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24)ルカルカ・ルー(るかるか・るー)

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、
黒のスーツに、胸に獅子モチーフの金ブローチ、
パートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、
グレーのスーツ姿で、「トッドの部屋」へやってきた。

「ようこそ、ルカルカさん、ダリルさん」
「同席を許可して頂き感謝する」
ダリルが優雅に一礼してトッドさんに花束を渡す。
「よろしくおねがいしまーす」
ルカルカは明るく気さくにあいさつした。

「では、さっそくはじめましょうか。
まずは、全員への質問から。
渋井 誠治さんからです。

好きな食べ物は何ですか?
割とありがちな質問だけど、番組の中で時間があれば答えてくれると嬉しいな。
出身地が違うと食文化も違うだろうし、皆がどんなものが好きなのかちょっと気になったんだ。
パラミタだと地球の料理はなかなか食べられないかもしれないけど、
ここでアピールしておけば空京で流行っていつでも食べれるようになるかもよ?
なーんてね」

「チョコレート!」
ルカルカが元気よく答える。
「チョコバーは常備よ」
ポケットから何本か取り出して見せる。
「軍用レーションとしてもメジャーなものだし、
何より高カロリーだから、遭難したとしても生存確率が上がるのよ。
そもそもチョコバーとは……」
「ルカ、最初から景気よく話しているとチョコバーの話だけで番組が終わってしまうぞ」
「そうだった」
ダリルに言われ、ルカルカは舌を出す。
「せっかくだから皆にもあげるよ。
アコ、ニケ、ちょっちいい?」
「はーい」
観覧席のアコこと、ルカ・アコーディング(るか・あこーでぃんぐ)が、
ニケ・グラウコーピス(にけ・ぐらうこーぴす)と一緒に、
観客にチョコバーを配り始める。

「もちろん、トッドさんの分もね」
「口に合えば良いのだが」
ダリルが手渡したのは、パティシエでもあるダリル自身が作った特製チョコバーである。
「まあ、すてき!ありがとう」
綺麗なラッピングを見てトッドさんが笑みを浮かべる。

「じゃあ、皆、チョコバー持った?
ルカと一緒に合い言葉言ってくれるかな」
「さんはいっ」
アコがADのように音頭を取る。
「「「チョコレートは正義☆」」」

「では、
匿名 某(とくな・なにがし)さんからちょうど質問が来ているので伺いますね。

『身体はチョコバーで出来ている……』
といっても過言ではないぐらいチョコバー……
もとい甘いお菓子全般が好きみたいですが
『これはちょっと無理><』というお菓子とかあるんですか?」

「うーん、食べてみないとわかんないなあ、
多分ある……かも?
そーだ♪
今度、スイーツ食べまくりにつれてってよ?」

「では、そんな余裕のご発言の
ルカルカさんに、
アヴドーチカ・ハイドランジアさんの質問です。

あー、なんだ。
【美那に次ぐ『たわわな実』】とか、称号にまでなる素敵なものをお持ちのようだが
……一体何を食べてどうしたらそんなに大きくなるんだい。
後学のために教えていただきたい」

「ルカ的には『どうやったら胸を小さく出来ますか?』って聞きたいよ。
だって隠密行動じゃ邪魔だし、格闘だと弱点になるのよ?」
ルカルカは首をかしげる。
「しいて言うなら筋トレ?」
「まあ、では、ダンベルがお店から完売してしまうわね」
「ええー?」
トッドさんの発言に、ルカルカが肩をすくめる。
「……そんなに大きい?」
両手で寄せてあげて見せたルカルカに、ダリルが頭をぽふん、とする。
「生放送だぞ」
「はうっ」
ルカルカはトッドさんを見て真っ赤になった。

「では、次の質問ね。
キュべリエ・ハイドンさんから。

もし地球とパラミタどちらかが滅んでどちらかを救えるのだとすれば
あなたが救うのは地球?それともパラミタ?
両方救うという回答ではなく二者択一でお願いします」

(成立しない命題ね)
ルカルカは、微苦笑を浮かべた。
「そんな事態にならないようにしたいしするのが私達の務めかな」
「頼もしいお言葉ですね。
では、次は、
青葉 旭さんから。

