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【ダークサイズ】灼熱の地下迷宮

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【ダークサイズ】灼熱の地下迷宮

リアクション

 さて一方で、何とかダークサイズを倒したい秋野 向日葵(あきの・ひまわり)をはじめとする、正義の戦士チーム・サンフラワーは、今日も人手不足である。
 フレイムたんとは距離を置いて適度な冷気を発する氷属性モンスター『亀川』の傍で、彼らは作戦会議中。

「おいおっぱい(向日葵)。俺様が送っておいた例の物、ちゃんと持ってきただろうな?」

 ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)が、『亀川』で涼みながら向日葵に言う。

「ゲブーくん、今回ばかりは……ホントにありがとうっ!」

 向日葵がゲブーの手を握る。
 遺跡探索中に、服だけを燃やす不思議な炎を吐くモンスター、『別府』の被害にあった向日葵。
 見事に衣服を燃やされて全裸の憂き目に会い、モモと同じように布を巻いていた。
 向日葵は早速ゲブーからのプレゼントを紐解き、【青空と向日葵柄ブラジャー】【十八金ダイアモンドぽいリング】【真夏柄のワンピース】を取り出す。
 ゲブーは咳払いを一つ挟み、

「こほん、まぁ服もあれなんだがよ、そのリングはだな……」
「へえ、いがーい。ゲブーくん、こういうオシャレな服選べるんだね」
「てめえ、それとなく俺様ディスってねえか?」

 向日葵は空になった箱を探り、

「あれ? ねえゲブーくん。し、下着は?」

 と、ちょっと恥ずかしそうに所在を聞く。
 ゲブーは何言ってやがるという顔をし、

「ん? そこにあんじゃねえか。俺様が選んだシャレオツなブラが」
「いや、それはいいんだけど、その、ぱ、パンツは?」
「何言ってんだてめ。そんなもんねえよ」
「はあっ!?」
「たりめーだろ。ワンピース着るんだぜ?」
「ワンピースならなおさらパンツ要るんですけど!」

 ゲブーは仁王立ちになり、

「風でパンツが見えたら! 恥ずかしいじゃねえかっ! 分かるだろ、バカか!」
「お前がなーっ!!」
「うげっ!」

 向日葵は戴き物のプレゼント箱を、ゲブーの顔に投げる。

「もっと恥ずかしいものが見えちゃうでしょーが! ばかっ! もう、ばかっ!」
「このやろ、プレゼント貰っといてひでえ態度しやがるぜ!」
「サンフラワーちゃん、今作ったよ。これあげる!」

 【上質な布】を【ソーイングセット】で縫いあげた下着を、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が差し出す。
 【自前衣装】をスキルを使ったノーンの仕事はさすがに早い。
 向日葵は怒りの顔を一転させ、

