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バレンタイン…雪が解け美しき花びら開く…

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第21章 過去に捕らわれた花

「椿の大会があるんだけど、さて・・・どうするかな」
 育てた椿を久途 侘助(くず・わびすけ)は手の平の中でくるくると回し、大会に参加しようか宮殿の前で悩んだ。
 胡蝶侘助の白い花びらには、紅の色が入っている。
 とても儚げでキレイな椿だ。
 椿が土の上へぼとりと落ちる様が苦手だが、侘助は彼の名前でもあり短命な椿の侘助に反して強く長く生きられるように、もう存在しない両親がつけてくれた名前だ。
 ウラクツバキから生まれたこの花は花粉を作らない。
 それは葯が退化してまっているからだ。
 自分の子孫より恋人と共に生きる続けると決め、その考えと花が似ている。
「(家族を守れなかった。だけどそれは、あの時の俺が弱かっただけ・・・)」
 守ることが出来なかったのは自分の弱さのせだ、他に理由なんて並べても言い訳にもならない。
「(だからこそ、今の俺がいる。だから、火藍がいる。そして、恋人がいる・・・)」
 それら全て最初から決まっていた変えようのない運命なんだと、女神像の前で言うより椿に伝えることを選んだ。
 ただ考えているだけなのは自分らしくないか、と思いつつ花に向かって惚気ても仕方ないと苦笑いをする。
「なぁ、火藍。この椿、俺と同じ名前なんだぜ」
「ということは侘助ですか?」
 香住 火藍(かすみ・からん)は侘助の手の平にある椿を眺めて彼と見比べる。
「キレイな椿ですね」
「これ、火藍にやるよ」
「そんな苦しそうな顔、あんたらしくないですよ?」
 今にも消え入りそうな、儚げな笑みを浮かべる彼に対して、その笑い方は侘助に似合わないというふに言う。
「弱かった過去をいつまでも引きずっている暇ないよなっ」
 侘助は自分の頬をバシンッと叩き、しっかり前を見て進めというように渇を入れる。
「それに俺1人だけで、この花を見るんじゃ勿体無いですからね。大会に出さないというなら、勝手にエントリーさせてしまいますよ?」
「いや、やっぱり俺が大会に出すよ」
「えぇ、それがいいでしょうね。キレイに育てたなら、他の人にも見てもらった方がいいですし」
「これが今の幸せの形だからな、トップになれなくたっていいんだ。いろんな人に見てもらえればそれいいさ」
 椿は火藍にはあげずに、大会に出すことにした。
「今日は2月14日だったか?義理チョコだけどやるよ」
 手作りの板チョコを彼に投げ渡す。
「言わなくたってどうせ義理でしょう?」
 放り投げられたチョコを両手でキャッチする。