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リアクション
★ ★ ★
「お邪魔します。ココ、アルディミアク、追悼式のときの花びら、綺麗でした。あそこにいたメンバーを代表して、お礼を言わせてください。ありがと……うおっ!?」
脱衣室の中に入っていった樹月刀真は、着替え中のアルディミアク・ミトゥナと目があって凍りついた。同時にフリーズしたアルディミアク・ミトゥナが、一瞬早く我に返ってドレスで豊かな胸元を隠す。
「ちょっと、あなたたち……」
思わず、アルディミアク・ミトゥナが小さく悲鳴をあげた。
「刀真、こっちむく……」
「はっ!?」
「てい」
「うおおお、目が、目がぁ」
振り返ったところを漆髪月夜の指で両目をつつかれて、樹月刀真が地面に転がって苦しんだ。
「悪は滅ぼした。ごめんなさい」
「先ほどはありがとうございました」
あらためて、漆髪月夜と封印の巫女白花がぺこりと頭を下げる。
「へえ、思ったよりは似合ってるじゃない。私たちの代役とか頼めそうね」
自分たちの服を着た二人を見て、ココ・カンパーニュが言った。
「ありがとうございます。うちの御主人様も言っておられましたが、いつぞやは格別の対応をしていただき、まことにありがとうございました。あらためてお礼を申しあげます」
「いいって」
少し照れたように、ココ・カンパーニュが漆髪月夜に答える。
「それに、本当にお礼をしなければいけないのは、私の方ですわ」
そう言って、アルディミアク・ミトゥナが深々と頭を下げ続けていた漆髪月夜の顔をあげさせた。
「まったく、ちゃんとお礼を言おうと思ったのに、酷い目に……」
やっと平静を取り戻した樹月刀真は、ゆっくりと手をついて立ちあがろうとした。
むにっ。
何か柔らかい物をつかむ。
「えっ……!?」
樹月刀真は、今さらながらに自分の下になって眠りこけている裸のロザリィヌ・フォン・メルローゼに気づいて、痛む目を白黒させた。
「刀真……。狙い撃つ!」
どこからか取り出したのか、漆髪月夜が魔道銃を構えた。
「ちょ、ちょっと待て!!」
あわてて立ちあがると、樹月刀真は脱衣所から逃げだしていった。
「いったい何なんだ」
ココ・カンパーニュは、アルディミアク・ミトゥナたちと顔を見合わせた。
★ ★ ★
「さあ、エレンお嬢様、お着替えの時間ですよね」
自分の脱衣所の中で、秋月 葵(あきづき・あおい)がパートナーのエレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)を前にして言った。
「あの、大丈夫ですか。だって、葵ちゃん、普段は一人で着替えもできないのに……」
ものすごく心配そうにエレンディラ・ノイマンがささやいた。
「大丈夫だもん。あたしだってスキルアップしたんだから。見ていて。変身!」
そう叫ぶなり、秋月葵が持っていた神楽鈴をシャンと鳴らした。涼やかな音ともに、光の粒子があふれて周囲に飛び散る。シャンシャンシャンと鈴を鳴らしながら、秋月葵がクルクルと身体を回転させた。
光の粒子が秋月葵の身体をつつみ、一瞬今まで着ていた服が消滅してすぐに光の粒子につつまれた。ポンと、光が弾けながらキャミソールとショーツが現れ、その周囲で波打っていた光がクルリと渦巻いてスカートとジャケットに替わり、腰と胸をつつんでいった。あまった光の波が、白いフリルとなって、青で縁取られたマイクロジャケットとミニスカートをふんだんに飾っていく。ポンとかかとを合わせた両足に、ブーツが現れた。光に舞い上げられた長い髪の根元にリボンが現れ、踊るようにしてキュッとツインテールを縛りあげる。
「突撃魔法少女リリカルあおい♪」
キランっと決めポーズをとって秋月葵が言った。
「長いですよ……」
待ちくたびれましたと、エレンディラ・ノイマンが軽く溜め息をついた。
「大丈夫、そのうちバンクで短くなるから。それよりも、エレン……お嬢様も、早くあたしと同じふうにしてさしあげるんだもん」
そう言うと、秋月葵が手をのばして背の高いエレンディラ・ノイマンの服を脱がせようとした。が、ボタンすらうまく外せない。さりげなく、エレンディラ・ノイマンが手を添えるふりをして自分から着替えていく。そうでもしなかったら、このままずっと立っていなくてはならないような気がした。
「エレンはいつもおとなしいお嬢様って感じだから、こういうときこそイメージチェンジしてみよー」
