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インベーダー・フロム・XXX(第3回/全3回)

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インベーダー・フロム・XXX(第3回/全3回)

リアクション


【5】 GUARDIAN【3】


 ガーディアン第三形態には、実験の結果、偶発的に備わった能力がある。第三形態は複数のガーディアンの融合体だが、その融合している数だけ、生命を持つと言うのだ。その能力は”アダムカドモン”と呼ばれている。
 ガーディアンを覆っていた炎が消える。左右にズレた身体がゆっくりと元に戻り、ダメージを負った身体が再生する。
『我は大海の守護者。我等が神の悲願を見届けるまで何度でも蘇る』
 再び海中に入ると、柱に向かって猛然と接近する。
「側面を敵に向け、盾になるであります!!」
「ヨーソロー!」
 吹雪の命令の下、コルセアは舵を切り、機動要塞・伊勢が柱の前にはだかった。
「イングラハム弾、装填用意!」
「装填、用意!」
 弾頭にイングラハムを詰めた特性砲弾を要塞砲に装填し、二十二号はガーディアンに照準を合わせる。
「目標までの距離、600、400、200……発射!」
 イングラハム弾が目標を捉えた、と誰もが確信した瞬間、ガーディアンは急潜航し、直撃を避けた。
「……なけなしの一発が外れたでありますよ?」
「う、うーむ。照準が甘かったか?」
「たるんでいるぞ、貴様ら!」
 呆然とする二人を、どこからともなく現れたイングラハムが叱責する。
「は?」
 艦橋にいた全員の視線が集まる。
「な、何故ここにいる?」
「何故って。弾薬庫から運び出される気配がまったくないから、出てきたのだ」
「そんなはずはない。発射したのは、間違いなくナノマシン拡散弾頭を搭載した弾……」
 剛利が慌てて、艦橋に駆け込んでくる。
「た、大変だぁ! エメラダがいねぇーーっ!」
「ああっ!!」
「あのバカ! 寝るだなんてウソつきやがって……早く回収してくれ!」
「わ、わかったであります。コルセア、逸れた砲弾の着弾地点に向かうでありますよ」
「り、了解……!」
 しかしその前に。二十二号はあらためてイングラハムを弾頭に詰め、ガーディアンに発射する。今回は十分に引き付けて確実に命中させた。
「さぁ、イングラハム! 内側から破壊するでありますよ!」
 しかし、よく考えてほしい。ナノマシン拡散しているとは言え、弾頭に詰め込んで発射してただで済むだろうか。発射時・着弾時、どちらの瞬間でも高熱が生じる。
「あ……あうう……」
 ナノマシン拡散の弱点である物理以外の属性耐性の減退により、イングラハムは熱で丸焼きにされた。彼はもはや自らを動かす力すらなく、割れた弾頭の隙間から、砂のようにさらさらこぼれ、太平洋とひとつになった。
『罪深き者よ。浄化の炎にて、穢れた魂を清めるがよい』
 次の瞬間、メギドファイアが、柱を守る伊勢を直撃する。巨大な機動要塞と言えども、メギドファイアの生みだす超高熱は、現代の技術で防げるものではない。縦一文字に走った熱線に、要塞は二つに両断された。
「そ、総員、退避であります!!」

