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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同学園祭!

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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同学園祭!
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リアクション

「そこのウェイトレス、アルコールは無いのか?」
「はい、アルコールは取り使ってない……んだぴょん」
 呼び止められたうさ耳ウェイトレスのメティスは、振り向いてそう答えた。
「あ……」
 椅子に座っている人物を見て、メティスはちょっと驚く。
「驚いたか?」
 にやりと笑み浮かべているのは、坂上 来栖(さかがみ・くるす)だ。
「ええ、まあ……だぴょん」
 来栖がこの時間に、こういった場所に訪れることはあまりない。
「クハハ、お前随分と可愛らしい恰好じゃないか似合ってるぞ」
 そう来栖が笑うと、メティスは少し赤くなる。
「仕事ですので仕方なく。だぴょん」
「その喋り方もか!」
 来栖はますます笑い、メティスは助けを求めるかのように、ノアを探す。
「ん? あ、いらっしゃいませニャ〜。ぽかぽか陽気だけれど大丈夫なのかニャ?」
 ネコ耳ウェイトレスのノアが近づいてきて小首をかしげる。
「クハハ、お前もか。太陽についてなら日傘もある、直射でなければ大きな問題にはならん。っと、そんな事よりアルコールはまだか? ワインなら赤で頼む」
「ですから、アルコールはありません、ぴょん。学園祭ですからね。……ぴょん」
 メティスがそう言うと、来栖ががっかりといった表情になる。
「そうか……ならば、ミルクティーを甘さ増し増しで頼む」
「畏まりましたニャ。ミルクティー、オーダー入りましたニャ〜!」
 元気に言って、ノアはメティスと共に飲み物を取りにテントへと戻っていく。
「アルコールが飲みたいのなら、打ち上げに来るか?」
 来栖の向かいに、コーヒー持参で腰かけたのはレンだった。
「やぁレン・オズワルド」
 来栖は足を組んで、周りを見回す。
 猫やうさぎと遊ぶ者達。
 そして、接客に回っている女の子達。
 可愛い存在で溢れていた。
「アルコールがないのは残念だが、私は十分ここで楽しんでるぞ。お前は?」
「俺も楽しんでいる。ギルドの皆がこれだけ集まると、流石に賑やかだな」
 静かに飲むコーヒーも美味しいが、皆の笑い声を聞きながら飲むいっぱいも格別だと、レンは思う。
 幾多の死線を乗り越えて培った俺たちの絆――此処に来れなかった友の顔も思い浮かべながらレンは、コーヒーを口にしていく。
(俺は恵まれているな……)
 仲間達の笑顔、そして客を笑顔にしていく仲間達を見ながら、レンの表情にも自然に微笑みが浮かんでいく。
「いや、しかしアレだな……こんだけ純そうな乙女がいるとな……何人か攫ってもばれないかな……」
 来栖が百合園生を見ながらつぶやいた。
 レンがカタンとコーヒーカップを置いて、何も言わずにじっと来栖を見た。
「……冗談だ」
 来栖はそう言い、口元に笑みを浮かべた。
「ミルクティー、どうぞ……だぴょん」
「クハハ、いただこう」
 メティスはティーカップを置くと早々に立ち去った。
 砂糖とミルクたっぷりの紅茶を飲みながら、来栖は語る。
「……ずっと寝てたおかげでこの吸血鬼の身体にも随分なじんでね。改めて言っておきたかった事があるんだ」
「なんだ?」
 コーヒーを飲みながら、レンが答えた。
「私は誰の下にも付く気はない、ましてただの人間の等……恰好がつかないからな。もちろんお前が私や、あいつらの事を部下だの配下だの思って無い事は分かる。これは私の見栄だからな、笑ってくれても良いぞ? ぶん殴るが」
「やめておく。場の雰囲気を壊したくないからな」
「そうか」
 ふっと軽く笑みを見せ、紅茶をかき混ぜて。
 息をついてまた周囲を見回した後で、来栖はこう続けた。
「だが『友人』よ、困った時は私を頼ると良い、興が乗れば協力してやる。もちろん私が困った時は助けてくれるだろう? 『友人』よ……クハハ」
 言うと、来栖は紅茶を飲み干して、立ち上がった。
「言いたい事はそれだけだ」
 さて、と。
 来栖はノアに目を留めた。
「おいウェイトレス、首出せ首、酒が無いならせめて献血くらいしろ」
「駄目ですキャ。リーダーだって必死に耐えてますニャ」
 ノアは猫&うさぎガーデンの企画者であり、リーダーのゼスタの後ろに隠れた。
「ああ、この子達は俺の食料だから」
 ゼスタはノアの肩を抱いてにやりと笑みを見せた。
「えっ!?」
「そうか。それならあちらで選ぶか」
 ため息をつきつつ、来栖は校舎の方へと向かっていく。
 振り向かずに手を上げて、軽くレンに向かって振りながら。

