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パラ実分校種もみ&若葉合同クリスマスパーティ!

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パラ実分校種もみ&若葉合同クリスマスパーティ!

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若葉分校ツリー周辺!


 若葉分校が用意したテーブルには、ピンクのテーブルクロスが敷かれ、分校で育てた花が置かれていた。
 どのテーブルからも良く見える位置には、飾り付けられた3段ウエディングケーキスタンドが置かれている。
「なかなかの出来でしょ」
 その一番上には、お菓子で作られたクリスマスツリーが置かれていた。
 中はカステラ、周りは緑色の生クリームが塗られていて、マジパン、チョコレート、果物のオーナメントが飾られている。
「素敵なクリスマスツリーケーキですね」
 テーブルの準備をしていた佐々布 牡丹(さそう・ぼたん)が歩み寄り、持ってきていた飾りを取り出す。
「私も飾らせていただきますね」
 牡丹が飾ったのは、『バイクに乗ったサンタクロース』のクッキーだった。
「私のデザインなの、このケーキ。……作ったのはほとんどリーア達だけど」
 若葉分校の生徒会長であるシアルが得意げに言った。
「素敵なアイディアですわ」
 藤崎 凛(ふじさき・りん)が、シェリル・アルメスト(しぇりる・あるめすと)と共に近づいて、ツリーの形をしたケーキを眺める。
「私達はこちらを飾らせていただきますね。ケーキのツリーにちょうど良かったですわ」
 そして、2人で作ったキャンディケーンを飾った。
「料理はあっちのコーナーに並べるんで、適当に好きなのもってってくれよな」
 ブラヌ・ラスダーが集まってきた人達に説明をしている。
 料理は各テーブルにも多少置かれているが、概ねバイキング形式で、ツリーやビュッフェ台から各々好きな物を自分でとっていく形のようだ。
「ありがとうございます。せめてお料理のとりわけくらいさせていただきますね」
 凛は自分が座るテーブルの分の料理をシェリルと共に取りに向かった。
「食べ物以外は、この部分にひっかければ大丈夫かな?」
 桜月 舞香(さくらづき・まいか)はケーキスタンドに、トナカイのマスコットを飾った。
「スタンドの真ん中はあたしの担当なの」
 種もみの塔から出てきたネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は、大きな箱をいくつも持っていた。
「危ない、危ない〜」
 妖精の格好をしたレナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)が、上の方の箱が落ちないよう、手で押さえる。
「ケーキですね。とりあえずこちらのテーブルに置いてください」
 牡丹も急いで近づいてきて、ケーキを近くのテーブルに置くのを手伝った。
「ありがと。一番上のが中段用だよ」
 ネージュは椅子に乗っかって、一番上の箱を下ろして開く。
 中に入っていたのは、種もみをふんだんに使ったケーキだ。
 生地には粉末にした種もみを沢山練り込んであり、種もみチョコや、圧力をかけてパフにした種もみにキャラメルをコーティングしたお菓子が乗っている。
「残りはあっちのテーブルに並べておいて、料理と同じように、バイキングのように取っていってもらうのがいいかな」
「そうですね。給仕を担当してくださる方もいますから、時々テーブルを回っていただくこともできそうです」
「ケーキだけじゃなくて、手作りのお菓子や、ハーブをふんだんに使ったお茶も用意しておくね」
「お願いします。それでは、こちらのケーキは私達で並べておきます」
「うん、お願い。他のも持ってくるねー」
 ネージュはケーキを牡丹に預けると種もみの塔へ戻っていく。
 パーティに集まる人々、料理やお菓子を食べて楽しそうに笑う人々を思い浮かべ、ネージュの顔に自然に笑みが浮かぶ。
「さー、開始まであと少し、頑張ろ〜!」
 皆に喜んでもらえるよう、最高の笑顔が見れるように頑張ろうと思うのだった。
「ふむふむ、あの娘はパティシエなのねぇ〜」
 レナリィは牡丹と一緒に用意した名簿で、ネージュの名前を確認する。
 名簿には両分校所属者と手伝いに訪れた人々の名前を、スタッフとして入れてある。
