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嘆きの邂逅~聖戦の足音~

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嘆きの邂逅~聖戦の足音~

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「ようやく外に出たねぇー。皆さん準備よろしいですかぁ?」
「待ちわびたぜ!」
 外に飛び出したウィルネストがニヤリと笑い、喫茶店の傍で待機していたパラ実の吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)達と一斉に攻撃を仕掛ける。
 ウィルネストは光精の指輪で精霊を呼び出して、占拠していたパラ実生達の目をくらませ、杖でガツンと殴り飛ばす。瞬時に体を捻って、背後に迫っていた背後のパラ実生を柄で薙く。
 跳んで喫茶から離れると、氷術で矢を作り出し迫り来るパラ実生に放つ!
「煌け銀華、貫け、コールドアロー!」
 術を受けたパラ実生が肩を射抜かれて倒れる。
「さて、四天王と戦いたいヤツが沢山いるようなんで、こっちに来てもらおうか」
 光学迷彩を使い、喫茶店傍に潜んでいた佐野 亮司(さの・りょうじ)も、アーミーショットガンを撃ち、四天王を誘導する。
「あなた方に合わせた方法で、出て行っていただきましょう!」
 蒼空学園の緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)は、四天王の位置を確認しつつ、そちらに向かい合流しようとするパラ実生を氷術で狙う。
 倒れたパラ実生から、次のパラ実生に攻撃対象を移そうとした遙遠だが……突如、真っ赤な血飛沫を目にした。
 自分が倒し、気絶したパラ実生の首を雅刀で割いた者がいた。
 その人物は淡い笑みを浮かべながら、ウィルネストが倒したパラ実生の心臓にもまた、刀を突き刺そうとする。
「何をしているんですか!」
 遙遠はその人物――パラ実の藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)に放つ。
 優梨子の腕が弾かれて、刀はパラ実生に届かなかった。
「力を見せつけるのですよね。恐怖を撒き散らすのは有効だと思います」
「このような手段、優子さんが許されるはずはありません。彼等は不法占拠や脅迫行為を行なってはいましたが、若者の不良レベルの悪事です」
 それでもパラ実生に止めをさそうとする優梨子を巻き込む形で、遙遠はサンダーブラストを放つ。
 よろけた優梨子の顔から、めがねが落ちる。
 その顔は遙遠、その場にいた優子の仲間達の脳に刻まれた。
「まだ皆さんと一緒に行動したかったのに、残念です」
 即座に優梨子は煙幕ファンデーションを使用、光学迷彩を発動して空飛ぶ箒で逃走をする。
 殺しが好きな彼女だが、今回はそれだけの理由ではなく。
 キマクの平安を望まない為に、火種を撒こうとしたのだ。
 どちらにしろ、身勝手な敵対行動だった。ただ、キマクに介入するのならこのようなことはこれからも起こりうることだ。
「はあ……っ、殺しちゃダメですぅ。死んだらダメですぅ!」
 シャーロットが首を裂かれ噴水のように血を流すパラ実生に駆け寄って、リカバリをかけていく。
「てめぇら、ぶっ殺す!」
 死に掛けている仲間を見て、パラ実生達の士気が跳ね上がる。
「っと、気をつけろよ、皆」
 亮司は後方に下がり、怪我を気にせず武器を振り回しだすパラ実生の足を銃で撃ちぬいた。
「うおおおおおっ!」
 腹を押さえていたパラ実生も、がむしゃらに武器を振り回し、捨て身で飛びかかってくる。
「あらあら〜」
 円のパートナーオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)は、パラミタ虎に騎乗しながら、ゴーレム5体に指示を出し、パラ実生達を取り囲んでいく。
「んん? 遠くに向かってる人もいるよー」
「援軍を呼びに行くつもりかしらぁ〜」
 裏口の方から走り出るパラ実生の姿を発見し、ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)とオリヴィアはそちらの方へと向かう。