「話を聞いた感じだと、肉体じゃなく心の問題じゃないかと思うだけれど、どうかな?」
 リィナはアレナを呼び止めて、問診をしていた。
「……」
「戦場帰りの兵士によく見られるストレス的なものかな。戦いたくない、でも戦わないと大切な物がどんどんと失われてしまう。そうやって自分の心を殺して戦場を生きた兵士のようだよ。君の目は……そのくらい哀しさと優しさを併せ持っている。
 それが君の封印の正体……主要因かな」
「確かに色々と考えてしまって……。どう頑張ったらいいのか、分からなくなってしまうこともあります。ただ、光条兵器を取り出せないのは、封印の影響で、心の問題じゃ、ないんです。私は正常じゃないみたいなんです」
 正常になるためには、どうしたらいいんでしょうね、とアレナは言った。
 自分がロボットならば、正常に動かない部分の部品を交換すれば治るのだろうけれど。
「でも、頭の中とか心の問題だとしたら、そういう部分を交換してしまっても、私は私なのでしょうか。――多分、違う人になっちゃいますね」
 そう、寂しげに笑った。

「い、いらっしゃいませ……」
 少し慣れてきたニクスは頑張って隅のベンチに注文を取りに向った。
「あ、いいよ、気使わなくて」
 隅のベンチに腰かけて、会場の様子を見ていたのは、アキュートだった。
「あ、あの。バナナジュースがお勧めなんです。いかがですか……っ」
 緊張で赤くなりながら、ニクスが尋ねる。
「バナナジュース……バナナジュースねぇ。ええと、じゃあそれ貰おうか」
「は、はい。バナナジュースお一つ、うけたまわりました」
 ぺこんと頭を下げると、ニクスは逃げるようにテントに向かっていく。
 微笑ましげにアキュートはニクスを見送り、ふうと息をついた。
「賑やかだが落ち着くな、ここ」
 可愛らしい動物や、少女達が溢れている。
「……ん?」
 トテトテ、と。
 ロシアンブルーの子猫が、近づいてきて、アキュートを見上げた。
「…………」
 撫でたい衝動に駆られながらも、拳を握りしめてアキュートは耐えていた。
「にゃーん」
 子猫は、アキュートの足にすり寄ってきた。
「友達と遊んで来いよ。俺は何もしてやれないぜ」
 そんなことを言いながら、普段は見せないような優しい目で、アキュートは子猫を見つめていた。

(……きになる、あのスープ……きになるわー!)
 注文の飲み物を取りにテントにやってきた衿栖は、リーアが温めているスープが気になって仕方なかった。
 なぜなら、あのスープを飲み干した人物が、猫に変身する様を見てしまったから。
「なあに? 味見する〜?」
 視線に気づいたリーアが、スープをカップに少しだけ入れて、衿栖に差し出してきた。
(うーん味見してみたいけど……猫になるのは手伝い的にも営業的にも……)
 スープは普通に美味しそうでもある。
(で、でもリーアさんもそれは解ってるはずだし……ちょっとだけなら大丈夫だよね?)
 そう思って、衿栖はちょっとだけいただいた。
「……何も起きない、か。ま、その方がいいしね。お仕事お仕事にゃ」
 注文のジュースをトレイに乗せて、衿栖は客席へと戻っていく。
 すぐには異変は起きなかったけれど……。
「え、衿栖さん……っ、そ、それどうしたんですかっ」
 客席でグラスを片付けていたニクスが驚きながら、衿栖の頭を指差した。
「それ? ん? あーっ」
 触れてみて気付く。
 衿栖の頭には可愛らしい猫耳がちょんちょんと生えていた。
「にゃふふ。ちょっとだけ成功したみたいにゃ」
「か、可愛い、です」
「ありがとにゃ!」
 衿栖とニクスはちょっと赤くなって、微笑み合う。
「猫耳アイドルに、犬の執事か。この路線で売り出すつもりか?」
 カイがため息交じりに問う。
「そういうわけじゃないにゃ」
「ねこのおみみ本物? 触らせて〜」
 カイのしっぽにつられてついてきていた子供が衿栖に手を伸ばす。
「どうぞにゃん」
 衿栖はしゃがんで、猫耳を触らせてあげる。
 子供の小さな手が、猫耳と、衿栖の頭をなでなでする。
 可愛らしい感触に、衿栖は今日一番のスマイルを浮かべた。

