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最強要塞決定戦!

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最強要塞決定戦!

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1回戦第4試合 機動城塞オリュンポス・パレス VS 伊勢

 
 
「さあ、第4試合は、天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)さんの機動城塞オリュンポス・パレス対、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)さんの伊勢の戦いとなります」
 オリュンポス・パレスは、巨大な岩塊の上に石造りの古城が建っているような外観をしている。立木なども生えており、イメージ的には古城を地盤ごとくりぬいて浮遊要塞にしたような感じだ。
 対照的に、伊勢の方は戦艦型の機動要塞であった。
 艦首に荷電粒子砲を備え、その他の各種砲塔は甲板に収納できる仕組みとなっており、上甲板をいつでも飛行甲板として使用が可能であった。そのため、空母なみの艦載能力を発揮することが可能であった。もっとも、通常は両舷側にあるイコンカタパルトでのみ発着を行っている。これら、度重なる改装によって各種機能を追加してきたために、艦内の居住性は最悪であった。
「まさに、要塞と戦艦の一大決戦であるな」
 コア・ハーティオンが、自分もその戦いに加わりたいかのように言った。
「要は、どっちがよりでっかい的かということよ」
 本質を突いたのだか見誤ったのだか、よく分からないことをラブ・リトルが言った。
「オリュンポス・パレスの火力を、伊勢がどう回避するかが勝敗の分かれ目でしょうね。もっとも、伊勢の火力も、充分に脅威だけれど」
 双方のスペック表を見比べながら、高天原鈿女が言った。
「それでは、実際にどうなるのか、試合を開始しましょう」
 
    ★    ★    ★
 
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス! ククク、今こそ、我らオリュンポスの本拠地、機動城塞オリュンポス・パレスの真の力を見せてやろう。ということで、十六凪よ、パレスの指揮は任せるぞ! 俺はギガース・オリュンポスで出る。ククク、ギガース・オリュンポスは、まだ設計段階だが、シミュレータならば実機として再現可能! この力、見せてくれよう!」
「はっ、了解いたしました」
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)の言葉に、オリュンポス・パレスの司令官である天樹十六凪が深々と一礼する。
「初撃のビッグバンブラスト後に、ギガース・オリュンポスが発進。その後、敵に止めとして、二発目のビッグバンブラストを発射します。塵も残さず消滅させてあげましょう。それでは、オリュンポス構成員は全員配置についてください。戦闘フィールドに現出させます」
 天樹十六凪の言葉に、役職ごとに色分けされた全身タイツを来たオリュンポスの構成員たちが、わらわらと各部所に散っていった。
「ふふふふふ、これが、機動巨神ギガース・オリュンポスのコントローラか。敵に渡すな大事なリモコン。これさえあれば、勝つる……なんだなんだ、外が騒がしいじゃないか!」
 巨大なギガース・オリュンポスのコントローラを手にしたドクター・ハデスが、気持ちよく台詞をのたまっているのを騒音で邪魔されて、不快そうに顔を顰めた。
 ちなみに、量産型饕餮を元に設計されたギガース・オリュンポスは、オリュンポス・パレスの城の部分が変形してロボットになる予定の物である。その大胆すぎる発想に、実現には山ほどのハードルが待ち構えていた。それでも、ドクター・ハデスはいつか実現する気満々である。仮に実現したら、オリュンポス・パレスの残された部分はただの岩塊になってしまうわけだが……。
 また、多くの量産型饕餮のカスタム機が搭乗可能に改造されてしまうのに反して、これはきっちり外部からのリモコン操縦である。
 さて、話を戻して、突然聞こえてきた騒音であるが……。
 
    ★    ★    ★
 
「ははははははは、伊勢、ここに見参!!」
 『雲海ゆかば』のテーマソングを大音響で周囲に流しながら、葛城吹雪が伊勢の艦橋から眼前に現れたオリュンポス・パレスをじっと見据えた。ゆらゆらと空間を歪ませながら姿を現した古城は、まるで雲海に現れた蜃気楼のようだ。
「本部へ打診せよ。アトラスヤマノボレ。本艦の存続は、この一戦にあり。各員、奮戦努力せよ!」
 なんだか、ノリノリで葛城吹雪が命令を発する。艦橋の上には、まるで鉢巻きのように横断幕がまかれ、『見敵必殺』と書かれていた。旗は、もろに旭日旗である。
「まったく、こんなところで、ごっこ遊びをしなくてもいいものを……」
 半ば呆れて、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が溜め息をついた。今の葛城吹雪は、趣味全開である。
「全艦、砲雷撃戦用意。艦載機も即時発進せよ。これは訓練ではない。実戦である! 艦隊各位に徹底させろ」
「えっと、艦隊って言っても、随伴艦に朝霧が一隻いるだけなんだけど……」
 駆逐艦クラスの大型飛空艇とイコン一機程度がいても、到底これでは艦隊という規模ではないとコルセア・レキシントンが呆れた。だが、葛城吹雪にとっては、雰囲気が重要なのだろう。細かいことはいいのだ。
「行くぞ、全砲塔あげ! 照準よーし。撃ち方始め!!」
 葛城吹雪が攻撃開始を命令した。
「続いて、ビッグバンブラスト、遠慮せず発射だあ!」
 躊躇せずに、虎の子のビッグバンブラストを発射する。甲板にリフトアップされた、超大型巡航ミサイルが伊勢から発射された。
 
    ★    ★    ★
 
「ビッグバンブラスト発射します。全員、着弾時の対閃光防御」
 同様に、オリュンポス・パレスの方も、予定通りビッグバンブラストを発射した。
 各種砲弾の飛び交う中、二基のミサイルが真正面から飛来する。
 カッチン!
 その馬鹿正直な弾道プログラミングの結果、みごとビッグバンブラスト同志が正面からぶつかり合った。
「うおおおおお!?」
 二つの機動要塞の間で巻き起こった凄まじい爆発に、葛城吹雪が視力を奪われてくらくらする。
「馬鹿な、相殺されたというのですか!?」
 遮光ゴーグルを跳ね上げて、天樹十六凪が唸った。
「申し訳ございません、ハデス君。初撃は失敗いたしました。この上は、イコンによる敵殲滅を。僕は、第二艦橋に移動します」
 そう言うと、天樹十六凪が、キャプテンシートごと地下の岩塊部へと下りていった。このまま城の中にある第一艦橋に残っていては、ちょっとまずいことになるからだ。
「よし、ギガース・オリュンポス始動!」
 地下の第三艦橋に待機していたドクター・ハデスが、コントローラのボタンを押した。オリュンポス・パレスの城の部分が音をたてて崩れ始める。いや、擬装の石壁をふるい落として、鋼鉄の外装を顕わにしたのだ。まさに、鉄(くろがね)の城である。
「ははははは、このギガース・オリュンポスの高火力にかかれば、ちんけな戦艦など一瞬で蒸発……。あれっ、あれっ!?」
 さっそく攻撃しようとしたドクター・ハデスであったのだが、なんと、武器がなかった。変形データの方にかかりきりだったので、武器データまで作成している暇がなかったのだ。
「うおおおおお、ドクター・ハデス一生の不覚! いや、待て、まだ手はあるじゃないか。来い、カリバーン!」
『了解した、ドクター・ハデス! お呼びとあれば、即参上! 神剣合体!』
 ドクター・ハデスに呼ばれて、聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)が、巨大な剣型イコンである神剣エクス・カリバーンとして、オリュンポス・パレスの格納庫から飛び出してきた。