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【ろくりんピック】ムシバトル2020

リアクション公開中!

【ろくりんピック】ムシバトル2020

リアクション

○第五試合○

「東シャンバラチームより、セカイジュオオカマキリのストライカー!」
 昨年も活躍した、セカイジュオオカマキリのストライカー。ムシバトルファンの間では、かなり知られた存在だ。
 先導するのは、これまたムシバトルファンの間では知名度の高いソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)だ。
 昨年、ムシバトルに火がついたのをきっかけに創刊したムシバトル専門情報誌『月間羽音』で、虫的ナイスバディなストライカーが何度もモデルとして掲載されたことから、そのブリーダーである二人も注目されることとなったのだ。
「人気アイドルとしても、東シャンバラチームの選手としても、負けられませんね!」
 意気込むソアに応えるように、ストライカーは自慢の鎌を振り上げた。

「対する西シャンバラチームは、パラミタクロアリの黒鉄!」
 観客席がざわつく。
 普段、小さなアリしか見たことがない人が多いのだろう。大半であるため、アリの口元の鋭さや、黒光りするボディの格好良さを初めて知った人がほとんどで、驚きの声を上げている。
「さあ、貴方の活躍を見せる出番ですよ」
 セコンドの戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)は、黒鉄に常に声をかけて、戦意を持ち上げている。
「黒鉄は、やれば絶対にできますわ」
 リース・バーロット(りーす・ばーろっと)も、やさしく黒鉄に声をかけ続ける。

 カーーーン!
「試合開始!」
 ゴングと同時にささっと距離をとる二匹。
 どちらも速さはほぼ互角か、わずかに黒鉄の方が素早いか。
「このままいけるでしょう!」
 最初から先制攻撃を狙い、支援の準備もしていた小次郎だが、黒鉄の方がわずかに素早く動けているのを見て、このままいけると判断した。
 狙い通り黒鉄の攻撃が先に、ストライカーに襲いかかる! 体当たり攻撃だ!
 ストライカーも素早くないわけではない。とっさに回避行動をとったおかげで、黒鉄の攻撃がヒットしたものの、致命傷は避けることができた。
 だが、それほど防御力がないため、次の一撃はキケンだ!
「ゴーゴーイーシャン! 頑張れ頑張れイーシャン!」
 ベアが、観客席を巻き込んで大きな声援を贈った!
「ストライカー、ファイトだぜーっ!」
 東シャンバラチーム応援席からも、ストライカーコールが巻き起こる!
 その声援が届き、ストライカーはぐっと力を込めて立ち上がった。
「ストライカー! コードネーム・アイススラッシュです!」
 ソアが、ストライカーに指示を飛ばす。
「何かしてくる!」
 黒鉄セコンドサイドも身構えた。
 後でその瞬間のことをインタビューした際、観客の一人は「夏だということを忘れたよ」と答えたという。
 バトルステージに巻き起こった冷気は、一瞬にして季節を進めたかと思うほどだ!
 気付くと黒鉄の周囲には、氷の壁ができている。必殺の氷壁アタックだ!
 壁がぐるりと黒鉄の周囲を取り囲み、逃げ場は上しかないが、黒鉄は飛ぶことができない。
「今ですっ!」
 上空から、ストライカーが襲いかかる!
 ……だが。
「黒鉄、防げますわ!」
 ガンッ!
 黒鉄は、リースの指示通り見事に防御した!
「周りを囲まれて逃げ場が上しかない……つまり、敵も上から来ることは間違いありませんもの。そちらからの攻撃にだけ注意をしていれば、防げますわ」
 さらに、黒鉄はストライカーよりも体の堅さがあった。
 至近距離で向き合った二体、今度は逆にストライカーのほうがピンチだ!
「黒鉄! その顎の力を見せるときです!」
 小次郎が指示すると、黒鉄はアリならではの丈夫な顎で、ストライカーに襲いかかった!
 まだ氷壁が溶けきっておらず、ストライカーはかわすことができない。
 がぶりっ。
 鈍い音がして、ストライカーは黒鉄の顎にしっかりと挟まれてしまった。
 そして、氷壁が溶けたあとに見えたものは……倒れ込むストライカーの姿だった。

