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終りゆく世界を、あなたと共に

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終りゆく世界を、あなたと共に
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 ――まるで滅びて行く世界の中、たった二人きりで取り残されてしまったみたい。
 そんなことを、芦原 郁乃(あはら・いくの)は思う。
 事実、仄暗い部屋の中は全てが曖昧で、確かなものは秋月 桃花(あきづき・とうか)のぬくもりと鼓動だけ。
「怖い……怖くてたまらないよ……」
 ぎゅっと、桃花の柔らかい体を抱きしめてみる。
 ふわりと、頭に感じる桃花の手。
 だから郁乃は甘えるように桃花に聞いてみる。
「どうなっちゃうの? この世界が消えるって……こうしてるうちにすべてが無くなっちゃうの?」
 桃花からの返事は無かった。
 代わりに、郁乃の体に手が回る。
 それが契機となったかのように、郁乃もまた、桃花を強く抱きしめる。
「もぅ……力が強すぎですよ、郁乃様」
「あっ! ごめん、じゃ、じゃぁちょっとだけ緩め…」
「このままで……このままがいいです」
 桃花の小さな、照れくさそうな声が郁乃の耳に届いた。
「桃花……」
「郁乃様……」
 そのまま、2人だけの時間が始まった。
 互いの名を呼びあい、刻み付け、快楽を幸福を交換する。
「……またね、桃花」
「はい、また……」
 いつもと同じ挨拶をかわし、自然に唇を重ねる。
 そして、最後の時が訪れ――

「ゆ、夢……?」
 郁乃は飛び起き、周囲を見回す。
「郁乃様、おはようございます。朝ごはんの用意が出来てますよ」
 そして背後から聞こえる愛しい人の声に、全身の力が抜けたようにへたり込む。
「よかったぁぁぁぁ〜!!」
「い、郁乃様?」
「だいじょうぶだよね!」
 言うが早いか郁乃は桃花に、その襟元に手を滑らせる。
「うん、ちゃんと温かい」
「ちょ、ちょっと郁乃様!? い、いきなりそんなところ触っちゃ…」
「いいよね?」
「あ、ま、待ってっ」
 決して嫌がっているわけではない桃花の悲鳴を、郁乃は無理矢理抑え込む。
 そしていつもの……恋人同士の朝が始まる。