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空に架けた橋

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空に架けた橋

リアクション


○     ○     ○


 アレナ・ミセファヌスは、軍病院に検査入院をしていた。
 封印されかかっていたアレナは、有能な魔術師により、術を解かれた――はずだった。
 彼女は意識を取り戻し、普通に動けるようになってはいたが。
 体内から、光条兵器を取り出せなくなっていた。
 一部、封印状態が残ってしまったのだ。
 彼女と神楽崎優子は、教導団のミーティングルームで語られたズィギルの打診についての説明は受けたが、ズィギルがコピーであったことや、本体が存在していたことについては、まだ知らされていなかった。
「ズィギルさんは『今度はもっとちゃんと封印する』って言ってました。『今度は先に起きたらだめだよ』って、言っていました。意味が、わからなかったです」
 アレナはヴァイシャリーの塔の屋上で、ズィギルに言われたことを、付き添ってくれている優子に話した。
 今は事実だけを語り合うだけで、それ以外の言葉は殆ど出ては来なかった。
「一つ気がかりなことがある」
 優子が、アレナを気遣いながら話していく。
「キミの外見は、私の影響で変化してはいない、ということだ」
 アレナの外見は、優子の大切な人の外見ではない。
 当初、優子はアレナが自分に心を開いていないせいだろうと、考えていた。
 親しくなってからは、特に気にすることもなかったことだけれど。
「私との契約の際に、キミの封印は全て解けたと思っていたけれど……完全に、封印は解けていなかったのかもしれない。そして、2度目のあの男の封印術の影響も、キミの身体に残ってしまった……。すまない」
「優子さんが、謝るのは……変です」
「そうだな……けど、なんだか謝りたくて。苦労かけてばかりだから」
 アレナは首を左右に振った。
「仕事に戻ってください、その方が私も嬉しいです。検査終わったら、連絡しますね」
 そして微笑んだ。
 優子はアレナの微笑みを見て、切なげに彼女の頭を軽く撫でると、病室を後にした。
 優子には分かっていた。アレナの笑みが嘘の微笑みであることが。感情を押し殺していることが……。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
 検査後、アレナは昏睡状態が続いているヴァーナーの病室に行き、同じ言葉を何度も繰り返していた。
「……ごめ……」
 小さな口がちょっと動いて、言葉が発せられた。
「ごめんなさい? ……はい、ごめんなさいです! けほっ、けほっ」
 目を開いたヴァーナーは、上手く声を出せずに咳き込み始めた。
 激痛が体中を走り、ヴァーナーは、ううっとうめき声を上げる。
「大丈夫ですか! 先生、先生、来てください」
 アレナがボタンを押して、主治医を呼ぶ。
「だいじょうぶです! なんだか久しぶりに声を出した気がします」
 にこっとヴァーナーは笑みを浮かべる。
「ボク、眠らせれてケガしちゃったみたいですね……。アレナおねえちゃん、また心配かけてごめんなさいです!」
 ヴァーナーはアレナの手をぐいっと引っ張って、引き寄せて。彼女の頬にキスをした。
「ごめんなさい、は私の方なんです。本当にごめんなさい……申し訳、ありませんでした」
 アレナはヴァーナーに深く頭を下げた。
 彼女の目から、ぽたりぽたりと涙があふれて、落ちる。
「んーと、アレナおねえちゃんが、あやまることなんてないですよ? 十二星華とか、とくべつとか、いわれたり、負担せおったりしてるかもしれないけど、ボクには百合園の先輩で、恋人になりたいかわいくて、大好きなおねえちゃんですよ〜」
 ヴァーナーは痛みを忘れて、アレナの腕をぎゅっと抱きしめる。
 彼女の言う恋人は1人の恋愛対象というわけではなく、特別に愛してる親友というような意味だ。
「立場とかそんなの全然関係ないです。他の人とおんなじです。あったかいですよ〜」
 アレナの手を頬に当てて、ヴァーナーは嬉しそうに微笑んでいた。
「はい……。ヴァーナーさんの頬、温かいです。すべすべで柔らかくて……生きて、います。良か……った……」
 アレナはヴァーナーの頬を両手で包み込んで、彼女と目を合わせて、可愛らしい顔と命を確かめて、安堵の涙を落していく。
 そして、小さな声で、呟いた。
「私、剣の花嫁でも……なくなって、しまいました。優子さんの剣の花嫁でも、いられなくなってしまいました」

