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着ぐるみ大戦争〜扉を開く者(第3回/全6回)

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着ぐるみ大戦争〜扉を開く者(第3回/全6回)

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第6章 二段構え
 威力偵察部隊は師団主力の所に戻ってきた。大岡と黒乃が代表で報告に行く。ちょうど和泉と志賀が現状を調べていたところだ。
 「第1師団はヒラニプラ北方にてパラ実相手に苦戦中です。本校の余剰戦力と補充はこちらに投入されることになります」
 「こちらは現有戦力で何とかしなければならないのね。戦線の拡大は避けたいけど」
 「第2師団は、大規模遺跡探索から戻って来たところのようです。今は休養、再編、訓練で棒倒しなぞやっているようですが、まもなく再び遺跡方面に出撃予定です。また第4師団は南の山岳地帯でモンスターの大軍相手に戦闘中です。まあ、ヒラニプラ〜空京間の連絡線が確保されているのは第4師団のお陰ですね」
 各師団はヒラニプラを中心に東西南北に分かれて任務遂行中である。それぞれ重要な任務を行っており、鋭意努力中である。
 そこに報告に二人がやってきた。
 「敵勢力はざっと三万……こちらの三倍」
 和泉は報告に青ざめた顔で呟いた。
 「しかも、大蠍により格段に強化されています」
 「生体装甲兵器と言う訳ね」
 黒乃の説明に首を振る。
 「何とか補給物資の集積所を見つけられないかと思いましたが、敵の後方にあるとは思いますが正確な位置までは」
 大岡は残念そうだ。
 「敵が多ければ多いほど補給を断つ、というのは効いてきます。大岡候補生の考え方は正しいでしょうね」
 志賀も額を揉んでいる。
 「何とか騎兵で回り込んで集積所を襲えれば敵に大打撃を与えられると思いますがさすがに簡単にはいかないとは自覚しているぜ……ます」
 「二つ、大きな問題があります」
 慣れない口調の大岡をちらりと見る志賀。
 「早急に敵集積所を見つけ襲撃する算段、もう一つは集積所を護衛する敵護衛部隊を引っぺがす方策です。敵の戦力が三万なら二千くらいは護衛に割くでしょう。今の我々の迂回戦力で二千に防衛に徹せられれば容易なことでは突破できません」
 「騎兵部隊は総力で千と少し。厳しいですね」
 「ふむ、要はこちらが探しやすく、攻撃しやすいところに敵が集積所を設けてくれればよいわけです。そして、敵が補給の護衛部隊も前線に投入する……せざるを得ない状況を強いればいい訳ですよね?」
 「それは……さすがに」
 「一度でやろうとするのはまあ、不可能ですが、手順を踏めば、あるいは……」
 そう言うと、志賀はテーブルに両手をついてうつむいて考え始めた。和泉が唇に指を当て、静かにする様示した。
 ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、ちーん!
 「二段構えなら、あるいはいけるかもしれません」
 そう言って志賀は引きつった笑いを浮かべた。

