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27)六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)

六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)は、
ディング・セストスラビク(でぃんぐ・せすとすらびく)とともに
出演していたが、
トッドさんは予想外なことを聞いてきた。
「鼎さんは、SMに造詣が深いそうですけれど、
ぜひ、詳しく体験談を聞かせていただけます?」

「え、その情報どこから仕入れたんですか?」
鼎が笑いながら答えた。

「……えーと。
まず最初に言いたいのは、
SとMの関係ってのは実はSの方が『奉仕者』だって事ですかね。
Sが……まぁ所謂ノーマルの人相手にやってる場合は
Sの方が一方的に満足してるんですが、
その場合でもSは……『行為』を押し付けているだけで、
結局何かを『している』のはS側なんですよね」
「なるほど、それで?」
「SとMが組み合わさったときなんて更にそうで、
M側の『欲求』に対して答えて、行為を行うのはS側です。
言い方は妙ですが、SM行為って言うのはマッサージと同じなんですよ。
揉んでるか、痛めつけるかだけの違いなんですね。
『女王と下僕』って関係は、必ずしもそうというわけではない。
確かに非生産的ではあるけど、双方の満足を産める、という点では
需要と供給という面ではある意味『成り立っている』関係ってことです」
立て板に水と言った感じで、鼎が説明する。
「で、何が言いたいかというとですね。
『あまりそういう趣味の人を偏見の目で見ないで、
暖かく見守るかそれができないならほっといてやってください』ってことですね」
「……えー、と。
言っときますけどね。
私にそういう趣味は……無いとは言い切れませんが、あまりありませんよ?
……ま、まぁ……
興味が無いといえばうそですが……
えー、と……
か、帰ってもいいですか?」
ディングは、その隣で冷や汗を流していた。
「えーと、で、ですね。経験でしたっけ。
んー……うん。
『椅子に括り付けて、敏感な所を羽箒でくすぐる』なんてのは結構有名どころですかね。
攻めとしては弱い物ですが、長時間やられると……ね。
んー……もっと詳しく話したいのは山々なんですけどね。
これ以上の物となると、さすがにこう、テレビですから」
朗らかに笑う鼎だが。
(くそっ!こいつ何言ってやがるんだ!?
誰だよこんな知識と嗜好植えつけた奴!
やめろ!私の顔と声で、私の横でそんな事を言うんじゃない!
TVな上に生放送なんだぞ!?
恥ってもんは教えたはずだ!くそっ!認めん!認めんぞ!
こいつが私の生前のクローンだなどと、認めてたまるか!)
ディングは、パートナーの発言にもだえていた。
「……うん。
後で 楽屋ででも じっくりと お話 しましょうか ?」
トッドさんに鼎が妖しく笑いかける。
「まあ!でもそれだと皆さんにお聞かせできなくてつまらないわ」
どうもトッドさんは本気で言っているらしかった。

「や、やめ……」
「あぁ、そうそう。SMってのはあくまでも被虐を愉しむものです。
必要以上の痛みを伴う物は只の『拷問』ですから、
そこを履き違えないように気をつけてくださいね?」
「今回のは言葉責めだったんですか?」
カメラ目線で言う鼎にトッドさんが言い、
ディングが椅子から転げ落ちた。