「ワン、ツー、スリー……」
 レフェリー誠がカウントをとる。
 祈るように見つめる両セコンド。
「ナイン……テン! 勝者、黒鉄!」
 カンカンカン! 勝者が決し、ゴングが響き渡る!
「ストライカー、ごめんね……。せっかくの必殺攻撃、私たちがもっとうまく使えれば……」
 うなだれるソアを、ベアが明るく慰めた。
「ご主人もストライカーも、ほんっとによくやったぜ! その証拠に……ほら!」
 客席からは、ストライカーの健闘をたたえる声がたくさん聞こえてくる。
「ストライカーは今はアイドルだからな。このあとはファンとの交流っていう大仕事が待ってるぜ」
 そう。人気虫のストライカーはこのあと『ムシバトルふれあいひろば』で、駆け出しブリーダーやムシバトルファンと交流するという仕事が入っているのだ。
「人気虫さんは忙しいわね。ほら、みせて」
 東シャンバラチーム専属の虫トレーナー四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)エラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)がやって来て、ストライカーの体調をチェックする。
 唯乃とエラノールは、東シャンラバ側で、バトル前の虫の体調管理や、バトル以外にもスケジュールが入っている人気虫のメンテナンスを担当しているのだ。
「少し休んだ方がいいかもしれませんけど、大丈夫なのです」
 傷の具合を見たエラノールが、よしよしとストライカーをなでた。
 ストライカーは唯乃とエラノールに御礼を言っているかのように、頭を少し下げた。

「東シャンバラのアイドル・ストライカーは健闘したが惜しくも負けてしまった! だがっ! 東の意地はここからです!」
 その様子を見ていた、東シャンバラチーム応援団のクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)は、この雰囲気を吹き飛ばそうと、腹から声を出した!
「奮起せよ! 東シャンバラチームの諸君!」
 うおぉぉぉぉっ!
 この先にバトルを控えていた東シャンバラチームの虫やセコンドたちが、クロセルの声に応えて拳を突き上げた!
 東シャンバラチームは、大きな一体感に包まれた!

○第六試合○
「それでは盛り上がっている東シャンバラチームより、パラミタヤマシログモ、アラクネのアララちゃん、入場っ!」
 ムシバトルは「昆虫バトル」と限定していないため、公式ルールでクモの参加も認められている。
 昨年は、ゴキブリに次いで不気味がられたクモだが、このアララちゃん含むクモたちの活躍により、今年はクモも大人気だ!
「アララちゃん、今年もがんばるよ!」
 セコンドは、やはり昨年も活躍した立川 るる(たちかわ・るる)ラピス・ラズリ(らぴす・らずり)
「かわいいよ、アララちゃん!」
 アララちゃんにリボンをつけてあげたラピスは、体を丹念にふいてあげている。だってアララちゃんは女の子だもの。

「西〜! パラミタサルヴィンダンゴムシのホエール!」
 しゅーーーーー。
 突然、入場ゲートからスモークがたかれ、スポットライトが集まった!
 荘厳なパイプオルガンのイントロに続き、激しいエレキギター!
 まるでちょっとヒールなプロレスラーの入場曲のような音楽の中、威風堂々とホエールが入場してきた。
 そんなホエールに寄り添うように、セコンドのハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)クリストバル ヴァリア(くりすとばる・う゛ぁりあ)天津 亜衣(あまつ・あい)の三人も会場に入った。特にハインリヒは、まるで恋人のようにホエールにぴったりくっついている。
「ホエール……オレは何も言わねぇから、おまえの好きなように暴れていいぜ!」
 とんっと背中を押し、ホエールをバトルステージに促した。
 ホエールはすたたたっと走り、ひょいっと飛び上がってステージに上がった。
「ホエール、あなた、最高だわ! まるでスーパースターのようよ!」
 わあぁぁぁぁ!
 ヴァリアが大声でホエールをたたえると、客席もつられて大きな歓声を上げた。

