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若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~

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第12章 おやつタイム

 カランコロンと音が響き、喫茶店のドアが開いた。
「こんにちはー」
 訪れた天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)が挨拶をすると。
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃい!」
「ようこそ!」
 バタバタわらわら、男子店員が集まってくる。
「少し休ませていただきますわ」
 結奈と一緒にイングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)も訪れていた。
「なんだイングリットか……」
「いやまあ、歓迎だけどうん」
 喫茶店を手伝っている若葉分校男子達はちょっとがっかりしたようだった。
 結奈は実年齢は年頃だが、外見はどう見ても小学生だし、イングリットの性格はもうよくわかっているので、お近づきになりたいと思う男子はここにはいなかった。
「あそこの席にしよ、いんぐりっとちゃん〜」
 結奈はイングリットを引っ張って、窓際の奥の席に歩いて行く。
「動物が沢山いるのですね」
「うん、にぎやかだね〜。動物さんたちといっしょに、のんびりおやつタイム、だね!」
「ええ、癒されますわね」
 奥の窓際のテーブルでは、黒猫が椅子の上で丸くなっていた。
 結奈とイングリットは向かいのソファー席に並んで腰掛けることにした。
「ええっと、何にしようかな。甘い物が食べたいな」
「わたくしは……フルーツをいただきますわ」
 結奈はケーキと甘い苺ミルクを頼み、イングリットはメロンと林檎ジュースを注文した。
 店内にいる猫や犬に癒されながら、2人は今日の出来事について話していく。
「おかげさまで、大盛況ですのよ」
 イングリットは勿論、自分達の企画、闘技場についてた。
 場所が場所な為に、多くの参加者が集まっていた。
 実際に戦いたい人も、プレイヤーとしても楽しむことができる企画だった。
「いんぐりっとちゃん、自分も楽しいと思うけど、みんなに楽しんでもらうために頑張ってるんだよね。えらいな〜」
 結奈がそう言うと、イングリットは誇らしげに微笑んだ。
「結奈さんは一日どう過ごされたのですか?」
「私はいんぐりっとちゃんの代わりに、屋台めぐりをしてたよー」
 結奈はどんな屋台があるのか、お勧めの食べ物やゲームについてイングリットに聞かせてあげた。
「うん、でもここのケーキが一番おいしい!」
 届いたチョコレートケーキを食べながら、結奈はとてもうれしそうな笑みを浮かべて、ホークで切って刺すと、イングリットの口へ運んだ。
「いんぐりっとちゃん、あ〜ん」
「あ〜ん」
 イングリットは、ぱくっとチョコレートケーキを食べて、うんと頷く。
「とても甘いケーキですね。フルーツとも合いそうです」
 そして、代わりにと、イングリットはメロンを一切れ、結奈の口に運んだ。
「ありがとぉ〜……」
 イングリットの顔を見ながら、ぱくっと食べた結奈は……なんだかドキドキしてきた。
「ん〜」
 気を紛らわせようと、苺ミルクをごくごく飲んだらさらにドキドキして。ドキドキが止められなくなって。
「いんぐりっとちゃん、だ〜いすき!」
 突然、イングリットに抱き着いたのだった。
「結奈さん!?」
「ふふふ、イングリットちゃ〜ん」
 そして、イングリットのほっぺにすりすりして甘えていく。
「結奈さん……なんだか可愛らしいです。猫さん達みたいですわ」
 イングリットは結奈を抱き留めて、頬を寄せて背中をなでなでするのだった。

○     ○     ○


 喫茶店に夕日が射し込んできた。
 出し物もほとんど終了し、遠方から訪れた者達は帰還の準備を始めていた。
「今日はお疲れさん!」
 喫茶店にて、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)は誘った相手――アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)とグラスを合わせ乾杯をした。
「いやー……なんというか、演劇! 壮絶だったな」
 一口ジュースを飲んだ後、康之がそう言うと、アレナと優子は顔を合せて笑った。
「それにしても参加自由だったら俺も出ればよかったなぁ……鏡の役とかで!」
「何故鏡?」
 優子が尋ねると、康之は胸を張って堂々と答える。
「他にやれる役がなかったからだ!」
 小人は決まっていたようだし、王子は優子がやると聞いていたから。
「さすがに優子さんよりかっこいい王子様をやれというのは厳しい話だぜ!」
 と、康之が言うと、アレナがくすくす笑う。
「でも鏡さんは、王妃亜璃珠さんに叩き割られちゃいましたよ」
「あ、そうか!」
「演ってくれてもよかったぞ、王子。ただ、ラストは変わらなかったと思うけどな」
 優子がふふっと目を煌めかせる。
「それはつまり、王子も含め桃優子侍は全てぶった斬りにしたと」
「そういうことだ」
 3人は声をあげて、笑い合った。
「はははは……っと、そういえば、ポスターにゼスタ出てたから、もしかして出るのかなって思ってたけどやっぱり無理だったか」
「分校からは私にも連絡がなかった。ブラヌ・ラスダーが勝手に写真を載せたらしい」
「私には連絡があったんですけれど、優子さんは忙しいと思うから内緒にしておいてねって言われました」
 しかし優子には多方面から連絡が行ったようだ。
(若葉分校のこういうイベントの時、ゼスタ必ずいたのになー……。容態、どんな感じなんだろ)
 優子やアレナはその話題をそれとなく避けているようで、康之もこの場では聞き難かった。
(まあ、ゼスタも心配だけど、2人の事も心配だよなぁ)
 ゼスタの容態が思わしくなければ、優子に影響が出る。
 優子に影響が出れば、アレナも不調に陥るのだ。
「後は片付けて帰るだけだけど、体調悪くなったら、無理せず俺に言ってくれよな? そしてら俺が担いででも保健室へ直行……」
 そう言った康之と優子の目が合った。
「いや、担ぐのはダメか。じゃあおぶってでも連れて行くから!」
「私は大丈夫だ。アレナのことは、もしかしたら頼む。私は背負ってあげられなくなるからな」
 ぽんぽんと優子はアレナの頭を優しく叩いた。
「わ……私も大丈夫です。私が優子さんをおんぶしますよ」
「で、そのアレナを俺がおぶると。……だっ駄目だ、サンドイッチは危険すぎる。アレナが挟まれて潰れちゃいそうな気がするぜー!」
「それなら、私がアレナを肩車するんで、その私を大谷地が背負うというのはどうだ?」
 笑いながら優子が言った。
「康之さんの頭に捕まらせてもらいます!」
「……そうか、それでいこう! 2人とも落ちるなよー」
「はい!」
 アレナは元気に答え。
「いや、無理だって」
 優子は笑い声をあげる。
 ともあれ、今日は2人ともとても元気そうだった。
 アレナもいつもより幸せそうに見える。
 イベントが開かれた時。ゼスタがいない時は――。
 こうして自然に、アレナは優子の傍で微笑んでいる。
 ゼスタがいる時には、彼の誘いでゼスタの手伝いをしていることが、多い。
 その時もアレナは微笑んでいるけれど。
 自分がいて、優子がいて。その隣にアレナがいる。
 そんな今日、今のアレナはいつもよりも幸せそうだと。
 康之はそう感じたのだった。