下着姿になったエレンディラ・ノイマンに言いながら、秋月葵が白いパニエでふくらんだ赤いティアード・スカートをうんしょうんしょっと穿かせていく。当然、エレンディラ・ノイマンがさりげなくスカートを引き上げて定位置に合わせなおした。身体にぴったりとしたストラップレスの赤いインナーの胸元は、大きなピンクのフリルがアクセントとなっている。これも、実質エレンディラ・ノイマンが着たに等しい感じだ。
「うーん、着せ替えって結構難しいなあ。よく、エレンお嬢様は、あたしのこと着替えさせられるよね」
それは苦労してますともという言葉を、エレンディラ・ノイマンはすんでで飲み込みながら赤いオーバーニーソックスとエルボーガントレットをつけていった。シルクのエルボーガントレットの甲の部分には、赤いバラの花の飾りがついている。頭につけたイヤーマフも、左右に赤いバラ飾りがついていた。最後に、半透明の白いケープを羽織ると、赤い服の照り返しを受けてケープが淡いピンクに染まった。
「この衣装、結構恥ずかしくありませんか?」
少し頬を染めて、エレンディラ・ノイマンが言った。
「大丈夫。これで、エレンお嬢様もりっぱな魔法少女だよ」
そう保証されても、ちょっと複雑な心情のエレンディラ・ノイマンであった。
★ ★ ★
「えーっと、なんだか会場テントの近くにトーチカがあるんですけどお」
「邪魔だったら、わらわが滅してやるが?」
戸惑っている大谷文美に、悠久ノカナタがやる気満々で聞いた。
「ああ、今情報が入りました。あれは機晶姫の藤 千夏(とう・ちか)さんだそうです。なんでも、月島 悠(つきしま・ゆう)さんの脱衣所として働いているそうです」
届いた調査メモを手にした大谷文美が、そう会場に説明した。
それじゃ中の様子が分からないじゃないかと、会場の男子からブーイングがあがる。
「なんだなんだ!? 一応、我が輩の中の様子は映しだすことは可能であるのだが……」
思わずもらした一言に、周囲から映せコールがわきあがる。
「こ、これは……。しかたない、とりあえず画像処理したものでいいであろうか」
藤千夏が、そばに立てたひび割れた装甲板に中の画像を映しだした。当然のことながら、中の人に配慮してシルエット処理にしてある。
「これなんかどうでしょうか、それともこちらかなあ」
月島 未羽(つきしま・みう)が、手に持った服をとっかえひっかえ月島悠の身体にあてて吟味していた。すでにブラウスとジーンズを脱いでいる月島悠は、されるがままに突っ立っている。
「悠ちゃんはぺったんこだから、それにあった服にしないといけないよね」
「うっ、それは……ひどぉい」
両手でむきだしの胸を押さえながら月島悠がべそをかいた。
「大丈夫ですよ。こんなこともあろうかと思って、じゃーん、む・ね・パッ・ドぉ〜♪」
麻上 翼(まがみ・つばさ)が、たっゆん用の巨大なブラジャーと山ほどのパッドを取り出して言った。
「ささ、つけましょうね」
有無をも言わせずに月島悠にブラジャーをつけさせるが、当然のようにすかすかで今にもずり落ちそうだ。
「さあ、いきますよ。もういいって言わないと、いくらでも突っ込むわんこパッドですからね。うっかりするとはみ出ちゃいますよ」
言いながら、麻上翼がどんどんパッドを詰め込んでいった。みるみるうちに、月島悠の胸が偽たっゆんになる。
「そろそろ……」
「まだよ、まだまだ〜」
もう充分だと言いかけた月島悠の言葉を月島未羽が遮った。
「もっとたっゆんっぽく、こんな機会二度とないんだよ」
「ないんですかぁ」
なんだか酷いことを言われて、月島悠が泣き言を言った。今日は、いつもの軍人モードではなくかわいい乙女モードなので、もうパートナーたちにいじられ放題だ。
「ストーップ。ストップだよ〜」
月島悠が逃げだしかけたので、やっと麻上翼がパッドの追加をやめた。思いっきりブラジャーからパッドがはみ出した月島悠の胸は、明倫館の総奉行もかくやという状態だが、いかんせんやっぱり偽たっゆんである。
「うーん、これじゃセクシーな服だとパッドがもろばれですね……」
麻上翼が悩んだが、藤千夏のせいですでに外にもバレバレである。
「つまらないけれど、しかたないですね。じゃあ、服は、胸元をしっかりと隠したこのフリフリがたくさんついたワンピースに、シックなロングスカートにしましょうか」
月島未羽が、シックだけれどかわいらしい服を選んで着替えさせていく。そのあと、麻上翼が月島悠のロングヘアーを手に取り、左側の一房にリボンを編み込んで、先の方には花飾りをつけてアクセントとした。
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