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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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 男は、サルヴィン川を目指していた。他にローブ姿が二人、それに続いている。
 キマクに近付くと、ぽつぽつと、ときおり川沿いに安酒場や宿が目についてくる。彼らの探していたのはこういった場所のようだ。
「こんなところかな……あれなんか、はためには安宿だが、売春宿っぽい。
 これまでの勘でわかる……」
「……」「……」
 旅人の二人は女のようだが、少し嫌な顔をしてみせる。男が平気で売春宿に慣れている様子に対しというだけでもないらしく……
 
 中に入っていく一行。
 いるいる。たちの悪そうな連中…… キマクが内紛状態にあるので、余計荒れている者もいるかもしれない。
 
「一般に知られているのとは別の、コンロン入りできるルートがないだろうか?」
 男は、マスターに問いかけた。
「何故そんなことを知りたい、貴様?」
「最近、教導団がこっちに来ているって噂だから、交易船みたい世間に知られているルートでコンロンと行き来するのは難しくなるんじゃないかと思ってな」
 酒場には、川賊や密輸人等も見られたが、陸路コンロン入りするためには、サルヴィン川を遡上後、支流をボートで行くか、ボートで行かない場合は、速度が落ちるが湿地帯を徒歩で行くしかない。そうすると国境に着く。このルートしかない、ということであった。
 密輸は、国境に教導団の警備隊がいたので思うようにいかないこともあったというが、警備はさほど厚くはなかったし、最近では国境警備隊はすでに全滅しているという噂を聞くという。
「大規模な交易は、かつては主に飛空艇貿易として空路で行われていたというしな」
「ふむ……」
 聴けるのはこんなところか? いや、まだ何か……
「よし、頼むぞ」
「……仕方ないわね」
 嫌そうな顔をしていた同伴の女の一人が、ローブを脱いで、賊の一人に色っぽく迫った。
「ねーえ、他にまだ知っていることはない……?」
 賊どもは女の接客テクニックにつられて親しげな態度に変わってきたが、そのとき、
「おい、女。他人の店で何をやっている? 商売の邪魔をする気か」
 店の奥からやばそうな野郎どもが出てきた。
「おまえら、何か聞き回っているようだが、何者だ? おい、待て!」
 三人は、何とか店の追っ手をふりきって、逃走していった。
ハインリヒ! 何よ、黒羊郷と同じことさせられた挙句にこれな何よ!」
「ちょっと場所がまずかったな。次はもう少しただの宿っぽいとこでやってみよう」
「……またやらされるの」
「しかしヴァリア、そういうわりには接客も随分板について、嬉しそうだったでは……い、痛い!」
「……余計なことを。(まあ、何だか懐かしかったけど。ちょっと複雑)」