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【ダークサイズ】続・灼熱の地下迷宮

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【ダークサイズ】続・灼熱の地下迷宮

リアクション

 ダイソウが向日葵達の所から戻ると、ペンギン部隊がピラミッドを組んでビルにしがみついているのが見える。
 扉以外に入れる場所はないかと探しているようだが、繭のような塊状の建物には中を覗けるような隙間は見当たらない。

「円よ、進展はあったか」

 円は、絵でも描いてもらおうと思ったのだろうか、フレイムたんに渡そうとして炎で消し墨になったクレヨンを転がしながら、

「まだ何にもー。やっぱりフレイムたんはマスターキーじゃないのかな」

 続いて、汗をかきすぎて体中がピカピカに光るラルクが来る。

「おーい。フレイムたん、何か吐いたか?」
「いや。ラルク、強行突破の方はどうだ」
「見ての通りだぜ、びくともしねえ。イレイザーより堅えとか、一体何でできてやがんだ……」

 と、ラルクは一息吐いて、手を膝につく。
 吹雪もビルを見つめ、

「うむー、まずいであります。このままでは『DS葛城偵察隊』の活躍の場が失われてしまうであります」
「何だと? それはいかん。イレイザー戦に続いてポンコツ扱いのそしりを受けるのは、大日本帝国陸軍、末代までの恥なのだ」

 吹雪の隣で焦燥感にかられる鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)
 ダイソウが二十二号を見つけ、

「今日はちゃんと動いているようだな」
「前回は残念ながらフリーズしてしまったが、今日は違う。我がオペレーションシステム『MINDOMS』を根本的に見直したからな」
「……みんどむず?」
「ムィンドムズと読む。これのMEをXPにしたのである」
「見なおしたっていうか、バージョンアップしただけなんだけどね」

 と、コルセアがぽつりと言う。
 二十二号はこくりと頷き、

「というわけで、早速MINDOMS・XPの性能を試そうと思う」
「ほう、バージョンアップで新たな機能が加わったのだな?」

 ダイソウも興味深げに聞き返す。
 二十二号はさらに頷き、

「そうだ。OS内を検索したところ、興味深いアプリケーションがプリインストールされていた。名を『カミカゼさん』という

 コルセアは、早速嫌な予感がし、

「……ねえ、何だか知らないけど、それ起動しない方がいいんじゃない?」
「何を言う。このような閉塞状態を打破するのに、絶好のアプリ名ではないか」
「あなたを作ったの、帝国陸軍なんだから、カミカゼの意味くらい分かるわよね?」
「バカにするでない。それくらい知っておる。頑張るという意味だ」
「……」

 コルセアは、VISTAに更新した方がいいかもしれないと早くも思いながら、

「ねえ吹雪。二十二号が変なこと言ってるけど」
「聞いたであります。二十二号!」

 吹雪はキッと二十二号に厳しい目を向け、二十二号も吹雪の正面を向く。
 少しの沈黙の後、二人はスッと敬礼をかわした。

「いってらっしゃい」
「止めないのー!?」

 慌てるコルセアに吹雪はむしろ冷静に、

「やるだけやってみるであります」
「取り返しのつかないことになっても知らないわよ!?」
「では参る! カミカゼさん、起動!」

 二十二号は叫び、体内からカリカリと音がする。
 その直後、彼の瞳が青い光を放ち、全身に力がみなぎり拳を握った。
 吹雪はごくりと息をのみ、

「カミカゼさん……一体どんな機能なのでありましょう!」
「たぶん自爆だけど、そうじゃなきゃいいね!」

 と、コルセアもツッコミ半分、心配半分。
 さらに二十二号は握った右手を解き、装甲の隙間から紙きれを取りだした。

「パスワードは……と」
「なんかいちいちじれったいわね」
「起動!」

 と、今度こそカミカゼさんが起動する。
 二十二号はいきなり【軽身功】か何かのオーラを纏い、叫ぶ。

「ばんざあああああい!」
「ちょ、やっぱり特攻なんだわ! 吹雪、止めなきゃ!」
「二十二号ー!」

 二十二号は、勢いよく跳躍して、フレイムたんの脇に着地し、

「ばんざあああああい!」

 と、燃えるフレイムたんを投げた。

「自分でいかないのかよー!!」
(きゃんきゃん!)

 ビル目がけて猛スピードで飛ばされていくフレイムたん。
 二十二号の暴走によって、とうとうフレイムたんが破壊されてしまうのかと思いきや、

キンッ、ギュルルルッ

 フレイムたんの目が光ったかと思うと、口を大きく開け、中から複雑な幾何学形状をした金属の棒が伸びた。
 それに呼応するように、扉の一部にシャコンと穴が空き、

ずん

 ちょうどフレイムたんの金属棒が穴に突き刺さった。
 ダイソウ達から見ると、扉に犬が突き刺さった景色に一瞬呆然とし、駆け寄る。

「これは一体……」
(すごーい。ボクの中にこんな棒があったなんて)
「フレイムたんも知らなかったのか」
(うん。ここ開けたことないし、みんな教えてくれなかったし)
「しかし、何故このような仕掛けが?」
(ボクが燃えた状態で、時速150キロ以上のスピードで接近する条件だったみたいだね。そんなの誰も思いつかないから、戸締りにはもってこいだね)

 何とも不可解な仕掛けだが、偶然その条件を満たせていたとのこと。
 ただ、フレイムたんが刺さっただけで扉が反応を示さないのを見て、

「フレイムたんよ、扉は開いていないのか? どうすればよい」
(回せばいいと思うよ、ボクを)

 円がそれを聞いて、

「フレイムたんは、鍵たん兼ドアノブたんだったんだね」
「しかし、燃えたままのフレイムたんを回すとなると、これまた一苦労だな。厳重な解錠システムだ」

 と、ダイソウはもう一度二十二号にカミカゼさんの起動を依頼し、

「ばんざあああああい!」

 燃えるフレイムたんを、特攻精神で回してもらう。
 そんなこんなで、ついにフレイムタン・オアシスのビルが開かれ、ダークサイズとチーム・サンフラワーは建物内へと進んでいくのであった。