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最強要塞決定戦!

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2回戦第4試合 HMS・テメレーア VS 扶桑

 
 
「さあ、第2回戦、準々決勝も最後の試合となりました。ホレーショ・ネルソンさんのHMS・テレメーアと柊恭也さんの扶桑との戦いとなります。ベストフォー最後の席に勝ち上がるのは、どちらの機動要塞か」
 
    ★    ★    ★
 
「さあ、行くぜ、行くぜ、行くぜ!!」
 雲海の雲を荒波のように蹴たてて、荒々しく扶桑が戦闘フィールドに現れた。一見すると、飛び散る雲に隠れて船体が見えなくなっているようにも思えるが、これほど派手に周囲の雲をかき回しては、ここにいると敵に知らせているようなものである。
 
    ★    ★    ★
 
「敵機動要塞、位置確認しましたわ。周囲に拡散した雲の粒子が攪乱幕となりえますので、攻撃には実体弾を推奨いたします」
 レーダーを見るまでもないほどだと、エレナ・リューリクが扶桑の正確な位置を計測してデータを富永佐那に提示した。
「そこまで考えて、雲海の中を進んでいるとは思えないけれど……」
 雲海の中の小さな岩塊など障害物とも思っていないのか、豪快に弾いて進む様子が、レーダーにもノイズのように反映されている。実に、パラ実的な「細けえことはいいんだよ」の乗りである。葦原明倫館の生徒にしては、珍しいと言ったところか。
HMS・ヴァリアントへ。データを送る。予定通り、攻撃を開始されたし」
「了解だよ」
 ザーヴィスチに乗った富永佐那からのデータ通信を受けて、フィーグムンド・フォルネウスが扶桑をロックオンした。
「実体弾を推奨されたけれど、ヴァリアントのヴリトラ砲であれば誤差にもならぬな。今度もまた、綺麗に沈めてみせよう」
 浮遊岩塊の影から姿を現すと、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーがHMS・ヴァリアントの胸部にある強化型ヴリトラ砲の狙いを扶桑に定めた。まさに、発射せんとしたそのときである。
「敵機来襲!」
 コックピットに響き渡った突然のロックオン警報に、フィーグムンド・フォルネウスが叫んだ。
 避ける間もなく、機銃の雨がHMS・ヴァリアントを襲う。直撃を受けた右腕が、ショルダーキャノンごと吹っ飛んだ。当然、ヴリトラ砲の射線も狂う。
「どこからわいて出たか」
 伏兵として身を潜めていた自分たちのことは棚に上げて、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーが叫んだ。発射態勢に入っていたヴリトラ砲を、そのまま構わず発射して、機体を大きく敵機にむけてロールさせる。
 漆黒の奔流が、浮遊岩塊を薙ぎ払って周囲の遮蔽物を消し去った。
 その空間を少し煙を引きながら、デルタ型のイコンが横切る。扶桑のラーズグリーズだ。
「奇襲を妨害されては、作戦は失敗だよ。潔く撤退しよう」
 フィーグムンド・フォルネウスが提案する。
「そうであるな。だが、このイコンをテレメーアへむざむざむかわせるわけにもいくまい」
 そう言うと、エナジーバーストでラーズグリーズをかすめるようにして突っ込みながら、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーがHMS・テレメーアから離れる方向へとラーズグリーズを誘導していった。
 
    ★    ★    ★
 
「いつの間に……。読まれていたと言うこと?」
 同じころ、ザーヴィスチもホーネットと交戦を開始していた。
 航空機然としたミサイル攻撃をしてくるホーネットに、ジェファルコンであるからできるランダム機動で対応し、爪先に仕込んだダブルビームサーベルや、ウイッチクラフトキャノンで迎撃していく。さらに、そのまま敵機へも容赦なく攻撃していくが、敵もさるもの、変形による急制動や別方向への急加速を織り交ぜたトリッキーな動きで、簡単には接触させてくれない。戦いは、ドッグファイトの様相を呈し始めていた。
 
    ★    ★    ★
 
「イコン隊、敵イコンと遭遇。戦闘に入りました」
 すぐさま状況を受けて、ローザマリア・クライツァールがホレーショ・ネルソンに告げた。
「うろたえる必要はない。あくまでもイコンによる攻撃は敵の目標を分散させて集中力を削る作戦に過ぎん。堂々と、一騎打ちで勝敗をつけようではないか。主砲、敵艦捉え。グラビティキャノン、荷電粒子砲、三連射、始めーっ!」
 落ち着き払って、ホレーショ・ネルソンが命令した。
 正面から突っ込んでくる扶桑に対して、艦橋前にならんだ三つの主砲塔で、間断のない時間差射撃を開始する。
 
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「敵の作戦が分かっていれば、こちらもそれに対応するのは当然だ。その機動要塞にも、扶桑のように落ちましたマークを刻んでやるぜ。スーパー・オリュンポスキャノン、砲撃開始!」
 今のところは計算通りだとほくそ笑みながら、柊恭也がまっこう勝負をHMS・テレメーアへ挑んでいった。こちらも、三つある主砲塔からスーパー・オリュンポスキャノンを連射する。
 互いの攻撃が、容赦なく船体に命中していった。
「やるな。相討ちは勘弁してほしいものだ。イコン部隊のプログラム変更。敵艦の爆撃を優先させろ!」
 柊恭也が、メインコンピュータに命令した。
 HMS・ヴァリアントとザーヴィスチとドッグファイトを演じていたラーズグリーズとホーネットが機首を返し、HMS・テレメーアへとむかう。
 
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「敵イコン、むかって来ます」
「対空砲でカバーせよ。主砲、打ち負けるなよ!」
 舷側のレーザーマシンガンで敵イコンを牽制しつつ、ホレーショ・ネルソンがブースターで一気にHMS・テレメーアを加速させた。
 急降下爆撃を試みていたラーズグリーズとホーネットが、タイミングをずらされて何もいなくなった空間へとミサイルを発射して通りすぎる。
「ザーヴィスチからの弾着データ来ました」
「誤差修正。各砲塔の連携を確立させよ。各砲塔、斉射!」
 弾着確認の任に戻ったザーヴィスチからのデータを受け取ると、より精密な狙いをつけてHMS・テレメーアの砲塔が一点集中砲撃を開始した。
 
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「直撃だと!? スーパー・オリュンポスキャノンの弾薬庫にか。ははは、これはまいったな。だが、まだ砲塔に砲弾は残っているはずだ。派手に終わるまで、攻撃の手を休め……」
 皆まで言い終えないうちに、扶桑の艦橋にHMS・テレメーアのグラビティキャノンの直撃が命中した。ぐしゃりと、艦橋のあった部分が、重力子の開放によって球形に抉り取られたように圧縮消滅する。直後に、弾薬庫が誘爆をし、各砲塔が連鎖的に爆発した。
 グラビティキャノンにも似たオリュンポスキャノンの砲弾の自爆による空間偏向値の不自然なゆらぎが、その場にあった物質の構成結合に干渉して瓦解を誘発していった。まだ不完全であるが、不完全ゆえに物質を崩壊させていくのだ。その崩壊に巻き込まれ、ガラスに映った映像が割れるように扶桑の船体が劈開を起こして粉々に砕け散っていく。
 
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「勝負あった模様です。第2回戦、最後の勝者は、HMS・テレメーアとなりました」