 試合開始!
 まずは素早さで勝るホエールが、体を丸めてアララちゃんに向かっていく!
 先制の体当たりだ。
 ゴン!
 アララちゃんの体は、一切ぐらつきもしない。
 とんでもない堅さだ。
「ホエールに、ディフェンスシフト!」
 パラメーターのバランスがよいホエールだが、やや弱点といえるのは堅さ。
 その堅さを補うため、ハインリヒが支援した。
「こちらも、アララちゃんサポートだよ!」
 アララちゃんサイドも、ほぼ同時にフォースフィールドを展開。
 双方セコンドがサポートを行う間も、アララちゃんとホエールはじっとお互い見つめ合っていた。どう動くか……。
「ホエール、あなたはヒラニプラの敏捷な戦車よ、敵を薙ぎ倒して!」
 動きを止めたホエールを、亜衣が激励する。
 アタシハ戦車。
 戦う女の子、ホエールの心に火がついた!
 ぐるっと体を丸め、ごろごろとアララちゃんに向かって突進する!
 その姿はまさに、戦車。
「アララちゃん……防御!」
 素早さはホエールが上回っている。だとしたら、ムリに回避しようとするよりも、アララちゃんの防御力に賭けた方がいい! セコンドはそう判断した。
 衝突の瞬間、まるで地震が起きたかのように地面が揺れた!
 吹き飛んだのは……ホエールだ!
 はじき返されたホエールは、そのまま場外へと落とされてしまった。

「場外! 勝者……アララちゃん!」

 ずっと動き回っていたホエールは、じっとしていたアララちゃんよりも体力を消耗していた。
 防御に専念したアララちゃんの堅さを破ることができず、自らの勢いをそのまま跳ね返されて、場外に落ちてしまったのだ。
 かさかさっ。
 バトルステージから落ちたホエールに、アララちゃんが糸を吐いて垂らす。
 つかまれ、とでも言いたそうにホエールを見つめている。
 ホエールが素直に糸につかまると、アララちゃんがそのまま引っ張り起こした。
 その様子に、観客席からあたたかい拍手が贈られた。
「ホエール。よく戦ったぜ。ますます気に入った。惚れてちまいそうなくらいだ!」
 戻ってきたホエールを、ハインリヒは優しく抱擁した。
 されるがままのホエールは、少しだけ乙女に見えた。
 もしかしたら……人間と虫との垣根をも越えた恋心があるのかもしれない。
 そんな様子を見て、ヴァリアは「惚れてまうやろー」と叫び、ますます客席を盛り上げていた。

○第七試合○
「次の試合! 東シャンバラチームからは、イルミンオオクワガタのテイカー入場!」
 しゃきーーーん!
 森の木漏れ日が自慢のハサミを輝かせる。
 一緒に入場してくるセコンドは本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)ヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)
「あーあーあー。……よし、応援は任せておけ!」
 涼介は、持参したメガホンと喉の調子を確認している。
「特訓はやれるだけやったんだから。あとは応援のチカラだよね!」
 アリアクルスイドもぶんぶんと腕を振り回し、気合い充分。
 セコンド二人の気合いは、テイカーにもしっかりと伝わっている様子だ。

「続いて西シャンバラチーム、アシハラカミキリムシの葦原一郎太!」
 しゅるりと伸びた長い触覚。
 足音をいたずらに立てぬよう静かに、だけど体中から気合いをみなぎらせ、まるで侍のように入場してくる葦原一郎太。
 そんな葦原一郎太の隣を歩くのはセコンドのイレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)。こちらも侍のように、静かに、だがふつふつと闘志をたたえている。
 バトルステージに上がる手前で立ち止まると、イレブンは葦原一郎太に声をかけた。
「葦原の虫が如何程のものか、パラミタ中に見せてこい!」
 葦原一郎太は、葦原島出身の虫。島のプライドも背負っているのだ。