自身の所属校ってどの程度大事に思っている?
質問がアバウトですが、極端な例を挙げると、
王国が滅んでも学校を守る。
他の学校を全部潰して自分の学校1校だけにしたい。
友達よりは大事だけど、恋人よりは大事でない。
嫌い、早く転校したい。
全く大事でないどころか明日にでも破壊したいくらい嫌い。
といったところかな。

自分の学校のこういう点が改善されたらもっと好きになれるのに、
というのがあったらそれもお願いしたい」
「好きよ。超好きよ」
ルカルカは即答した。
「幹部が素晴らしいと部下の士気が違うよね。
団長を尊敬してるし、彼の剣として、より信頼を得られるようにしていきたいわ」
明るく曇りのない笑顔でルカルカが断言した。

「では、そんなルカルカさんに、
わたくしから質問しますね。
ルカルカさんは『最終兵器乙女』と呼ばれてるのに、
『かよわい普通の女の子』を主張されているそうですね。
明らかに嘘☆だと思うんですけど、実際どうなのかしら?」

「ほえ?ルカ、普通だよ?」
「本人は普通だと言って憚らないんで、
もう少し具体的に聞いてやってくれないか」
ダリルが補足したので、トッドさんが続ける。
「西シャンバラ・ロイヤルガードでもあるルカルカさんは、
大きなイコンでも、
人が乗っていなければ簡単に壊してしまうんですってね?」
「ちょっとは鍛えてるからね」
ルカルカが拳をぐっと握って見せる。
「女だから付いてけないのは嫌なの。
生物学的にどうしても
男性とは筋肉の質も体格も違うけど、それをハンデって言いたくない。
言い訳にしたくないの」
「契約者の方を見ていると、
ルカルカさんのおっしゃることがとても説得力がありますね?」
「ええ。
それに、それもあったから戦車乗りになったのよ。
小柄な方が向いてるし、
パワーは戦車が埋めてくれから。
今はイコンに主に乗ってるわ、可愛いよね戦車もイコンも☆」
「話が逸れたぞ」
「あひゃ」
ダリルがまたルカルカの頭をぽふんとする。

「えと、友達とか民間人が傷つくのは見たくないのね」
ふと、真面目な顔になったルカルカが言う。
「契約者であっても、そうでなくても、
人はあくまで人でしかなくて、
大きな力の前には、かよわい存在だけど……。
でも、私には私の誇りがあるし、自分に後悔したくない。
手の届く範囲だけでも守りたいの。
それが、大切な友達や仲間ならなおさらよ」
視線を外し、遠くを見る。
「最終兵器とか団長と共にある剣と見られてるのは知ってる。
確かに、ちょっち物騒な異名だよね。
私は私でしかないし、
そうでありたいし、
だから、そうした呼び名が独り歩きしてしまうことに不安を感じないってわけじゃないんだけど、
けど、ね」
ルカルカは、静かな声で続ける。
「こう考えるの。
私が居ることで、ある種の安心感を与えられるなら、それでいいって。
私が戦うことで兵の士気が上がり生還率があがるなら、嬉しいことだと。
それはある種の幻想なんだけど、その幻想を裏切らないように
これからも自分を鍛え、積極的に戦うつもり」
「自分の役目を……責任を、全うするのね、ルカルカさん」
「ええ」
ルカルカはうなずいた。
「軍人としてロイヤルガードとして、ルカルカとして
それが私の生きる道なの」

等身大の少女の笑みで、ルカルカが言った。
「だから私にとっては普通なのよ」

「ありがとうございました。
最後の質問、よろしいかしら。
国頭 武尊さんから。

契約者になる前は、地球で普通に学生やっていて
争い事なんかにゃ無縁だった人も居るだろうから敢えて聞くけどよ。
やっぱ、契約者になってその活動期間が長くなると
人を傷つけたり、時には殺めたりする事に、
抵抗感や不快感を持たなくなるのかね。
すっげぇ答え難い質問だと思うから、無視してもらっても構わないぜ」

しばらく考えてから、ルカルカは言った。
「大切な話ね。私の生き方にも関ることだから、
しっかり答えたいけど……」
ルカルカは時計を見る。
そしてトッドさんの目を見る。

(答えてたら放送時間が足りないわね)

「じゃ『続きはウエブで』♪」

会場が笑いにつつまれた。
なお、後日、番組宛に真面目なメールが送られ、
番組のサイトに掲載されることになるのだが、それは別の話である。