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リアクション
何者かの影
「ホンマに見たんや、嘘はついておまへん」
通路の先で何かが動いた。清良川 エリス(きよらかわ・えりす)は確かに何かが動いたのを見た、と主張したのだが―――パートナーのティア・イエーガー(てぃあ・いえーがー)はと言うと、
「何かですか〜。何かでは分かりませんね〜。地縛霊でしょうか?」
「ちょっ……ちょっと止めてえな、どうしてそないなこと言わはるん」
エリスがビクつくたびに「んふふ〜」と笑みを浮かべていた。
「姿形だけのガーゴイルに壊れた機晶姫。次に現れるなら……そうね、やっぱり怨念の類じゃないかしら。討ち滅ぼされた側の無念と怨念の集合体なんかがピッタリだと思うわ」
「そんなピッタリ要らへん! 何のためのピッタリなん? 誰のためのピッタリなん? それがどうして今ピッタリ現れたん?!!」
頭を抱えるエリス、ティアは必死に笑いを堪えていた。
「まぁまぁ、そうビビるこたぁ無ぇよ」
大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が太い声で言った。「俺たちとキロス(キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす))が前衛を務めてんだ、何も心配は要らねぇぜ。なぁ?」
キロスに同意を求めたのかと思いきや、彼の視線は夏來 香菜(なつき・かな)の元へ。
「香菜も、何かあったらすぐに言えよ。戦いになった時は迷わず後ろに下がって良いからよ」
「だ、誰が怖いなんて言ったのよ! そんなこと一言も言ってないでしょ!!」
「いや、そういう事じゃなくてよ。つーか何だ? 怖いのか? 地縛霊」
「怖くないって言ってんでしょ! ってゆーか地縛霊は決まりなの?!! そんなの、どうやって殴ればいいってのよ!!」
殴る気なのか。まぁ言っても彼女も契約者なのだから、やりようは幾らでもあるでしょうが、やはり気質は『ウィザード』に収まらないようだ。
そんな風に心の中でツッコミながらに匿名 某(とくな・なにがし)は『銃型HC』を通路の先に向けた。
エリスが見たという動く物影。エリスはもちろん某も『禁猟区』を発動していたが特に悪意は感じなかった。地縛霊とは言わないが、おそらく魔物の類ではないだろう。ならば何だというのか。
発見された機晶姫は再びに意識を失ったと聞く。今は応急処置が施されているはずだが、再び話せるようになるかは不明だ。
希望的観点から言えばエリスが見た物影は別の個体、すなわち機晶姫であった可能性だってある。
「まぁ、そんな都合良くいくとも思えないけど―――って!!」
某の目にも確認できた。通路の先で何か動いた……いや、あれは人影か……だとしたら!!
「ふ〜ん。なるほど、面白い」
夜月 鴉(やづき・からす)が『ティ=フォン』でそれを激写した。ズーム最大最速連写で捉えると、それは北の砂丘で発見された「影人間」に瓜二つだった。
「こんな所にも出るとはな」
スマホを『籠手型HC』に接続して画像を解析。以前に撮られた物と比較すると、ほぼ一致する事が判明した。
影人間は再び暗闇の先へと姿を消し―――その前に先発隊の面々が一斉に飛び出した。
「追いかけるんだ〜。ふひふひひひ……」一緒に駆けながらにどっかの霊山の仙人 レヴィ(どっかのれいざんのせんにん・れう゛ぃ)が不気味に笑った。
「師匠?」たまらず鴉が訊くと、
「だってそうだろゥ? どこに罠があるかも知れないのに、ねぇ」
壁面の凹凸に隠れていたボタンを、レヴィは何故か知っていたかのようにポチッ!と押した。
「ちょっ! 師匠?!!」
ドン!!と何かが爆発したかのような音がして、天井が落ちてきた。
「ちょっと師匠!!」
「おぉ? あんな所にもボタンが……ふひひ」
落ちてくるのは一本道の通路の天井、この通路さえ抜けてしまえば―――先発隊の面々は全力で通路の先へと駆けた―――
「ポチッ!!」
「師匠ぉおおおお!!」
岩畳と思っていたのは先入観か。重厚な趣など完全に無視して、通路の床がパカッ!と開いた。
床を失えば真っ逆様。
アラム、キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)、ダイヤモンドの 騎士(だいやもんどの・きし)を含めた先発隊の面々は面白いように次々と暗い奈落の底へと落下していった。
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