リアクション
73
祭りが終わり、死者も去り。
訪問者も帰って行った工房に、電話の音が響く。
「はい、もしもし」
受話器を取ると、
『こんばんは』
通話口から志位 大地(しい・だいち)の声がした。
「こんばんは。どうしたの?」
『いえ、今日は不思議な日でしたから。リンスくんはどうしていたかなと思って』
「不思議を体験したよ」
死んだ人に逢った。
話をした。
自分に都合のいい妄想だったんじゃないかと思うほど、優しい言葉を向けられて戸惑ったりして。
「……でも、いい日だった」
『それは良かった』
「そっちは?」
『俺ですか。夏祭りを楽しみましたよ』
「彼女さんと?」
『秘密です』
楽しそうに言っているけど、どっちかな。
愛でる相手を見付けた時の彼も、また似たように言うから。
会って話せばわかるけど、声だけじゃ図り辛い。
『お互いに良い日だったようですね』
「何よりだ」
また明日から、ごく普通の日が続くのだろうけれど。
今日のことを忘れないで。
大切な思い出として刻んでおこう。