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種もみ女学院血風録

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種もみ女学院血風録

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第2章 身体能力検査ですわ!

 百合園、白百合団の体験入学に集まったパラ実生は、組手コースと訓練コースに分かれて百合園生と切磋琢磨していた。
「皆様が私達の訓練についてこれるのでしたら、これをきっかけに深い交流を続けていけたらと思います」
 フロアに設置されたリングにて、自身ありげに白百合団の副団長ティリア・イリアーノが言った。
「ヒャッハー! くんずほぐれつ仲良くしようぜぇ!」
「安心しろ、寝技だけにしておいてやるぜェ」
 喜び勇んで、パラ実生がリングに上ってくる。
 百合園生よりパラ実生の方が多かった。
「では、わたくしは百合園生に教えている、護身術をお見せしましょう」
 シャロン・ヘルムズ(しゃろん・へるむず)が、パラ実生を一人選び、背を向ける。
「後ろから抱き着いてくださいませ」
「ヒャッハー! 任せろォ! こうかこうかこうかァ?」
 パラ実生はシャロンを後ろから強く抱きしめて。手を這わせ始める。
「このように抱き着かれますと、身動きがとりにくいので」
 シャロンは淡々と説明をしていく。
「まずは片足を上げまして、踵で相手のつま先を踏み抜くぐらいの勢いで下して」
 ドン!
「グギャッ!」
「痛みで相手が怯みましたら肘鉄を即座に叩き込みます」
 ガスッ!
「ぐごほっ!」
「密着状態なので、特に狙わなくてもどちらも当たるはずです」
 パラ実生は腹を抱えて蹲っている。
「拘束が解けましたら火事だと叫びながら逃げると、付近の住人も慌てて出てくるので安全に逃げやすくなりますね」
「お、おおおお……」
「後ろからは駄目なのか」
「いや、知ったからには攻略する術も」
 パラ実生達は何やら相談をしている。
「正面から攻めてこられた場合の対処も、万全です。さあ、来なさい!」
「ヒャッハー! じっくり攻略させてもらうぜェ!」
 構えをとったティリアに、パラ実生達が挑んでいく。
「皆さん気合十分ですね。私も負けずに頑張らないといけませんね」
 そこに、パワードスーツを纏った、白百合団副団長ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が現れた。
「私はそこまで凄くはありませんので、私の出来る範囲で頑張りましょう。円さんも一緒に頑張りましょうね」
「うん」
 共に訪れた百合園の制服を纏った少女、桐生 円(きりゅう・まどか)はにこにこ笑みを浮かべている。
「わー、パラ実生の方々沢山来てるね! 男の人いっぱいだ。若くて元気そうな男の人みるの、久しぶり、嬉しいなー」
 円の言葉に、ターゲットを求めていたパラ実生の視線が集まる。
「やっぱり強い男の子に守ってもらいたいなっ! 強くて、守ってくれる人だったら、少しぐらいルックスが悪くても、キュンってきちゃうかも!」
「そうですね。百合園生は私も含めてか弱い乙女ばかりですから、強い方が来てくださいましたら心強いですね。でも男性の方は宦官にならないと姉妹校になるのは難しいかもしれませんね」
「宦官かー、まぁ。それだけ本気なら考えちゃうかも?」
 そんな会話をしながら、2人はリングに上がった。
「私は百合園女学院のロザリンド・セリナです、今日はよろしくお願いします」
 リングに上がったロザリンドは、自分の番を待つパラ実生を前に語り始める。
「まずは、このパワードスーツの特徴ですが、パワーアシスト機能で私のようなパワードスーツより重いものを持ったことのない一百合園女学院生でも十分強くなるので、皆様も是非購入の検討をお願いします」
 まるで彼女は、パワードスーツの販売員だった。
「その他の様々な有用な機能としましては……」
 その後も延々とパワードスーツの説明を続ける。
「なんだその凹凸がないスーツは」
「色気がねぇ!」
「俺は着させる専門で。脱がせる専門でもいいぜェ! ヒャッハー」
 そんな声が飛んでくる。
「あの、ちょっとまって」
 後から入ってきたテレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)が、不可解そうに言う。
「今回は『ゆりぞのじょがくいんのいちにちたいけんにゅうがく』だったよね? だったよね?」
 周囲に確認するテレサ。
「そうだよ」
「そうです」
 円、そしてスーツ姿のシャロンが当たり前というように首を縦に振る。
『なんでこの部屋リングになってるのー! 組手とかしてるのー!? またティリア副団長、また白百合団!? 白百合団は変!!』
 と、いつものテレサなら言うところだけれど。
 テレサは良く考えた。自分視点で良く考えた。
 そうじゃない、違うんだ。そう、これはきっと……。
「ツンデレ!」
 白百合団員もイケメンと付き合いたいはずだ。
 なぜならテレサがそう考えるから。
 だから、これは、つ・ま・り。
「お付き合いしたいけどつい恥ずかしいから攻撃的な表現になってしまったのやね」
 なんだそういう事だったのかと、テレサは気付いた。
