シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

砂上楼閣 第一部(第4回/全4回)

リアクション公開中!

砂上楼閣 第一部(第4回/全4回)
砂上楼閣 第一部(第4回/全4回) 砂上楼閣 第一部(第4回/全4回)

リアクション

 ジェイダスの提案を受け、一同は薔薇学へと移動する。 言葉を失う領主たちにジェイダスは告げる。
 「これこそがタシガン文化と地球文化の融合の証なのです」
 荘厳なモスクの中にはアラビア語によるイスラム教典と、タシガンの島花である薔薇が描かれていた。

 「女王を唯一の存在と考えるタシガンの民と、アッラーを唯一の神と崇めるイスラム教徒。
  崇める神は違えど、その思いは同じなのです。歩み寄っていきましょう」
  ジェイダスは言う。

 そんな中、誰かの悲鳴で、一同はモスクの外に出た。
 神無月 勇(かんなづき・いさみ)は、薔薇の学舎の屋上で、
 自分が見つけた薔薇学に潜む鏖殺寺院関係者の情報、
 それを責任を取らず、隠蔽するジェイダス達上部についてを告発する内容のビラをばら撒いていた。
 氷術で作ったナイフを頚動脈に押し当て、勇は叫ぶ。
 「私は、悪を暴こうとしたのに、こちらを悪人扱いする薔薇学のやり方に絶望した。
  もう誰も信じない」
 パートナーのミヒャエル・ホルシュタイン(みひゃえる・ほるしゅたいん)は言う。
 「勇は壊れてしまった。生きるのが辛いって言っていた。だから死なせてやるのが僕が最後に出来ること」
 無理矢理生かすのは相手を考えないことだと思っていたミヒャエルであったが、ルドルフの叫びに我に帰る。
 「パートナーの死は、お互いに影響を与えるんだぞ! 彼が死ねばおそらく君も死んでしまう!
  僕は、親友のためにも、パートナーのエリオのためにも、生きなければならないんだ!」
 「死んだら君のところへ行けるのかな?」
 高校時代に自殺した恋人のことを思い、勇は、氷のナイフを首に突き刺し、屋上から飛び降りた。

 次の瞬間、地面に深紅の薔薇が咲くと、誰もが覚悟した。

 しかし、そうはならなかった。
 ジェイダスがモスクの壁と屋上を伝って跳躍し、空中で勇を受け止めたのだ。

 「絶望感から心を閉ざして周囲に当たり散らしても醜いだけだ」
 勇に、プリーストたちがヒールを飛ばす。
 首の傷は致命傷にはなっていなかった。
 「君は自分が愛されていないと……世界は愛するに値しないと、本気で思うかね」
 ジェイダスの言葉に、勇は嗚咽をもらす。
 死にきれなかったこと、自分がもっとも憎んでいた人物に助けられたことに。
 「勇……」
 ミヒャエルは小さな声で言う。
 仮面を外したままのルドルフは、ジェイダスに抱かれたままの勇を見守る。



 「親友を失った絶望感から心を閉ざして周囲に当たり散らしても醜いだけだ」

 血まみれの自分を抱きしめて、ジェイダスに一喝されたあの日のことを、ルドルフは思い出していた。




 「……き薔薇か」
 アーダルヴェルトが誰にも聞こえぬ声でつぶやく。




 霧深き都タシガンに咲くのは、争いで流れた血に染まりし紅き薔薇か。
 あるいは、人の奇跡と神の祝福の蒼き薔薇か。




(砂上楼閣 第一部第四話了)




担当マスターより

▼担当マスター

芙龍らむだ

▼マスターコメント

 芙龍らむだです。
 リアクションの公開が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
 せめて最後まで皆様と一緒に走り抜きたかったのですが
 実現できなかったこと大変悔しく、そして心苦しく思っております。
 今のところ復帰の目処はたっていませんが、
 もう一度皆様とともにパラミタの大地を旅する機会をいただければ幸いです。

 最後になりましたが、急なお願いにも関わらず
 私の意図を隅々まで汲み取り、書き上げてくださった
 森水マスターに感謝いたします。



 代筆担当の森水鷲葉です。
 リアクションの公開が大変遅くなりましたこと、申し訳ございません。
 芙龍らむだマスターの執筆したリアクションに代筆担当の森水が加筆いたしました。
 個別メッセージはすべて森水が書いております。

 「砂上楼閣 第二部」は森水が担当になります。

 次回も何卒よろしくお願いいたします。