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薄闇の温泉合宿(最終回/全3回)

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薄闇の温泉合宿(最終回/全3回)
薄闇の温泉合宿(最終回/全3回) 薄闇の温泉合宿(最終回/全3回)

リアクション

「コイン見つけたんだろ、順位なんていいじゃないか。一緒にのんびりしようぜ」
 アルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)は、ようやくコインを手に入れた未沙に声をかける。
「でも、順位も大事なの! ゆっくりのんびりはまた後でね〜」
 未沙はがばっと湯から上がる。
「そのまんまできてくれよー」
「今日は湯着禁止な〜」
「こら」
 パラ実生と一緒になって、未沙に声をかけているアルフの頭を、エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)がペチンと叩いた。
「女性がいたら、ゆっくりできないだろ?」
「なんだよ、エールヴァントはテスト受けるんだろ、のんびりしてていいのか?」
「こういうのは、参加する事に意義があるんだ。運よくもうコインは手に入れたし、あとはのんびりするだけさ」
 エールヴァントは金色のコインをアルフに見せる。
「ふーん……。合格しないとテストってのは意味が無い気がするんだが……」
「まあ、パートナーの手を借りると失格ということは、コイン探しに熱中している人がのぼせてパートナーが介抱したら失格になるってことだと思うし。真剣に参加している人がそういう事態になったら気の毒だろ? コインの数は少ないとはいえ、なるべく多くの人が合格できるよう気を配るよ。……温泉を楽しみながらね」
 言って、エールヴァントは首まで湯に使って、のほほん、ほっこり温泉を楽しんでいく。
「まー、俺も温泉目当てに合宿に参加したわけだし、のんびり出来るのは嬉しいんだが、時間間違えたかなあ」
 アルフは湯に浸かりながら、更衣室の方に目を向け続ける。
 一糸纏わぬ姿で駆け込んでくる女の子の姿を、目に焼き付けるために。そしてナンパするために!
「長湯をする人はいないようだね。コインも見つけにくくはないみたいだし……。皆合格できるといいねぇ……」
 ほんわりと言いながら、エールヴァントは湯に浸かっている。
「……あのさ」
「ん?」
「いや、なんでもない。俺の邪魔はするなよ」
 それだけ言うと、アルフはまた更衣室の方に目を向ける。
 このテストでは、男子は女湯、女子は男湯に素っ裸で入り、コインをゲットしてこなければならないのだが、どうやらエールヴァントはそれを把握していないようだ。
(幸せそうだからまあいいか)
 そう思いながら、アルフも次なる女の子をわくわく待つのだった。
「こういったものは、、見られたくないとこそこそするからこそ、見つかってしまった時に恥ずかしくなってしまうのですわ」
 アルフが待ちわびていた女子が、湯着をまとって現れる。
「金コインを探させて頂きますわね?」
 そう男子達に微笑みかけたのは、佐倉 留美(さくら・るみ)だ。
 彼女の後ろには、数人の女子の姿がある。男子の姿を見ると「きゃっ」と声を上げて、隠れてしまう。
 テストに参加しようとしたけれど、男子達の声が聞こえるため、全員出て行くまで待ってから、コインをとろうと考えていた少女達だ。
「大歓迎だぜ! ささ、こっちこっち」
 アルフは留美を手招きする。
「温泉に入りに来たわけではありませんわ。尤も、入らなければコインを入手できませんけれど。事情は皆さんもご存知でしょうし、こちらは見ないでくださいませね」
 言って、留美は湯船の側で、湯着をはらりと落とし、体を隠しながら足を湯船に入れていく。
「おおー」
「ごくり」
「手が、手が、手が邪魔だぜ……」
 男子達から、感嘆の声やら下品な声やらが上がっていく。
「あなた方も、早く銀コインを取りに行かないと最終テストに落ちてしまいますわよ?」
 留美は呆れ顔で、男子達に言うが彼等はきっぱり。
「落第上等!」
「あっちの女の子達はがっちりガードしてるだろうしな」
「俺はこの日のために、合宿に来たんだぜ〜」
 などと言いながら、じろじろじろじろ留美を見たり、湯の中にもぐって近づこうとしてきたり。
 留美は大きく息をついて手をひらひら上げて女の子達に合図をした後、入り口からは遠い場所でコインを探すことにする。
 彼女に男子達が注目している隙に、女の子達は大きな布を広げて、互いの体を隠しながら交代で温泉に入って、コインを手に入れて出て行くのだった。
 少女達が出て行った後、留美も集めたコインを手に湯から上がる。
 彼女の白い肌が露になり、男子達からまた感嘆の声があがる。
「もっとゆっくりしていけよ〜。のぼせたら面倒みてくれるってヤツもいるしな!」
 アルフがそう声をかkる。
「結構ですわ。それでは、お邪魔いたしました」
 しかし、相手にせずに留美は、湯着を纏って出ていった。