 士官が集められ、作戦のブリーフィングが行われることとなった。
 「え〜、まず朗報があります。技術部から報告があり、戦車の試作車両が完成したそうです」
 志賀の説明におおお〜と皆はどよめいた。何でも70ミリ主砲を搭載した40トンの戦車らしい。ただ、試作なので数がない。2〜3両らしい。
 「こちらに到着次第、運用確認を行ってそのまま投入します」
 そう言うとスクリーンに地形が示された。
 現在いる街道分岐点近くの坂道から東に向かって広がっている。右端は川(通行禁止)真ん中は街道を中心とした平地。そして左側に小山、小山から東側、すなわちワイフェン族側に森がベルト状にずっと広がって続いていく。
 「これが予定戦場の地形です。敵が戦力集結に手間取っている間に進出し、先に地形を確保します。なお、この小山はその高さから『150高地』と呼称します。まず、肝心な事ですが、敵戦力はこちらのざっと三倍、正面からぶち当たれば必敗です」
 あっさりと言い切った。
 「言うまでもなく、戦力の集中こそが戦術の要諦です。そこで、何とかこの差を縮めなければなりません。で、つらつら検討した結果……」
 そこで全員を見回した。
 「兵力を分散します」
 皆ずっこけかけた。集中しろと言ったばかりでは?との声が小声で飛び交う。
 「この150高地を左に見るラインを一次防衛ラインとし、敵を迎え撃ちます。主力は中央に戦車を配置、ラインに沿って装甲猟兵、魔導擲弾兵を使って陣地を構築、敵装甲兵力迎撃の要とします。その後ろに右に第3歩兵連隊、左に第4歩兵連隊を配置します」
 そこまで言って再度皆を見回す。
 「次に遊撃任務、A遊撃隊は騎兵第1大隊、強襲偵察大隊とし、これはやや前で森に潜みます。次にB遊撃隊は集成砲兵大隊と航空部隊とします。砲兵は150高地の山頂、稜線上に展開。C遊撃隊は機動歩兵大隊の残りを車両に乗せて、150高地のこちら側に隠れてます。この布陣をとります。そして、全員に周知してもらいますが、今回の作戦の基本は、A、B遊撃隊が敵を可能な限り分散させること。そして主力とC遊撃隊は戦いつつ後退し、敵主力を消耗させます」
 つまり、志賀の構想はこうだ。敵は約三万強。補給部隊護衛に二千ほど割くとして残り三万弱とする。敵から見ると、こちらの戦力は正面街道沿いに六千ほどが展開していることになる。山頂に砲兵と考えても三千ほど足りない。そして右側の森には何やら敵がいるようだ。そうなると、正面の第3師団を攻撃するために敵は側面の森を警戒する部隊を割かなければならない。側面に三千いるとすればそれを防ぐ戦力が同数以上必要だからだ。ここで四千ほど割いてくれればよし、A遊撃隊はできるだけ、実数を悟られないようにして、敵を森に引きずり込み、遊兵とする。もちろん、ちょっかい付きである。
 次に山頂の砲兵を撃滅するのに三千ほど割いてくれればいい。これを可能な限り航空部隊のワイヴァーンで妨害する。
 これにより、ワイフェン軍の正面戦力は二万くらいになる。そこでこちらは隠していたC遊撃隊を合流させて迎撃する。すると、正面の戦力比は何とか1:2くらいになる。で、あれば後退しつつの防衛戦は可能な比率となる。
 「最終的には後退しつつ、場所を放棄して現地点……つまりここまで撤退します。これが全体の作戦の第一段階です。この後、敵を誘導して第二段階にうつります。今回は逆転のための仕込み、手品の種を仕込む段階です。ここまで成功すれば相手にマジックを見せられるでしょう」
 次に、作戦の注意点が示された。
 「A遊撃隊はかなり演技力がいります。敵を森に誘い込みつつ、攪乱、とにかく敵が躍起になって掃討しようと森に入ってくるようにしてください。その後、速やかに150高地の反対側を通って撤収願います。B遊撃隊はなんと言っても初陣のワイヴァーンです。これの威力を敵にできるだけ見せつけてください。これが手品の種になります。敵をやっつけるのではなく、足止めするのが優先です。そして砲兵部隊も撤退しますが、最悪、迫撃砲は放棄してもかまいません。ぎりぎりまで粘りつつ、人員は速やかに撤退してください」
 次回の作戦は敵を消耗させつつ、撤退するところまでとなる。最後に和泉が皆に説明する。
 「現状、敵ワイフェン軍はモン族領内に入り込んでいます。そのため、全体としてはワイフェン軍優勢と見られてしまいます。第3師団としては戦線のむやみな拡大は避けたいですが、情勢を有利にすることは怠るわけには行きません。そこで、我々の一次作戦目的はワイフェン軍をモン族領内から駆逐し、追い払うこと。これを目的とします」
 ワイフェン軍をモン族領内から追い払得れば少数の第3師団側がワイフェン族に勝ったと言うことができる。そうなればラク族との同盟も大きく前進する。またラク族との同盟なしにはワイフェン属領内へこちらから攻め入るのは難しい。そのため、目的をここに定めた。
 ブリーフィング後、大岡がやってきた。やや疑念顔である。
 「これで敵は思い通りに動くでしょうか?」
 「可能性は大きいでしょうね。ポイントは敵の補給部隊から見て、我々の何が一番脅威に映るかです。その脅威を避けるために敵は補給部隊をどこにもっていくか?それが解れば捜索範囲が大きく絞れます。そして、ここは安全だと思わせて敵に戦力を出し尽くさせる……。こちらの逆転はその後です」
 「もっとも、脅威に映るか……ですか」
 「あいにくと騎兵部隊ではありません。しかし、第一段階、第二段階共に騎兵にはかなり働いてもらうことになります。いいですね?」
 「了解だぜっ!」
 大岡は敬礼した。

