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パラ実分校種もみ&若葉合同クリスマスパーティ!

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パラ実分校種もみ&若葉合同クリスマスパーティ!

リアクション

「ぐへへへへ、飲め飲め。けど、未成年はアルコールはよしとけよォ」
 吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、グラスや皿が空になっても、注文したり、取りに行ったりせずに席に留まっている女の子に近づいて、ジュースを注いで上げたり、ケーキをホールごと持ってきて、皿に乗せてあげたりと、気を回していた。
「あ、ありがとうございます」
「ところで、番長さん」
 最初は緊張して怖がっていた女の子も、少しずつ打ち解け竜司と話が出来るようになっていた。
「なんだァ?」
「あの、どうして上半身裸なんですか?」
「寒くないんですか?」
「寒くねェなあ」
 不思議そうに尋ねる女の子達の前で、竜司は胸を張ってみせる。
 ケーキを食べていたら、体がぽかぽかと温まってきたのだ。
「どうだ、顔もイケメンだが肉体もイケてるだろ」
 竜司はふんっとポーズをとってみる。
 女の子達は彼の姿にうっとりと見惚れて(ぽかーんとして)、幸せそうに微笑んだ(失笑した)。
「何をやってるんだ、竜司」
 振り向くと、料理を取りに来た優子の姿があった。
 ちなみにリボンはニット帽をかぶり、隠している。
「優子かァ。待ってたぜェ!」
 すぐに竜司は確保しておいた巨大スプーン?を持ち上げると、半分にカットしたケーキを乗せて、優子の口へと持っていく。
「さァ、食え!」
「……?」
 優子は竜司の突然の行いに、眉を寄せるが。
 彼が優子の思考回路では理解しにくい人物であることは熟知しているので、とりあえず言われた通り、ケーキを食べた。スプーン……というか、雪掻きシャベルの上に乗ったケーキを、ホークで小さく切って、自分の口に運んで。
「美味いか?」
「ああ、美味しいよ」
「オレにもやっておくか?」
「……?」
 良く分からないが、同じことをやってほしいと言っているような気がして。
 優子は竜司の手からシャベルを受け取ると、同じようにケーキを竜司の口の方へと持っていく。
「ヒャッハー、堂々としてんな、さすが俺の嫁」
 そんなことを言うと、竜司はケーキにかぶりつく。
「豪快だな……無理するなよ」
 優子はお茶を貰い、竜司へと差し出す。
「ふご、ふご、ふご……ふう……茶が欲しいと思ってたんだ。全くお前は気が利くぜェ」
 竜司はケーキと茶を飲み干して、楽しげに笑った。
「こいつは、オレからのプレゼントだ。ヒャッハー」
 そして、竜司はズボンのポケットから、CDを取り出して優子に渡した。
 優子はCDに書かれているタイトルを見て、しばらく固まっていた。
 曲のタイトルは『オレの優子を讃えるCD2023バージョン』。竜司が作り、竜司が歌っている曲だった。
「でだ。この曲にもあるように、若葉分校に出入りする奴らが超絶増えたんで、そろそろ増築してぇなあと思ってるんだ」
「え? ああ、そうか……」
 若葉分校は普通の学校の分校とは違い、パラ実の分校……若者達のたまり場だ。
 一応講師でもあるゼスタが時々顔を出しているが、遊びに来ているようなものだった。
 竜司は優子に、勧誘の成果が出て、分校生が増えたこと。
 ネットもあることだし、カラオケボックスのような気軽に歌える場所を作って、分校生に歌の素晴らしさを伝えたいということを話していった。
「防音設備もあれば、音痴も恥ずかしがらずに練習できんだろ」
「……うん。防音設備のある部屋は必要だ
 受け取ったCDを見つつ、優子は力を籠めて答えた。
「ホールの前の土地を使うか? それともシアルん家に頼んで、土地を分けてもらうかァ? 開墾を条件として」
「ホールを大きくしてもいいと思うし、前の土地を使わせてもらってもいいと思う。生徒会長を通して、農家の方と相談して決めてくれたら助かる」
 増築する場合、よほどのことがなければ承認はするよと、優子は竜司に約束をした。
「そうかァ! どんな建物にするか、迷うぜェ〜。日当たりを悪くしちゃ、迷惑かけるからな。2階建くらいまでがいいか。建築家に依頼するんなら、建設費をどうするかも考えねぇとな」
「そうだな……ところで」
 優子が竜司の身体に目を留める。
 彼の身体には、包帯が巻かれていた。
「なんだァ? ぐへへ、ちょっとは人目を気にしろよォ、優子」
 優子の熱い眼差し(?)を受けた竜司が照れながら言う。
「いや、その怪我どうしたんだ?」
「ん? ああ、これか。イケメンらしくちょっと大荒野で冒険してた。傷は男の勲章だぜ!」
 竜司はそう誇らしげに答えた。
「そうか。だがあまり、無茶をするなよ。お前は(若葉分校の)大黒柱なんだから」
「!! ……わかってるぜ。優子を悲しませるようなことはしねェって」
 きりっとした顔で、竜司は答えた。
 勿論、竜司は優子の言葉を『一家の大黒柱なんだから』と脳内変換していた。
「あ、それから増築だけれど、春以降にしてもらえると助かる。3月には私も百合園を卒業してフリーになるから。その後なら危険視される可能性が少しは減るだろう」
「わかったぜェ。それまでに、増築のアイディア募っておくぜェ!」
 ヒャッハーと喜びの声を上げて、竜司は舎弟達の元に報告に向かうのだった。