「分かってくれるのはノーンちゃんだけだよぉ〜」

 と、ノーンを抱きしめる。
 向日葵が受け取ったノーン特製の下着。
 向日葵をイメージしたカラーなのか、なぜか黄色の横縞が入っている。

「ほう、さすがコスプレイヤーのクラスだぜ。てめえ、なかなか分かってるな」

 ゲブーはノーンを褒めるが、ノーンは意味が分からないままニコニコしている。
 向日葵は何とか揃った服の一式を見て、

「よかったぁ。じゃ、着替えるから」
「ああ、いいぜ」
「向こう向いててよっ!」
「うげっ!」

 向日葵はまた箱をゲブーに投げる。
 この暑さの中にワンピースとはいえ、どうにか服を手に入れた向日葵。

「予想通りに、いい感じじゃねえか……」

 ゲブーは満足そうである。
 そこに大岡 永谷(おおおか・とと)がやってきて、

「サンフラさん、服を手に入れたんだね、て……防御力ゼロじゃないか……」

 と、呆れた顔をする。
 今までの服も防御に優れていたわけではないが、フレイムタンにワンピースとはさすがに無茶と見る永谷。
 永谷は【エリート巫女服】を取り出し、

「せめてこれを着るといい。フレイムタンの熱はビーチとはわけが違うんだ。あっという間に肌がやられてしまうぞ?」
「そう言われればそうだね……」

 向日葵は言われるがまま、ワンピースの上に巫女服を重ね着する。

「みこふくー!」

 琴線に触れたのだろうか、ノーンの目が輝き始める。
 一方で永谷は冷静に人差し指を立てる。

「言っておくが、貸すだけだぞ? 今度焼失しても替えはないし、ちゃんと返してもらうからな?」
「だ、大丈夫だよ。こないだみたいな無茶はしないもん」
「大丈夫だよ! なくなってもまたわたしが作ってあげるもん!」
「大丈夫だぜ! 作ってる間は、俺様の手ブラがおっぱい守るもん!」
「ばっかじゃないのっ」
「うげっ!」
(大丈夫なんだろうか……)

 こうして改めてチーム・サンフラワーを見ていると、永谷の不安は膨らむ一方である。

「おお、ヒマワリ。皆に服を贈ってもらったのだな。それはよかった」

 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が巨体を揺らしてチーム・サンフラワーに合流してくる。

「巫女服かわいいじゃん、向日葵―。あたしの【アイドルコスチューム】には敵わないけどね♪」

 コアの肩にはラブ・リトル(らぶ・りとる)が乗っている。
 さらに涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)が追いつき、

「私たちもだけど、イレイザーに対峙するにはダークサイズ側も戦力はカツカツのはずだ。今回も共闘の形を取らざるを得ないと思うけど、いいよな?」
「うむ。どの道『亀川』とアルテミスの力を借りねばならんのだろう。むしろ戦力は集中できる上に、守りも固めやすい。なにより私たちは、あそこに倒れるイレイザーとの戦闘経験があるのだ。今回の戦いは有利に進めることができるだろう」

 と、コアが同意する。
 すると高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)が、

「ところでこの遺跡はどうするのよ? ダークサイズがどんどん拠点作り始めてるけど?」

 と、メガネに指を当てて、拠点設営に動き始めたダークサイズのメンツを眺める。
 向日葵はそれに今さら気付く。

「し、しまったー!」
「心配いらない。そこは僕に任せてもらおう」

 見ると、黒崎 天音(くろさき・あまね)ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)が、妙に離れた所に立っている。

「みんなイレイザー討伐に行くと思ったからね。フレイムたんのお世話は君たちに任せて、拠点については僕の【設備投資】と【施工管理技士】でうまく住み分けを……」
「えっ? ごめん天音くん、遠くて聞こえない」
「うん、だから僕の……」
「こっちに来てお話しようよー!」

 と、向日葵が天音たちに手招きする。

「ふふ、そうか。僕に来いというのか。行っていいんだね?」
「待て天音、その前にだな……」

 足を進めようとする天音の肩を、ブルーズが引っ張る。

「何故止める、ブルーズ? サンフラちゃんが呼んでるんだ」
「うむ、分かっている。だからその前に……」

 ブルーズが止めるのも聞かず、天音が向日葵の方へ向かう。
 天音が向日葵たちに近づく途中、突然『亀川』が強い冷気を発し始める。

「うおっ、寒! なんで『亀川』が!?」
「た、大変!」

 向日葵の声で、皆が『亀川』から目を戻す。
 天音が燃えている。

『フレイムたん抱いたままこっち来んなー!!』

 『亀川』と距離を縮めた反応で、フレイムたんからは炎が噴き出していたのだ。
 皆の総ツッコミをよそに、天音は全く動じずフレイムたんを離さない。

「ふっふふふ……」
「だから待てと言ったのだ! フレイムたんを離さ……笑っておる場合か! まったくお前というやつはー!」

 ブルーズは珍しく声を荒げ、天音を引きずっていった。

「……ど、どーだぁ! 今回のチーム・サンフラワーは充実してるのだーっ」

 向日葵はとりあえず、誰とはなしに叫んでおいた。