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第3章 新しい発見

 窓から見えた月が、とても綺麗だったから。
「翔くん、今から出かけない?」
 夕食後、辻永 理知(つじなが・りち)は、旦那である辻永 翔(つじなが・しょう)を誘って空京の街を訪れた。
「空京にもネオン街、あるんだね。翔くんはつきあいとかでよく来てるのかな?」
「たまには……理知は行ったことないのか?」
「うん! だってまだ、未成年だからお酒飲めないし。二十歳になったら連れてってくれる?」
 少し先に、キラキラと輝く区画がある。空京の歓楽街だ。
 とても賑わっているようだけれど、自分にはまだ早いと理知は思っていた。
「うん。どんな店行きたい?」
「大人なバーとか興味あるんだ〜」
「そっか。それじゃいい店探しておくよ。なにかの記念日に行けるといいな」
「うん!」
 今日は歓楽街ではなくて、2人は百貨店や色々なお店の立ち並ぶ繁華街の大通りを歩く。
「あ、このお店……昼間はカフェなのに、今はちょっと雰囲気が違う」
 有名ブランドショップの隣にある小さなカフェは、友人と何度か利用したことがある。
 だけれど、今の時間はカフェという雰囲気ではなくて……。
「夜はバーになるみたいだな。入ってみる?」
「ううん。飲まなくてもバーに入ったところ見られたら、怪しまれるかもしれないしね」
 旦那の翔は教官だから。
 怪しまれる行動は避けないと、と理知は思う。
 妻とはいえ、未成年に酒を飲ませたと疑われるのは好ましくない。
「イコプラショップって何時まで開いてたっけ?」
「住宅街の店は、もう閉まってるかもな。デパートの中のは、9時頃まではやってるはず。あと、駅に近いあの店は、結構遅くまでやってるみたいだ」
「それなら帰りに寄れるね」
「遅くなり過ぎなかったらな」
「そうだね……あっ! 屋台が沢山」
 公園の中と近くに、屋台が立ち並んでいた。
 日中は店はなく、子供達が楽しく遊んでいる公園だ。
 おでんにラーメン、たこ焼き、焼きそばのお店があって。
 若者や仕事帰りのサラリーマン達が、ベンチに腰かけて食べたり、飲んだりしている。
「近くのレストランから見える公園の景色、キレイそう」
 少し離れた場所にはレストランがあり、外壁に電気が設置されている。
 窓からは公園の花壇や池を眺めることが出来るようだ。
「今度、一緒に入ってみようね」
「ああ」
 翔が自然に理知の手を引いて、公園の中を散歩して。
 反対側の出口から、商店街へと出た。
「この辺りのお店は、ほとんどしまっちゃってるね」
「けど、2階の電気は点いてる」
「家族と楽しい時間を過ごしてるのかな」
 そう言って理知が微笑むと、翔も笑顔を見せた。
 翔と理知は、今年の6月に結婚をして、2人でアパートで暮らし始めた。そう、家族になった。
 普通に一緒に過ごす夜もいいけれど……。
 こうして夜、出歩く時間は減ったかもしれない。
 でも今日は遊びたいというよりも、自分達が暮らし、過ごす街の、普段見ることのない夜の姿を観たかった。
「あっ、カラオケの音――昼間は静かなお店なのに」
 商店街にある小さな焼き鳥屋から、カラオケを楽しむ人々の声が聞こえてくる。
 仕事を終えた人々が集まって、楽しく過ごしているのだろう。
「ふふ、新しい発見ってわくわくするよね!」
 理知のそんな言葉に、翔は笑顔で頷いて。
 もう少し、一緒に夜の街を歩くことにする。

 勿論、散歩の最後にはイコプラショップに寄って。
 遅くなりすぎない時間に、2人はアパートに戻ったのだった。