  モン族領内の航空部隊訓練所。いよいよ航空部隊の実践投入が決定された。早瀬、朝野らは一足早く師団主力に合流し、戦力として加わることとなる。角田はまだ、残りの面々を訓練するため今の所はこちらに残るようである。残りの面々も来月試験に受かれば、再来月には実践投入だ。あくまで受かれば、の話であるが。
 早瀬、朝野と数人のモモンガパイロットが整列している。その後ろには支援要員が一個小隊ほど、そしておとなしくワイヴァーンが鎮座している。数はまだ数機と言うところだ。
 前に出て来た角田が一別する。
 「今まで、よく頑張ってきてくれた。情勢は急を告げており、困難である。しかし、訓練で培った技量を存分に発揮し、教導団の新たなる力として尽力してもらいたい。ここに、教導団第3師団支援航空部隊、第301駆逐戦闘航空団の設立を宣言する!」
 その言葉に並んだ者達は一斉に敬礼した。
 11月29日……。ここにシャンバラ初の実戦的航空部隊、JG301(ヤクト・ゲシュヴァーター301)がこうして誕生したのである。

担当マスターより

▼担当マスター

秋山 遼

▼マスターコメント

だんだんじりじり長くなってくる、ゆるくて地獄で食道楽なシナリオ「着ぐるみ大戦争」全力で再編中です。

 大分、長くなってます。結構やること多いのねこのシナリオ。

 今回の総評
 まず、AMR、とりあえず、射手決定。但し、今後の追加もあるのでどうしても射手になりたい人は装甲猟兵に歩兵で参加してください。AFVも少しづつ配備されるのでチームで上手く運用する戦いになってくる気配です。敵も強化されてるしね。
 交渉団は毛織物がグーです。現状での技術バランスを考えれば一番いいところでしょう。今後は周辺にも少しずつ同様な産業を育成することと、将来に備えて同盟の政治体制の構築を始めることとなります。言うなればプチ・シャンバラ王国を作り、政治モデルの実験を行うと考えればいいでしょう。結構地味に重要なことやっている第3師団。
 航空部隊は、まあちと予想どおりというかみんな「木の葉落とし」と考えたようですね。似てるけどちょっと違う。皆さん判で押したように「相手は失速させて急降下」と書いてますね。急降下はしてないんです。斜め下に滑っていく、と言うのが近いでしょうか?(あくまで相対的な意味で。上に向かっても使える)ポーターさんだけが急降下とは考えなかったですね。
 ワイヴァーンは飛んでいる最中に羽根がたためる。これがポイント。実は専門的な航空知識がなくてもゲームができるようにあえてワイヴァーンにしています。絵で動きを描いたりして考えればわかりやすいはずです。試験に受かった二人以外の人たちは来月試験です。よく文章を読んで考えてください。でないと再来月に参加できない。試験に受かった人たちはいよいよ実戦です。がんばってください。
 次回の作戦は二段構えの第一段です。再来月の第二段に向けて罠を仕掛ける感じです。細かな動きは作戦の基本を元に皆さんが工夫してください。果たして狙い通りに行くのか?
 今月は大分昇進があります。まあ、作戦に対する考えとか、危険度とかいろいろ、まあアクションと積み重ねを元に判定してます。なお、階級はシナリオ毎に別ですので注意してください。他のシナリオでもらった階級はここでは意味がありません。また、言うまでもないけど、昇進があれば降格もあり得るからね。

 あと、バウアーさん、懲罰部隊から戻れますが、貴方のばあい希望なので延長したい場合、延長希望と記入してください。一応懲罰部隊選択肢は用意するので。
 ではまた来月。