゲンに声をかける。
「ウゲンちゃん、クイーンちゃん、どっかいっちゃったですよぉ?」
「……逃げたって感じじゃないな。あっちも何かしらの目的を達したのか?」
そう言ってウゲンはファーリスの向きをあっさり変えると、さっさとその場を後にした。
「――成長? 笑えるなぁ。夏來香菜が持っているより、よほど面白いことに使ってるみたいだ」
護衛としてクイーンとともに姿を消したビショップだが、左上半身に大きな損傷を受けつつも戦闘力は大して落ちていないようだった。
「クイーンはビショップと逃走……チェス勝負の行く末はまだわからんな」
ヘクトルは総員に作戦完了を伝え、引き続き遺跡調査隊の後方警戒に移るよう命令を伝えた。
First Previous |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
Next Last