「あてっ」
 コインが投げ入れられた直後の山側――女性用の温泉で、清良川 エリス(きよらかわ・えりす)が頭を抑えた。
 コインが頭に直撃したのだ。
「そろそろ試験が始まったようですわね。これはとらなければいけませんのよ。ルールですわ」
 ティア・イエーガー(てぃあ・いえーがー)が、エリスの体から湯着を外していきながら微笑みを浮かべる。
「……? い、何時の間にそないな不可思議なルールでけはりましたん?」
 脱がされながらエリスは疑問の言葉を発するが、ティアは聞いちゃいない。
「一人全裸でケダモノの群れの中に向かわせるか、それともケダモノの群れがやってくる場所に……ふふふふ」
「な、何言いうとるの?」
 妙なことを呟いているティアを訝しみながら、エリスは湯船へと入っていく。
「ふは……年の瀬どすなぁ……。。秋の果物沢山採れましたよって……美味しいお菓子沢山作れそうどす〜」
 そして、肩までつかって、リラックスしていく……。
「明かりをもう少し強くしましょうね、うふふふっ」
 ティアはランプに火を点すと、持ってきていた袋の中から、デジタルカメラを取り出した。
「ティア、なんしたはるの? 温泉入る為にきたのちゃいますん?」
「そうですわよ」
「今日は試験日のようでございます」
 ティアと邪馬壹之 壹與比売(やまとの・ゐよひめ)の返答に、エリスは目をぱちぱち瞬かせる。
「銀のコインゲットー!」
 突如、もぐっていた少女ががばっと顔を出す。神楽 授受(かぐら・じゅじゅ)だ。
「よぉございましたなぁ」
 何だかわかってはいないが、授受がとても嬉しそうだったので、エリスも微笑みを浮かべて彼女を祝福する。
「ありがとー! よぉぉし、一番狙うんだから!」
 授受ががばっと湯船からあがったその時だった。
「……………………………………………………」
 彼女の目の前に、なにやら大きな塊が……重 そ う に 、揺 れ て い る で は な い か。
「女湯に入るのは本意ではないが、試験だからやむを得ない。むむ、暗くて底が見えねぇな」
 筋肉隆々の裸体をさらけ出し、湯の中を覗いているのはラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)、『漢』外見年齢34歳だ。
「ぎゃーーーーーーーっ!」
 授受は、逃げるどころか体当たりで、巨こ……いや、巨体を突き飛ばし湯船の中に沈めた後、飛び出していった。
「ふう、筋肉がなければヤバかったぜ」
 即、ラルクはざばっと起き上がる。
「あわわわ、あわわわ。女性、じか……はだ……」
 目の前では、エリスが口をぱくぱくしながら、ラルクを指差している。
 今は女性の時間、しかもラルクが裸であることに酷く驚いているようだ。
「すまない、長居はするつもりはねぇ!」
 ラルクはエリスを見ないよう、湯の中にもぐってコインを探していく。
「手伝って差し上げませんと。ルールですわよ?」
「そんなルール聞いとりません!」
 ティアの言葉に、エリスは反論して後ろに下がった。途端。
「ぎゃっ」
 エリスは何かに躓いて、その何かの上にしりもちをついてしまう。
「失礼」
 ざばりとエリスを支え起こしながら湯の中から現れたのは海豹村 海豹仮面(あざらしむら・あざらしかめん)だ。ラルクの巨……体に隠れて湯の中に飛び込み、コインを探していたのだ。
 泳ぎには自信のある彼だったが、思いのほか入浴中の女生徒の多く、ぶつからないよう湯の中を泳ぎまわることは困難であった。
「すんまへん、すんまへん。ううっ、いや、ここうちが謝るとこでっしゃろかっ」
「うふふふふふっ、もっともっと、楽しませてくださいませ、うふふふふ……」
 ぺこぺこ謝ったり、体を隠したり、逃げようとするエリスをティアは満足そうに眺めながら、ビデオに収めていく。