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【2021クリスマス】大切な時間を

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リアクション


第1章 仕事の合間に

 12月下旬。
 誰かを楽しませる為に。
 誰かの笑顔を見る為に。
 人々は忙しなく動き回っていた。

 クリスマスイブを迎える少し前に。
 空京の小さな公園の木々が、姿を変えた。
「あれ? 木が増えてるよ!」
 訪れた子供が、母親の手を引っ張りながら並んでいる木々に駆け寄ってきた。
 いつもの3本の大きな木の他に、お父さんの身長と同じくらいの高さの、三角の木があった。
「モミの木ね、綺麗ね」
「うん、これあの人がやってるの!?」
 ぽてぽて音が響いている。
 音付きブーツで歩いているのは、赤い帽子と服を纏った、真っ白おひげのサンタさん。
 白い袋の中から、飾りを取り出して、モミの木や周りの木々を装飾していっている。
「ジングルベール、ジングルベール、ですよぉ〜」
 そのサンタさんの正体は女の子――パラミタ一の画家を目指している師王 アスカ(しおう・あすか)だ。
 アスカはとある人物からの依頼で、各地のクリスマスツリー装飾をして回っている。
 木々に絵をかいたりはせず、音楽を流したり、時間経過で色が変わるLEDを装飾して賑やかに飾り、人々を楽しませている。
「サンタさん、ありがとね! 頑張ってね!」
「はーい。夜にまた見に来てねぇ」
 手を振る子供にそう答えて、手を振り返して。
 袋の中から取り出した電球を、ツリーにくるくる巻き付けていく。
「お疲れ様です。これよかったらどうぞ。温かいうちに」
 子供の母親が、暖かな飲み物をアスカに差し出す。
「ありがとぉ〜。それじゃ、ちょっと休憩にしよっかな」
 ありがたく受け取って、アスカは木の裏側に腰かけて、休憩をとることにした。

 温かな飲み物を飲んで、ふうと息をついて。
 柔らかな表情で、携帯電話を取り出す。
「皆も頑張ってるかなぁ〜」
 まずは仲間に、メールを。

 ただいまお仕事頑張り中〜♪
 ちょっとサンタの格好が大変だけど、いい感じに進んでるよぉ?
 夜には帰れるように頑張るから美味しいシチューよろしく〜!


 それから、サンタ姿の自分を携帯のカメラで撮影して。
「何してるかな〜。明日は会えるよねぇ」
 写真添付で恋人にメールを出す。

 アスカサンタ参上!
 心配してくれてありがとぉ、そっちはどう〜?
 明日は約束してたデート日だねぇ、楽しみ♪
 夜には帰るから鴉も今日はベルと喧嘩しちゃ駄目だよ〜?


 そして、最後に。
「ジェイダス様は、何をして過ごされるのかなぁ〜」
 飾ったクリスマスツリーを撮って、恩人と思っているジェイダス・観世院にメールを送る。

 ジェイダス様へ

 もう冬の季節がやってきましたね〜
 そちらは風邪など引かれていないですかぁ?
 私は今、依頼でお仕事中です
 中々経験できないものだから楽しんで仕事をしています
 ジェイダス様にも聖夜の祝福を……♪ 


「こんなものかな〜?」
 メールを終えた後。
 アスカは携帯電話をぎゅっと握りしめたまま、大切な人達の笑顔を思い浮かべる。

 皆に祝福を〜今宵皆に幸あれ〜♪

 それからまた、彼女は立ち上がって。
 沢山の笑顔を作る魔法を街にかけていく。