 四天王であるリーダーも大剣を抜いて振りまわす。空を切り裂く音が響き、立ち木が震えた。
「キミの相手はボク達がさせてもらうよ」
 イルミンスールのエル・ウィンド(える・うぃんど)と、パートナーのホワイト・カラー(ほわいと・からー)ギルガメシュ・ウルク(ぎるがめしゅ・うるく)が、四天王の前へ回り込み、エルが雷術を四天王に放った。
「くっ」
 直撃しても尚、四天王は大剣を振り回し前に立つギルガメシュに斬りかかる。
「豪腕のようですね……!」
 ギルガメシュは小人の小鞄を使い、小人達を四天王に纏わりつかせる。
 威力が若干鈍るも、構わず四天王は剣を横に振るう。
 横から迫った四天王の剣をギルガメシュは間一髪で躱す。
「周りは下がってて!」
 続いてエルは光術でパラ実生達を牽制する。
「エルが見たという妖精の笑顔を守りたいんです」
 ホワイトはブラックコートを纏い、盾を構えて目を押さえながら、剣を振り回すパラ実生の側面に忍び寄り、ライトブレードを振り下ろし、倒す。
「ちょっと待った。俺の相手もしてくれよ」
 イルミンスールの緋桜 ケイ(ひおう・けい)が雷術を打つ。四天王は直撃を躱して、横に跳んだ。
「最初から強引な方法で行くべきだったのか」
 パートナーのカナタは、窓ガラスや壁の破壊された喫茶店を見て吐息をつきながら、ケイの援護の為に光術を放ち、周囲のパラ実生の目を眩ませる。
「俺に任せてくれないか? 一対一で勝負したい」
「いや、ボクの相手だ。守りたい子達がいるんだ。そのために四天王の位が欲しい!」
 ケイとエルは互いに四天王との勝負を譲るつもりはなかった。
「先に仕掛けたのはオレだ! 百合園の神楽崎だって、四天王との戦いで勝って地位を得たんだ!! だったらオレだって……」
 武尊が止めようとする優子の仲間達を振り切って、武器を手に駆けてくる。
「アァ? 四天王の位を上げるのは、俺だァ!」
 竜司が、パラ実生を1人ぶちのめし声を上げる。
「待って下さい! やはり1対1での決闘こそ相応しいでしょう」
 真紀が声を上げる。その間も、四天王は大剣を振り回し、目の前のギルガメシュに踊りかかる。ギルガメシュは避けきれず、盾で重い一撃を受け、よろめいた。
「相応しい人物との1対1の勝負でね」
 サイモンも真紀と一緒に、勝負を望む者達を見定めていく。
「竜司さん、行って下さいですぅ〜」
 シャーロットは竜司にパワーブレスをかける。
「一対一、力と力の勝負、そして喫茶店を壊そうとしなかったですからぁ〜っ」
 竜司は不良パラ実生らしいパラ実生だが、交渉担当者が交渉している間は外で大人しくしていた。……寧ろ、百合園生におだて上げられ、御されていた。
「それじゃ、遠慮なくやらせてもらうぜェ!」
 竜司が駆ける。
「10秒で片付けてやるぜェ」
「納得できねぇ!」
 それでも、武尊は四天王を狙おうとする。
 シーリルは、ゴーレムを操り、又吉は魔法を放つ。
 その前に、エルとケイが飛び出た。
「パラ実生どうしの一騎打ちだ、見守ってもいいんじゃない?」
「一対一が望ましいと思ったのは俺も同じだしな。相手が自分じゃないのは残念だけど」
 エルとパートナー達が、暴れるゴーレムと又吉の相手をする。
 ケイは武尊の前に立つ。
「四天王の位なら、俺も一応持ってるぜ。やるか、一対一の勝負!」
「一撃で倒してやるぜ!」
 武尊がケイに飛びかかる。
 ケイは瞬時に後方に飛びながら光術を放つ。
 武尊が構えをとり、ケイは氷術を発動し、武尊の足元を凍らせる。更に雷術を放つ。
「う……っ」
 まともに受けた武尊がよろめいた。
 倒したと思ったその瞬間に、後の先を使いカウンターを狙っていた武尊の轟雷閃がケイを襲う。
「うあっ」
「一撃で、倒せなかったか……っ!」
 痛みに顔を顰めながら、ケイは魔法を、武尊は技を繰り出す。
「伏兵は今のところ見当たりません」
 ゴーレムから逃れたホワイトが、SPリチャージでギルガメシュの精神力を回復する。
「了解!」
 ギルガメシュは暴れるゴーレムと又吉の攻撃を盾で防ぐことに専念する。
「捕まえたっ」
「きゃっ……」
 回り込んだエルがシーリルを後から羽交い絞めにした。
「ゴーレム止めてくれる? もう戦いに水を差すヤツいないし」
「……はい」
 シーリルは暴れているゴーレム達に戻るよう命令を出す。
 武尊とケイは互いに精神力が尽きた状態で、互角の戦いを繰り広げていた。