「第七試合……プレイボール!」
 カーーーン!
 じりじりと間合いを詰める二匹の虫。
 一撃を食らわせるタイミングを狙っている。
 実はこの二匹、どちらもパワー自慢。喰らっても、喰らわせてもダメージは大きい。双方とも、一撃一撃を大事にしようという作戦だ。
 まずはテイカーが動いた!
「レッツゴー、テイカー! パワーブレス!」
 突進するテイカーに、セコンドからパワーブレスの支援が行われた。
「目くらまし!」
 迫ってくるテイカーに対し、イレブンは光条兵器を目くらましに使った!
「ああ! テイカー!」
 完全に突進の体勢だったテイカーは、目くらましをまともに喰らってしまった。
 スカッ。
 力を込めたテイカーに一撃を、葦原一郎太は見事に回避した!
「今だっ!」
 今度は攻撃に転じる葦原一郎太。
 カミキリムシの武器は、その名の通り何でも噛み切る強力な顎。
 葦原一郎太はテイカーの懐に飛び込み、その顎を突き出した!
 ガツッ!
 さすがに回避できず、ボディに噛みつかれてしまったテイカー!
「む。あまり効いていない……?」
 テイカーは葦原一郎太を振り払い、再び間合いをとった!
 テイカーは、極端に速さこそないが、力と堅さに定評があった。
 葦原一郎太の攻撃は強力だったが、その堅いボディでこらえたのだ。
「がんばれテイカー! 負けるな、テイカー!」
 アリアクルスイドは、声の限りにテイカーを応援した!
「東シャンバラの諸君! 今こそ声を出そう! 仲間を応援しよう!」
 応援団長のクロセルも、東側応援席を盛り上げる!
 東側応援席から、テイカーコールが巻き起こった!
 応援の声はそのまま、虫に勇気となって届く。
 テイカーは体を大きく起こし、戦意を表現した。
「これは……葦原一郎太の戦意が落ちるか……?」
 会場の雰囲気に少し飲まれ気味になっている葦原一郎太。
 このままでは気合い負けする……と思ったその時!
「俺はこっちを応援するぜっ!」
 颯爽と現れたのは……山葉 涼司(やまは・りょうじ)だ!
「パートナーも応援も連れないで、一人でこの大会に乗り込んでくるなんて……やるじゃねぇか! 気に入った。俺は葦原一郎太のセコンドにつく!」
 イレブンの返事も聞かないまま、涼司は葦原一郎太のセコンド席についた。
「よっしゃ、行け! 行けってば行け!」
 とにかく声を張り上げる涼司。
 それが、葦原一郎太にどう響いたのかは不明だが、葦原一郎太は再び攻撃の体勢をとった。
「行け! 全ての力をぶつけるんだ!」
 イレブンも、ここが最後のチャンスと悟って指示を飛ばす。
「テイカー! 受け止めて!」
 ガッ!
 二匹は、場外に落ちるぎりぎりのところで組み合った。
 どちらも一歩も引かない……力比べだ!
 力はほぼ互角、あとはスタミナと……応援がどのように響くかだ。
「テイカー、テイカー!」
 東シャンバラ応援席からのテイカーコール。
「葦原の代表だろう! 根性を見せろ!」
「俺はおまえが気に入ってるぜ!」
 イレブンと涼司も、声の限り葦原一郎太を応援し続ける!
 一歩も引かない力比べ。
 数分後……その拮抗が崩れる瞬間が訪れた。
「ああ……!」
 会場から声が上がる!
 とうとう力尽きた一匹が、場外に押し出されてしまった。

「場外! 勝者……テイカー!」

 どちらが勝ってもおかしくない試合だった。
 最後は、本当にタッチの差で葦原一郎太が力尽きたのだった。
「葦原の虫に恥じぬ戦いだった。よくやったな」
 全力を出し切った葦原一郎太に、イレブンは笑顔で語りかけた。
 その言葉通り、立派な戦いっぷりだった。
 会場と、そして全力でぶつかり合ったテイカーのセコンドたちから、拍手が贈られた。
「お疲れ。ゆっくり休んでくれよな!」
 涼司も葦原一郎太を称え、退場まで付き添った。

○第八試合○
「ひ〜がし〜。セカイジュオオカマキリのキリー君!」
 ぶーん。
 元気すぎて、羽を広げて飛んで入場してきたキリー君。
 その後を追い、小走りでセコンドのロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)テレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)の三人がぱたぱたと入場してきた。
「キリー君。自分で納得できる戦いをしてくださいね!」
 ロザリンドは、キリー君をやさしくバトルステージへと送り出した。
 キリー君はバトルステージの上空をぐるりと一周してアピールした後、ど真ん中に降り立った。観客からはそのかっこいい姿に歓声が上がる!

