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リアクション
1日目深夜:いつとも知れない時間
「眠れないか?」
「え?」
深夜。
人のいなくなった町を見つけた理子たちは、そこで休憩することにした。
町の人間はとうの昔に死人になり、生気を求めて去っていったのだろう。
学校の、体育館らしき場所で横になる面々。
いずれにしても、屋根のある場所で夜露をしのげるのはありがたかった。
汚れた毛布で身を包んだ理子に、セリオスが声をかけた。
「まぁ、こんな近くで男が見張っていたんじゃ眠りづらいかもしれないけどね」
冗談だよ、といったように笑ってみせる。
クローラとセリオスは、理子を護るため夜も彼女の側で寝ずの番をしていた。
「変な気にはならないから安心してね」
「ん。平気よ」
「そうだ。いざとなったら理子さんは俺が護るからな」
「安心しろ。変な気も起きない程厳重に警備してやるのだよ」
「どーしたの? 何か変な事でもあった?」
セリオスたちと理子の会話の間に陽一たち3人が割って入る。
冗談を打ち返すようにフリーレがセリオスたちを睨むと、美由子がなになに、と顔を突っ込んでくる。
彼らもまた、理子のために寝ずの番をしていたのだ。
「大丈夫よ。ちょっと、考えてただけ」
「死人のことを? それとも、日本のこと?」
「いろいろ……」
それきり理子は黙ったまま、窓の外の夜空を見る。
そこだけは、以前と変わらないままの星空があった。
どこからか、小さな歌声が聞こえてきた。
「大丈夫よね。きっと、日本は元に戻るわよね」
自分に言い聞かせるように、理子は言った。
「ああ、勿論だ」
「日本は、こんな事で滅びるはずがない。俺達の手で蘇らせよう」
即座に肯定するクローラと、励ましの言葉を続ける陽一。
「希望の光が見えてきたんだもん。やるっきゃない、よね」
「そう、ね。あたしたちが、やらなきゃね」
ぐっと拳を握りしめる美由子に、理子が小さく微笑んだ。
星空の元、歌声は続いている。
弦楽器の伴奏が、それに重なった。
歌っているのは、ペト・ペト(ぺと・ぺと)だった。
キタラを手に、歌っているようだ。
ふいに、歌声が途切れた。
不自然なほど唐突に。
そして、そのまま静寂が訪れた。
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