「楽しいパーティにするためには、準備大切だよねぇ〜」
 過去に、暴走して契約の泉に勝手に向かってしまった非契約者が発生した事件等もあったため、今回もパーティに参加する、地球人の非契約者の名簿一覧をも作成してあった。
 それらの名簿には、簡単なプロフィールも乗っている。
「交流のきっかけにもなればいいですね」
 ケーキを運びながら牡丹が微笑む。
 準備を進めている間にも、次々に若者達が来場し、ケーキに持ってきた飾りを吊るしていく。
「世界が平和になりますよーに!」
 そう言いながら、桐生 円(きりゅう・まどか)パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)と吊るしたのは、チョコレートで作った銃弾だった。
「私はこれ。これで出会いを。あ、勿論顔写真添えてもらってそこからイケメンを……」
 雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)は、可愛らしいぬいぐるみを飾りながら、ニヤニヤ笑う。
 裏に、リナリエッタのメールアドレスを書いた紙を留めてある。
 ブチッ。
 一緒に訪れていた桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)が即、メールアドレスが書かれた紙を引きちぎった。
「ああ、なんてことをー」
「飾り付けも終わりましたし、女子だけのテーブルで大人しく楽しみましょう」
 そして、鈴子はぶーぶー言っているリナリエッタを、若葉分校側のテーブルに引っ張っていった。
「これなら、合うだろう」
 早川 呼雪(はやかわ・こゆき)はリンゴを用意していた。若葉分校側のツリーがケーキだと知り、りんごを切って皮の一部を切り取り、『うさぎりんご』にしたものを飾り付けた。
「あれ、これも飾り付けでしょうか」
 準備に携わっている関谷 未憂(せきや・みゆう)が不思議そうにツリーの隣に置かれている大きなモノを見る。
 沢山の飾りがつけられたツリーケーキの隣には、いつの間にか誰かが置いた「等身大パワードスーツぬいぐるみ」があった。吊るせないので、紐の部分だけひっかけてある。
「この縫ぐるみ、特注ですよね? それとも手作りでしょうか……。このパーティのために用意したのだとしたら……不思議な気迫を感じます」
 未憂は深く関心をしながら、ツリーの飾りを整えていく。
「対抗馬はこれね♪」
 秋月 葵(あきづき・あおい)が持ってきたド派手で大きな『ジェイダス人形』を反対側の隣に飾り付けた。
「こ、これもインパクトがあります……!」
 パワードスーツとジェイダスに護られたウエディングツリーケーキ。
 なんだか最強無敵な気がした。
「委員長、ゴミ箱はどこにおいておけばいい?」
「ゴミ箱は、あちらの隅に……って、私、委員長ではありませんよ」
 未憂はにっこり笑みを浮かべながら、尋ねてきた分校生に言う。
 今日は、学園祭の時のように不調ではなかった。
 何故不調だったのか……その理由は大体わかっている。
 ちらりと、原因――リン・リーファ(りん・りーふぁ)を見ると、彼女は席に座って、ぼーっとしていた。
 しばらく行方不明だったリンが、どこで何をしていたのか、尋ねてもいないし、リンの方からも説明してはこない。荷物を散らかして行ったことと、未憂の持ち物を持っていったことに対してのみ叱ったのだが、リンは謝罪するだけで、言い訳はなにもしてこなかった。
 ただ、多分若葉分校の教師でもあるゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)絡みなんだろうなとは、感づいていた。
 ……そんなリンがツリーに吊るしたのは『愛の宿り木』だった。
 ヤドリキの下にいる女の子にはキスしてもいいんだそうな。
「ヒャッハー、見ろこのモンブランツリーを!」
 若葉分校の番長である吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、大声で客達にアピールする。
「若葉分校には、スゲー料理人がいるんだぜ! 食う奴いるかァ!? オレが切ってやるぜェ。ケーキカットやる奴いるんなら、譲ってやるけどよォ。
 ブラヌ、シアルも相手連れて来い。オレが入刀の仕方を教えてやるぜェ!」
 何せ竜司は、(脳内の)恋人神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)と、初めての共同作業である(巨大魚の)入刀を夏に済ませているのだ。