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 ミケーレ・ヴァイシャリーは、変装をし空京駅に来ていた。
 新幹線に乗って、地球に戻る寸前、彼の携帯電話が音を立てる……。
『あの神の話は聞いたよな?』
「勿論」
『口封じしなくて、よかったのか?』
「君が出来るというのなら、任せたいところだけど?」
『いや、今更無理だな。場所も相手も悪すぎる』
「で、君のお気に入りの女の子の容態はどう?」
『沢山いすぎて、どの娘のことを言ってんのかわかんねーけど。少なくても、無能な人形には興味ねぇな』
「そう。まあ、何か良い情報が入ったら、連絡するよ」
『……楽しみにしてる』
「それじゃ、また」
 ミケーレは電話を切ると、薄い笑みを浮かべる。
「分かりやすい男だ」
 携帯電話を胸ポケットへ入れると、ホームへと向かって歩いていく。

 ズィギルの本体暗殺後。
 牢屋で封印を解かれていた、コピーズィギルの頭で爆発が起きた。脳は完全に破壊され、即死状態だった。
 同時に、帝国第七龍騎士団に保護されていたルシンダ・マクニースの側頭部でも小爆発が起きた。
 彼女は神であったこと、万全の警戒と治療体制の元にあったことから、命は取り留めた。
 しかし、意識を取り戻した時、彼女の記憶は全て失われていたという。

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 アルカンシェルが再びシャンバラを発つ前に、神楽崎優子は宮廷に呼び出され、ロイヤルガード東西の隊長として任命された。
 女王アイシャが祈祷に入ってしまい、現在、シャンバラの政治は代王に委ねられている。
 ロイヤルガードも指揮系統として、東西の2隊を取りまとめる隊長が必要となり、協議の結果、彼女に決定された。
 主に、国軍と連携し、ニルヴァーナ探索隊に協力して月の港のニルヴァーナへの回廊を開いた功績と、今回の若葉分校のパラ実生を取りまとめた功績が認められた為である。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

ご参加ありがとうございます。担当の川岸満里亜です。

今回も素敵なアクションを沢山いただきました。
それと同時に、助けとなる本当に素敵な行動(PCの言動)なのに、無理のあるアクション(その言動が出来る状況がそろわない)も多く、採用出来ないことをとても残念に思いました。
PL思考でしたいと思うことがあったとしても、PCには状況や立場上、出来る事、出来ない事があるかと思います。

川岸のシリアスなシナリオにつきましては、ゲーム性(攻略性)が強いシナリオになっていることが多いです。
そういったシナリオにつきましては、注文小説的に楽しまれようとしている方、マスターを注文小説のライターとして捉えている方には合わない可能性が高いです。

今回のシナリオですと、ズィギル暗殺方面は、ガイドとマスターコメントで、基本的な成功条件やルールが明示されており、敵側PCは関与出来ない&調整役NPCもいることから、PCとしての難易度は高くとも、ゲーム的な難易度はそこまで高くはなかったです。
対してヴァイシャリーの塔に関しましては、難易度が非常に高かったかと思います。

尚、ズィギル暗殺につきましては、情報を聞いたとアクションに書かれている方でも、リアクションで声をかけられた描写のない方は、知らないということになります。
関わった方は、一緒に行動したメンバーとこの件について語ることは構いませんが、勿論口外は禁止されています。例外として、優子とアレナに話すことは許可されているとお考えください。

さて、面白いアイディアをいただきましたので、関連キャラクエを1本書かせていただきます。
また、連続シナリオ中、やりたいのに出来なかった事が出来るシナリオを、春に書かせていただきたいと思っています。春のパン…まつりinアルカンシェルとかそんなカンジです。
そちらでも、皆様にお会い出来ましたら、凄く嬉しいです。