「お料理とても美味しかったですわね。身体もとっても温まりました」
 藤崎 凛(ふじさき・りん)は、コートを脱ぎ、白いファーのついた赤いミニドレス姿になっていた。
 会場には上半身ほとんど裸の状態の男子や、薄着の女性達の姿がある。
「ううん……まだ、ちょっと暑いですわ」
 凛も温まったというより、暑くて仕方なくなり、ケープを外して手で軽く扇いだ。
「気温、低いはずなのに、確かに暑く……もしかして、何か入ってる?」
 同じく、上衣を脱いだ姿でシェリル・アルメスト(しぇりる・あるめすと)は訝しげにケーキを見ていた。
「凛、それ以上は脱いだら駄目だ。椅子を引いてもう少し前に出て」
 女の子を狙っているパラ実生の目に留まらないよう、シェリルは凛を隠しつつ、扇いであげる。
「これ以上は脱ぎたくても脱げませんわ」
 微笑んで答えて、凛は椅子を引いた。
 そして、新たなケーキを引き寄せた。
「こちらのケーキもとっても美味しいですわ」
 小さくカットされたオレンジケーキを口に入れて、凛はふわりと微笑みを浮かべた。
「これ私が作ったのよ。原材料を!」
 オレンジを育てたシアルが、どや顔で言う。
 ケーキを作ったのはほぼリーアだが。
「ええ、オレンジの甘酸っぱい味が爽やかでとても美味しいですわ。……あら?」
 言って、シアルに目を向けた凛は目を瞬かせてから、彼女をじっと見つめた。
「シアル……さん」
 名前を呼んだ凛の頬が、赤く染まっていく。
「ずっと隣にいてくださいませ。他にもお勧めの料理がありましたら、教えてください」
 椅子を近づけて、凛はシアルにくっついた。
「凛が更におかしく……」
 やっぱり料理に何か入っているなとシェリルは思う。
「別のテーブルにあるレモンケーキも美味しいわよ。一緒に取りにいこうか」
「はい!」
 嬉しそうに返事をして、凛はシアルの腕に自分の腕をからませて、一緒にケーキを取りに行ってしまう。
「惚れてるとしか思えないような顔だ……。まあ、シアルと一緒なら大丈夫、かな」
 苦笑しつつ、シェリルは見守る。
 凛は小柄で胸も小さいが、愛らしい少女だ。
 多くのパラ実生が彼女に目を留めるが――若葉分校の生徒会長でもあるシアルと一緒だと気づくと、寄ってはこなかった。
「とはいえ、油断は禁物だな。七夕の時にようにはいかないよ」
 シェリルは百合園生のネージュが作ったお菓子と、が淹れてくれたお茶だけを戴くことにし、凛を狙うパラ実生からその後も守り続けるのだった。
 
「は〜う、もう食べられないよぉ〜」
 満足そうな顔で、ミルミ・ルリマーレン(みるみ・るりまーれん)はお腹を摩りつつ、背もたれに寄りかかった。
「それなら、そんなミルミちゃんを食べて減らしてあげます」
 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)がミルミの腕をとり、はむっと口に入れるとミルミが笑い声を上げる。
 2人は、ベンチ席に並んで腰掛けていた。
「アルちゃ〜ん。寒いはずなのに、ミルミぽっかぽかだよ。アルちゃんが一緒だから」
 笑いながら、ミルミはアルコリアに寄りかかってきた。
「うん。私もこうしてミルミちゃんすりすりしてるから、ぽっかぽか」
 ミルミに頬を寄せた後。
 アルコリアは少し声のトーンを落として、耳元で囁く。
「心配かけてごめんね。
 それと、心配してくれてありがとう」
 ミルミが顔を上げて、アルコリアを見つめる。
「なんだか、揺らいじゃってね。泣いている顔が思い浮かんで」
 アルコリアは不退転で、勝ち負けを彼方へ押しやって、戦う。ただ倒す一点のみに集中し、生存二の次にしようと思っていた。
 だけれど、泣いている姿が浮かんできて――揺らいでしまったのだ。
「ブレた自分を嘲笑う自分、まだそんな気持ちが残ってたのと驚く自分、いろいろいるし全部本物の私なんだろうけど」
 呟きながら、ミルミを優しく抱きしめた。
「こうしてないといけない気がして」
 これもまた本物の自分なのだろうなぁと。
 アルコリアは顔を擦りつけて、ミルミが傍に居る時間を堪能した。
「ん、大分ミルミ分で満たされた。もう大丈夫……だけど、今日はアルちゃん一日貸切する権利をあげるので、好きにしていいよ!」
 抱きしめて、撫でて、自分の中にミルミの気を取り込んでから、アルコリアは笑顔をミルミに向けた。
「お風呂トイレどこでもついてくよ、ちっちゃくなってだっこアクセサリーにもなるよ!」
 にゃふーっと笑みを浮かべて、指をミルミの頬にあてて、つんつんする。
「ん……それじゃ、ちっちゃくなって! 大人しくしてて?」
「だっこアクセサリー希望かな?」
 言われた通り、アルコリアはちぎのたくらみで幼児の姿へと変身した。
「ふ、ふふふ〜」
 ミルミはちっこくて大人しいアルちゃんを両腕で抱き上げると。
「アルちゃん、可愛い、すっごく可愛い〜。アルちゃん分、ほきゅう〜。うにゅーっ」
 頬を摺り寄せ、ほっぺとおでこにちゅーををして。
 ぎゅーっとぎゅーっぎゅうううっとと抱きしめて。幼児のアルちゃんを思う存分、自身が満たされるまで可愛がったのだった。