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「よろしくお願いします」
 白百合団員のレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は、団長の桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)との面談を望んだ。
「よろしくの」
 パートナーのミア・マハ(みあ・まは)も一緒だ。
「よろしくお願いいたします」
 鈴子も立ち上がって、レキにお辞儀をした。
「まず、選挙について意見を出してもいいでしょうか?」
「ええ、お願いします」
 着席して直ぐ、レキの方から発言をしていく。
「現時点は、今の人事のままがいいと思います。桜谷先輩は卒業後もしばらくは籍を残して下さるということですし、神楽崎先輩のようなカリスマを持つ人の後継者はなかなかいないでしょう……。ボクとしては、立候補よりも先輩達に任命してもらった方が問題が起こりにくいんじゃないかと思うのです」
「そうですね……」
「後継者候補としては、班長を務めている人がいいと思います。急に引き継ぎは無理だろうから、ロイヤルガードが行うような仕事以外の仕事をいくつかピックアップして、それをやってもらう。自主性を育てる為に、誰がどの仕事を担当するかは、互いに相談で決め、人数が足りない場所は有志の団員に任せるというのはどうでしょう?」
 考えている鈴子に、ミアがこう補足をする。
「ローマの初代皇帝も足固めをしつつその座についたと聞く。いきなり王だと名乗られて納得する者は居まいて。業務をこなし、それが出来ると認められ、その積み重ねで役職を得れば文句を言う者は出ないじゃろう」
「ですね。団の重職に就くには素行などを含めた実績が必須ですわ」
「これまでの実績も重要ではあるが……過去の重要な事件を見るに、自己判断ではなく上の指示を仰ぐ者が多い様じゃ。確かに確認が必要な事柄もあるが、正直、神楽崎やラズィーヤに頼り過ぎな感が否めぬ」
 腕を組んでミアは言葉を続けていく。
「今はそれでも良いが、いつ何が起こるか判らぬ情勢。きちんと後継者を育てて行くのが団長ならびに副団長の仕事であろう」
「ええ、そうですわ。……ただ、情勢の問題と、それにも関連して優子……副団長が多忙過ぎて、なかなか白百合団についての話し合いが行えていないという事情もありまして」
「勿論わらわも百合園に所属して居るからには手伝いはする。他の団員達もするじゃろうて」
「お願いしますわ」
 鈴子の言葉に、ミア、そしてレキも頷いた後、意見を続ける。
「新入生の中にも優秀な人材が眠っているかもしれませんし、働きによって抜擢する機会があれば、積極的に頑張る子も出てくるのではないかと……」
「ええ、新入生や転入生にいきなり重職は任せられませんけれど、班長や特殊班員として相応しい方はいるかもしれませんわね」
 レキはこくりと頷く。
「表面上は動かず、水面下で少しずつ流れが進むといいね」
「はい。とても素敵なご意見ありがとうございます。参考にさせていただきますね」
 それからレキは問われたいくつかの質問に対して、答えていく。
 まずは将来の夢。
「パラミタに残り、パラミタ中を探検して回りたいです。まだ見ぬ種族がいるかもしれないし……目指せもふもふハーレム」
 そんな答えに、鈴子は笑みを浮かべる。
「パラミタの生活で、困っていることや、気になっていることはありますか?」
「んー……。将来の事かな。これは後で、紙に書いて提出するね」
 ミアの前では言いたくなかったので、レキは笑顔でそう答えた。
 パートナーのミアは魔女だから。
 どうしても自分の方が先に逝くことになる。
 将来の夢として言った探検では『成長を遅らせるor長生きする薬』を探そうと思っている。
 出来るだけ、ミアと長く一緒に生きられるように。
「魔女は寿命が長いからの。瞬きの間くらい共に楽しんでもバチは当たらぬじゃろうて」
 レキの気持ちを感じたのか、ミアがそう言葉を発した。
「へへっ」
 レキは曖昧に、にこにこ笑みを浮かべておく。
「では、親しみを感じている人はいますか? その方は、どのような方ですか?」
「百合園では、七瀬歩さんかな。依頼でも一緒することが多いから。……他校生では、早川呼雪さんかな。ボクと違って、細かい所に気付いて何かしてくれる人」
「ええ、お2人共、素敵な方ですよね」
「うん!」
「最後に、趣味を聞かせてくださいますか?」
「動物をもふもふする事。あと走ることも好き」
 レキの答えに、首を縦に振って、鈴子はメモを取っていく。
「はい、こちらからの質問は以上です。ほかに何かありますか?」
「意見は最初に言わせてもらったから。ボクからももうありません」
「それでは、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
 立ち上がって、ぺこりと頭を下げて、レキはミアと一緒にパーティ会場へと戻っていった。
 彼女が去った後、鈴子はレキのファイルに、特に問題を抱えている様子はないこと、将来有望だということを書き記していく。