 今までいつもこういうパターンになってしまっていたのも。
 照れからくるものだと!
「女子校で、出会いが全然ないからねぇ。気持ちわかるわー。それならうちもひと肌脱いで手伝わないと」
 そして上手く行けばおこぼれゲット! と、テレサも意気揚々とリングに上がっていった。
「このように素晴らしいパワードスーツを白百合団の正式装備にしましたら素敵だと思いませんか? 姉妹校になりましたら皆様も是非導入希望に一票をお願いします」
 ロザリンドのセールストークはまだ続いていた。
「そんじゃ、その性能確かめてやるぜェ!」
「中身のスペックも知りてぇなァ!」
「そんだけすげぇんなら、3人がかりでも大丈夫だよな!」
 待ちきれなくなり、パラ実生が3人リングに上がってきた。
「そんなめんどくさそうなのようり、俺はこっちのちっこいのにするぜェ」
 円にはごっつい男が。
「ヒャッハー、俺の相手はキミだ〜♪ 裁縫教えてくれよォ、百合園生ちゃん」
 上ったばかりのテレサにはハサミを持ったモヒカンの男が飛び掛かってきた。
「おしてこのパワーと、百合園生や白百合団の柔よく剛を制す体術や格闘術の組み合わせがあれば、このように屈強な方とでも対等に戦えるようになります」
 ロザリンドは飛び掛かってきた体格の良いパラ実生を、ぽーんと弾き飛ばした。
「心配するな、切るのはスーツだけだ。ヒャッハー!」
 2人目のパラ実生が、ナイフをロザリンドに振り下ろす。
 ナイフが届く前に、ロザリンドはぱしんと腕を叩き、パラ実生のナイフを弾き落とす。
「ぐぎゃーっ!」
 腕が変な方向に曲がった。
「刃物はダメですよー。切れたりはしませんが、細かな傷はつきますからねー」
「うるせェ、顔を見せやがれ」
 顔に手を伸ばしてきた3人目のパラ実生の腕を軽く掴んで、くるりと倒す。
「うぎゃーっ!」
 肩が外れたようだ。
「ああすみません、パワードスーツを着ていますので、力加減がー」
「あっ、ロザリン。それ電源はいってないかもー!」
「え!?」
 確かに。スーツの電源はOFFの状態のままだった。
「ああ、どうりで力があまり出ないなーと……さ、これからが本番ですよー」
 そんなことを言うロザリンドの側から、「ぎゃー」とパラ実生は自ら転がって床に落ちて逃げた。
「御嬢ちゃん、よそ見してていいのかなー。ぐへへっ」
 ロザリンドの後ろにいた円にも、パラ実生が迫る。
 円はスカートからヘビーマシンピストルを2丁落して手に取った。
 中にはゴム弾が入っている。
「体格の差もあるし、ボク女の子だし。これぐらいのハンデ、問題ないよね?」
 笑顔でお願いすると。
「構わねぇよ。その代り、俺が勝ったら言う事を聞いてもらうぜェ?」
「わーっ、捕まらないようにしないとぉ〜」
 円はパラ実生から逃げて、リングの中を駆け回る。
「ぐへへ、まてまてぇ〜」
「こっちだよ、こっちこっちー」
 男と同じくらいの速度で走り、捕まえられると思わせて。
「こっち、こっち〜。はははははっ」
 円は銃を撃ち、ゴム弾で男の身体を痛めつけていく。急所を外しつつ、足を狙ってパスパスと。
「ぐふっ、この、待ちやがれ……っ!」
「わーい、楽しいなぁ! 一方的にいたぶるのは楽しいなぁ! はははは、超楽しいよこれ!」
 笑いながら、銃を撃ちまくって、男をズタボロにしていく円。
「クソッ! ナメやがって!」
 パラ実生がジャンプして円を押さえつけようとする。
 円は瞬時にポイントシフトで、天井に移動。グラビティコントロールで天井に張り付く。
「あはははは、はははは、超楽しい。たのしー。あははは」
「ぐえっ。ぐふっ、ごほっ、ガッ……」
 笑いながら、パラ実生を蜂の巣にしていく円……。
 大怪我をさせないよう注意してはいるけれど、一方的に嬲っている状態だった。
「うわー、すごい顔。くるしそー。もっとそんな顔みたいなー。あはははは」
「う、ううううう……」
 ついに半泣き状態でパラ実生はリングから降りて行った。
「次の人はだれー?」
 そう声をかけると。
「まて、奴らは百合園生なんかじゃねぇ。見ろ、女の子の特徴である色気や胸がないじゃないか! あの女ボスにも!」
「動きにくいから、サラシ巻いてんのよ! 私はBはある。一緒にしないでっ!」
 ティリアがすぐに反応した。パラ実生をボコりながら。
「なんか酷い事言われた気がする」
 円の手がわなわな震えている。
「そうか、このなんとか団は、おちこぼれ百合園生予備軍ってわけだな」
「百合園生になるために、鍛練をしているってわけか」
「おのれ性悪胸無団! 貴様らなんぞ百合園に不要! 俺らが排除してくれるー!」
 突然、パラ実生が集団でリングに上がってきた。
「なんだかよく分からないけど、本気で来てくれるみたいよ。受け止めてあげないとね!」
 テレサは求愛行動だと勘違い。
「……ロザリン、なんだかボク、全力でやりたくなってきた」
「円さん、殺さない程度にお願いしますね。私も、脱いだら凄いということを教えてあげなければいけないようですが……今は、パワードスーツの凄さを教える事が優先でして……!」
百合園生をよこせぇぇぇ!!」

 そうして真のふんわりやわらかふわふわ百合園生を守るために、パラ実の勇敢な青年達は百合園女学院生徒会予備軍、通称『胸無団』と戦い、散ったのであった(パラ実広報部後日談)。