「うむ、このバナナミルク、素晴らしい」
 ウーマは、ルイが作ったバナナジュースに大満足だった。
「強いバナナの香りをミルクが程良く包み、自然な甘みと酸味のバランスも絶妙これ程にバナナとミルク、双方の主張が完璧に溶け合い、お互いを活かしきったモノはなかなか無いぞ?」
 ウーマはジュースを運んできたニクスを引き止め真剣に尋ねる。
「作り方に秘密があるに違いない、シェフ、いや、パティシエ殿はどちらかな? それがし、ここに通う事はならぬ身、是非、作り方をご教授願えぬか?」
「ええっと……シェフさん、ですか?」
 ニクスはジュースを作った人物を思い浮かべる。
 そう、作ったのはルイ・フリード39歳。ケンセイ、属性マッチョである。
 これは『サルカモ』のご飯用に用意した美味しいバナナで作られたジュースである!
(どう説明したらいいんだろう……?)
 困ったニクスは、「あ、あとでスタッフ用のテントに来てください」とだけ言うと、また逃げるように去っていく。
「後でといわず、今……ん? 何を見ておる」
「んにゃ? べ、別になんでもにゃいです、お客様」
 ウーマを見ていたのは、一部だけ猫化した衿栖だった。
(ああ、凄く美味しそうな匂いがする。脂ものってて、ホント美味しそう)
 じゅるりと、よだれを落しそうになり、衿栖は自らの口を拭う。
 衿栖だけではない。
 会場内の猫の多くが、ウーマに注目している。
 そろりそろり近づいてくる猫もいる。
「何を見ておる、それがしは天使、決して魚等では無いぞ!」
「お魚の天使さんにゃのね」
「魚ではないといっておろう!」
 小さな羽根をバタつかせて、ウーマは厳かに発光する。
 しかしそのどーでも良いものは、衿栖の目にも、猫達の目にも入らない。
 美味しそうなマンボウ的顔にだけ、集中してしまう。
「ああ、お願いすこしだけ食べさせてくれにゃ。あ、嘘にゃ。そんなこと思ってないですにゃ」
 衿栖は必死に逃げ出した。
 このままでは、本能に逆らえず、かぶりついてしまいそうだった。
 ――勿論この後、ウーマは猫の集団に襲われた。かぷかぷっとされた。

「いい顔、たくさん録れたね〜」
 切はデジタルビデオカメラで撮った映像を確認していた。
 サルカモ達と一緒に、ラッコ姿で人々に声をかけているマリオン。
 筋肉を躍らせながら、バナナジュースを作っているルイ。
 猫耳衿栖と、ニクスがはにかみながら微笑む姿。
 来栖とレンが語り合う様子。
 マンボウが猫たちにかぷられる様子。
 そんな仲間達の様々な姿を、ビデオに収めることができた。
「お仕事終わりました……」
「お、ニクス」
 仕事を終えたニクスが、切の元に戻ってきた。
「お疲れ様、よく頑張ったねぇ」
 切はニクスの頭を、撫でてあげた。
「う、うううううう……」
 今までの分も、恥ずかしさが込み上がって。
「ごめんなさーい!」
 謝りながら『殴る』というニクス悪癖が爆発した。
「いい、パンチだった、ぜ……」
 殴り飛ばされた、切は仲間達の中に落ちていった。
「これを……頼む」
 切はレンにビデオカメラを渡すと、静かに目を閉じた。
「それじゃぁ、ワイは少し、眠るよパトクラッシャ……」
 そうして、猫&うさぎガーデンの一日は切の意識と共に、幕を下ろした。