イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

夜遊びしようよ!

リアクション公開中!

夜遊びしようよ!
夜遊びしようよ! 夜遊びしようよ! 夜遊びしようよ!

リアクション


第7章 何より大事な時間
 
 シャンバラ宮殿の展望レストラン。
 ピークの時間が過ぎたこともあり、店内はとても静かだった。
 見下ろせば、まだ明るい空京の街が見える。
「ひとつ、ひとつの明かりの下に、パラミタや地球から訪れた人々が、いるんだよね」
 地上を眺めて、ふと代王の高根沢 理子(たかねざわ・りこ)がそう呟いた。
「人々が活きているあかしですね」
 向かいに座っているのは、酒杜 陽一(さかもり・よういち)だ。
 1日の仕事を終えてから、理子と陽一はこの展望レストランで軽食をとることにした。
「理子さん」
「ん?」
 陽一が名前を呼ぶと、理子は彼に輝きのある瞳を向けてきた。
 陽一は街の光よりも、彼女の瞳の輝きの美しさに惹かれながら、話す。
「俺を選んでくれてありがとう」
「え?」
 理子は不思議そうな顔をして。
「なに、突然……」
 すぐにちょっと照れたように笑う。
 微笑した陽一だが、直後に少し表情に影が生まれる。
「でも、将来への不安もある」
 子供の頃、陽一は常に家族の顔色を伺ってビクビクしてきた。
 その頃の事を思いだすと、今でも少し怖くなるのだと、陽一は素直に理子に話す。
「俺が理子さん達から笑顔を奪ってしまうんじゃないかって」
「なんで? 今、悩みがあったり、今が辛いのなら同調もするけれど、昔のことだよね。だったらあたし、普段通りだよ。普段通り楽しく過ごしていれば、陽一さんの気持ちも晴れるんじゃないかな」
 そんな理子の笑顔を見て。
 陽一はほっとする。
「俺はこれからも君を支えるよ。それで、俺が不安な時は理子さんに助けてほしいんだ」
「うん、あたしも陽一さんを助けられたらなって思うよ」
 理子の返事を聞いて、陽一はこくっと頷く。
「言いたいことはそれだけ。さぁ食べよう!」
「いっただきまーす!」
 届いていたサンドイッチとスープを、食べ始める。
 陽一が頼んだのは、野菜中心のサンドイッチ。
 理子が頼んだのは、たまごや、カツが入ったサンドイッチだった。
 スープも、陽一は野菜たっぷりのミネストローネで。
 理子は鶏肉の入った玉子スープ。
 互いに頼んだものを、味わって食べていく。
「ううーん、このスープの玉子、ふわふわで柔らか〜。味もとっても美味しい!」
 理子がとても嬉しそうな笑みを浮かべると、陽一も笑顔になる。
 こんな風に、屈託なく過ごせる時間が何より大事だと、陽一はしみじみ思う。

 食事が終わってから。
 先に席を立った陽一は理子に手を伸ばしながら……。
「理子さん、キスをしていいかな……?」
 そう尋ねた。
 理子が「えっ」と目を見開く。
「え、ええと、理子さんさえ良ければってことなんだけど。俺としては、できたらすごく嬉しいなーって……」
 少し照れている陽一に、理子は手を伸ばして。
 彼の手を掴んで立ち上がった。
 そのまま何も言わずに、こくりと頷く。
 陽一は理子を引き寄せて。
 彼女の唇に、そっと自分の唇を重ねた。

 2人きりでいられた時間は、ほんのわずかな時間。
 高根沢理子には代王としての職務があるから……。
 この僅かで貴重な時間を、彼女と触れあるこの時を。
 大切に守っていきたいと陽一は思うのだった。