 リーダーである四天王と、吉永竜司の戦いは、竜司がシャーロットから密かに援護を受けていた状態で拮抗していた。
 相手の大剣が振り下ろされるより早く、竜司は血煙爪(ちぇえーんそー)で弾き飛ばし、拳を腹に叩き込む。
 四天王は直撃を避け、竜司の顎を殴りつける。
 口から血を溢れさせながら、竜司は回し蹴りを叩き込み、よろけた四天王は竜司の足を払う。
 地に手をついた竜司は土を握って四天王の顔に投げつける。
「オラァ!」
 目を瞑ったその瞬間に、竜司は鳩尾に頭突きを食らわせた。
「くそっ、11秒くらいかかっちまったか!」
 倒れた四天王の体を更にげしげしと蹴りつけ、竜司は仁王立ちした。
 取り巻きの対処に当っていた遙遠は、竜司が勝利の雄叫びを上げて、笑い出す様子に眉を顰めるも……挑んで倒すべき相手ではないと、息をついて武器を収め静観することにした。

「待て!」
 レキは、裏口から引き摺りだして、パラ実生を銃で叩きのめしていたのだが、分が悪いと察したパラ実生達数人が逃走を図りだした。
「逃げてくれても構わないんだけど。仲間を呼ばれると厄介だからね。少し大人しくしていてくれないかい?」
「うあっ」
 光学迷彩で近付いたが、その身を蝕む妄執で幻術を見せ、パラ実生女を刀で打ち倒す。
「皆が来ることをパラ実生に知らせているゆる族がいたんだ。逃走経路確保しておくって言ってた」
 レキは逃げるパラ実生を追いながら、円に手短に説明をする。
「厄介なことになりそうだね……」
 円は軽く眉を寄せた。

「ミネルバちゃんアターック!」
 その身を蝕む妄執、ヒロイックアサルトにより身体能力を上げてミネルバは、あぜ道を逃げていくパラ実生の背に向かって跳び、アルティマ・トゥーレを繰り出した。
 冷気を受けたパラ実生が倒れる。
「しばらく大人しくしててねぇ〜。百合園のみんなが可愛がってくれるはずよぉ〜」
 オリヴィアはふわりと笑いながら、毒虫の群れを使い、倒れたパラ実生に毒を与える。
 もがくパラ実生を無視して先に進もうとした2人だが――突如木が音を立てて倒れ道を塞いでしまう。
 それは人為的な罠だと察することができた。
「なになに? 仲間が加勢に来たの? もえる〜!」
 倒れた木の先、逃げるパラ実生の後に、金属――釘や画鋲などを撒いてパラ実生を誘導する者の姿があった。マルコ・ヴォランテ(まるこ・う゛ぉらんて)、獣人の男だ。
「うわあ、踏んだら痛そう」
「……面白いことになりそうねぇ〜」
 男の後姿だけ、ミネルバとオリヴィアは記憶した。