「ケーキは力任せにカットしたら、ぐちゃぐちゃになるんでしょ。変なこと教えようとしないで」
 皿を持って、シアルや若葉分校生が近づいてきた。
 若葉分校は勿論男女交際を禁止などしていないのだが、分校生達が交際をしているなどという話は、全く聞かない。唯一、総長と番長が(番長の脳内で)付き合っているという噂だけは時々流れている。
「順序が逆になるけど、ファーストバイトってヤツをやらせてもらうぜ!」
 ブラヌは怪しい笑みを浮かべながら、下段のリーア・エルレン(りーあ・えるれん)が作ってくれたケーキを、皿の上に乗せていく。
 こちらのケーキは小さくカット済みだ。
「ん? ファーストバイトってなんだァ?」
 竜司が尋ねると、ブラヌは得意げに答える。
「ケーキカットの後、ケーキを互いに食べさせあって、愛情の深さを周りに見せつける儀式だ!」
「こんなカンジ。番長も、(ブラヌと)2人でやったら? 笑いが溢れるわよ、きっと」
 さらにシアルが、ウエディングブックを見せて、ファーストバイトをし合う夫婦の写真を見せてくれた。
「なるほど、入刀の次はそれをやればいいのか」
 ケーキの側には、様々な大きさのスプーンが置かれている。
 竜司はその中から一番大きなスプーン?を確保しておいた。
「……ところで、これ何よ」
 シアルが、目を留めたのは、『叩くなよ? 絶対叩くなよ?』と書かれた紙が貼られた雪だるまの頭の飾りだった。
「叩いて、叩いてって言われてる気が……えいっ」
 ベシンッ
 シアルが叩いた途端。
 ぱっと白い粉が舞った。
 そして、『叩くな言うたやろー!』と書かれた垂れ幕が落ちてきた。
「はははは、何これ、あはははははっ」
「なんだそりゃ、がははははっ」
 シアルや若葉分校生達はちょっとびっくりした後、大きな声で笑い出した。
 それは、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が仕掛けた、皆を笑顔にする飾りだった。

「あっ、パーティ始まってる〜。アルちゃん来てるかな」
 良家の子女であるミルミ・ルリマーレン(みるみ・るりまーれん)は、使用人達に会場まで連れてきてもらった。
 馬車から降り立ったその時。
「みるみちゃーん、へろー」
 ぽてぽて、小さな女の子が歩いてきた。
「アルちゃん! アルちゃん! アルちゃん〜」
 笑顔でミルミはその子――ちぎのたくらみで、5歳くらいの姿と化した牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)の元に駆けた。
「ミルミ分が足りなくてこんなに縮んじゃいました、補給させてください」
 ビシっと片腕を上げると、アルコリアは両腕を開いてぴょんとミルミの胸にダイビング。
「ミルミちゃんミルミちゃんミルミちゃん」
「アルちゃん、アルちゃん〜」
 二人は互いの名前を呼び、抱きしめあった。
「頬擦り一回で26万ミルミ……っ! やはり、本物は……違う!」
「アルちゃん、むぎゅっ」
「ふにゃぁ」
 アルコリアの超感覚で飛び出た黒猫の耳としっぽがぴこぴこぱたぱた動いている。
「にゃー、にゃー」
「あううっ、アルちゃん暴れすぎ〜っ」
「にゅーにゅー、ふにゃーっ」
 猫手ぱんちに、頬をむぎゅっして、うにうにゅアルコリアは小さな手でミルミを撫でて弄って、すりすりして、存分に味わって。
「……ふーっ」
 そして、ぽんっと突然元の姿に戻った。
「アルちゃん、お帰り」
 目が合った途端、ミルミは嬉しそうで、少し不安そうな顔でそう言った。
「ただいま、ミルミちゃん」
 アルコリアはぎゅっと、今度は大人の身体でミルミを包み込んだ。
「さて、ミルミちゃんは何かしたいことある? パフォーマンスとか見る?」
「アルちゃんはしたいことある?」
「私は、ここで十分。……いろんな場所に行ったよね、でも私はいつも同じ場所にいたのだなぁと」
「ん?」
 不思議そうな顔をするミルミに、アルコリアは「んー」と声をあげて。
(少し柄じゃないこと言ったかもなー)
 と、むふーっと息をはいて、顔をうりうり押し付けて隠し、くすくす笑った。
「ふふふふっ。んとね。それじゃ、ツリーが面白そうだから見に行こ〜。変態が沢山いるっぽいからアルちゃんミルミから離れないでね!」
 ミルミがアルコリアの腕をぐいっと引っ張った。
「勿論。今日は離さないよー、ミルミちゃん」
 2人は笑い合って、パーティを楽しむ為に皆が集う場所へと歩いていった。