「にぃ〜しぃ〜。パラミタミヤマクワガタ、ステキ自然!」
 昨年も活躍したステキ自然が、今年もこのバトルステージに帰ってきた!
 セコンドももちろん昨年と同じく影野 陽太(かげの・ようた)と、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)の三人だ。
 三人と一匹は、二度目のバトルステージの前に立った。
「ステキ自然、再び君と共に戦えて嬉しい限りです」
 陽太がそう語りかけると、ステキ自然も嬉しそうにうなずいた。
「さあ、行ってきなさい!」
 エリシアが促すと、ステキ自然は元気よくステージへと上がっていった。

 試合開始!
 全体的なバランスのとれている体作りをしてあるステキ自然に対し、素早さタイプのキリー君。
 先制は、速さで勝るキリー君だ!
「慌てないで! 相手の作戦をよく読むことが大事ですから」
 陽太は、ひとまずステキ自然に防御の指示を出した。
 その間「ナゾ究明」を駆使して、先方の作戦を少しでも読み解こうと観察する。
「このまま相手の動きをよく見て……カウンターを狙いますよ!」
 陽太の読み通り、キリー君は素早さを生かした連続攻撃作戦を展開していた。
「オラオラオラ、まだまだ殴れるでー!」
 テレサがキリー君を鼓舞すると、キリー君はそれに応えようとますます手数を出した。
「どんどん行け行けキリー! ファイト、オー!」
 メリッサも、声の限りに叫んで、キリー君に声援を送っている。
 キリー君はますます奮起して、攻撃の手を休めない!
 その間、ステキ自然はじっと防御と回避で堪えていた。
「ステキ自然、辛いかもしれませんが、ここが踏ん張りどころです。頑張ってください!」
「ガンバレー! ステキ自然!」
 陽太とノーンが、じっと耐えているステキ自然に声をかける。
 ステキ自然はセコンドを信じ、今はただただ耐えていた。
 連続攻撃を得意とするキリー君だが、どうしても疲労がたまってしまうもの。
 少しずつ、攻撃の数が減ってきた。
「今です! カウンター攻撃!」
 ステキ自然がここで攻撃に転じた!
 疲れがたまっているキリー君は、回避行動をとることができない。
 素早いぶん、堅さに自信のないキリー君に、ステキ自然の一撃は強烈だ!
 どすっ。
 鈍い音がして、ステキ自然の一撃が、キリー君のボディ……特にやわらかいお腹のあたりにヒットした!
「キ、キリー君!」
 メリッサが涙混じりに叫ぶ!
 キリー君は、スローモーションのようにゆっくりと倒れ込んだ。

「ワン、ツー……」
 レフェリー誠がカウントをとる。
「キリー君!」
 セコンドの声に反応して、どうにか立ち上がろうとするのだが……。
「……テン! 勝者、ステキ自然!」
 キリー君は、立ち上がることができなかった。
「大丈夫ですか?」
 倒れているキリー君のもとに、急いでロザリンドが駆けつけた。
「頑張ったな。……立てるか?」
「キリー君……」
 テレサとメリッサが、キリー君の体を必死になでてあげている。
「はいちょっと診せて」
 唯乃とエラノールが走ってきて、キリー君の体調をチェックする。
「人間で言うところのみぞおちにクリーンヒットしたような状態だね。大丈夫、すぐに歩けるようになるから」
 ヒールをかけてあげると、キリー君はゆっくりと立ち上がった。
「よかった、キリー君。次、頑張ろうね」
 キリー君とセコンドたちは、仲良く帰って行った。