「これ以上、被害が拡大する前に、ガーディアンを仕留めなければ」
 再度、柱の破壊を始めたガーディアンを、ゴスホークが迎え撃つ。
 メインパイロットの柊 真司(ひいらぎ・しんじ)とサブパイロットのヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)はすぐさま仮契約書にサインし、魔法少女に変身を遂げる。
「……うう、少し恥ずかしいんですぅ……。あ、あんまり見ないでください」
 フリフリ&ミニスカの魔法少女衣装に、ヴェルリアは顔を赤らめた。
 しかし真司のほうはと言うと、別段気にしてるそぶりもなく、うん、これはとても恥ずかしいな、と努めて冷静に自らのファッションを批評している。
「平気なんですか?」
「んー……、平気と言うか、この上にパイロットスーツ着ちゃえばいいかなって」
「あー、ずるい」
 リーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)を魔鎧化させ、真司は衣装の上に着込む。
「……ん?」
 ところが、魔鎧化したリーラはニーソックスになった。
「思ってたのと違うんだが。と言うか、隠れたのは俺の脚だけなんだが」
「せっかくだから、その服にあった形になったほうがいいかと思って♪」
「……………………」
「……………………」
「まぁいいだろう」
「いいの!?」
 ガーディアンはゴスホーク視認すると、触腕を伸縮させ襲い掛かってきた。
 ガーディアンの第一形態、第二形態に見られた腕部の伸縮攻撃。その第三形態版と言ったところだろう。ただ、厄介さはこれまでの比ではない。何せ9本も腕があるのだ。
「まともに相手はしていられない……。回避を優先する」
「了解。BMIを起動させます」
 ヴェルリアはBMIを起動させ、シンクロ値を80%前後に維持する。
 真司はディメンションサイトと行動予測を駆使し、触腕の動きを先読む。複雑なパズルのような図案が彼の頭の中に構築される。全方位から襲い掛かる触腕の予想軌道を、機体操作に関連づけて、直感的に回避を行う。
 アクロバティックなトンボ返りを交えつつ、ビームシールドで触腕の上を滑るように捌いていく。
「私もフォローします……!」
 ヴェルリアはBMIを通し、アブソリュートゼロによる氷の障壁をイメージする。だが、彼女のイメージした位置に生成は精製されなかった。
「……あれ?」
 もう一度意識を集中させてみるが、やはりアブソリュートゼロは発動しない。
「どうして……!?」
 その間に、真司はプラズマライフル内蔵型ブレードをブレードモードに変更させ、二式との二刀流で触腕を薙ぎ払う。両断された触腕から、紫色の煙が噴き上がり、煙幕のように海中に広がった。
「もらう!」
 行動の自由を奪うため、グラビティコントロールに意識を集中させる。しかし、アブソリュートゼロと同様に発動しなかった。
「何故、発動しない?」
 ガーディアンは急速に間合いを詰め、触腕をゴスホークに振り上げる。
「しま……」
 その瞬間、イルマタルが、ガーディアンに破岩突を食らわせた。
魔法少女グレース・クレイン! 不義密通は、末代まで呪うわよ!」
常闇の使徒・まじかる★アサシン
 メインパイロットの、魔法少女グレース・クレインこと瀬名 千鶴(せな・ちづる)はスロットルを引き絞り、最大出力でゴスホークからガーディアンを引き離す。
 サブパイロットの常闇の使徒・まじかる★アサシンこと、テレジア・ユスティナ・ベルクホーフェン(てれじあゆすてぃな・べるくほーふぇん)に憑依する奈落人マーツェカ・ヴェーツ(まーつぇか・う゛ぇーつ)は、センサーに目を張り、ディテクトエビルに気を張り、触腕に注意を払う。
「気を付けろ。上から来るぞ。回避しろ」
「あらまぁ。忙しない人ね」
 ガネットでならした操縦の腕前で、ジェファルコンを水中専用機のように操る。
「行儀の悪い脚は……こうしてあげるわ」
 ドージェの鉄拳で触腕を三本まとめて貫き、そのまま本体に串刺しにした。
『グガアアアアアアアアア!!』
 ガーディアンの放つメギドファイアを、イルマタルは不規則な軌道で回避。そのまま距離をとって一度立て直す。
「おい、千づ」
 クレインは横目で冷たく一瞥する。マーツェカは慌てて言い直した。
「……御頭領(おかしら)、我に作戦があるんだが……」
「なにかしら?」
「蛸ってなぁ触手の付け根に口があるもんだ。まぁ目の前のデカブツが蛸かって言うと、断言は出来ねぇが。けど、上半身人型で下半身が蛸型ってこたぁ肛門みてぇな何らかの穴はあるかも知れねぇだろ?」
「まぁあってもおかしくはなさそうね」
「そこにだな、一か八か魚雷をブチ込んでみるってなぁどうだい。成功すれば敵の体内に侵入して中からブチのめせるかも知れねぇ」
「悪趣味なこと考えるのねぇ」
「我はそっちが専門なんでな。で、どうだい。試してみねぇか?」
「いいわ。やってみましょう」
『こちらも協力しよう』
 ゴスホークとの通信回線が開き、真司がモニターに映し出された。
『先ほどの借りはなるべく早く返しておきたいんでな』
「律儀なのね。ありがとう。助かるわ」
 高加速状態になったゴスホークは一気にガーディアンの懐に飛び込む。
 ファイナルイコンソードによる視認不能の高速斬撃に、魔障覆滅の技を重ね、瞬時に五連撃を放った。ブレードの描く軌跡が空間を斬り分けるように走り、ガーディアンから紫煙が噴き上がる。
 悶絶するガーディアンが触腕を翻したその時、触腕の付け根に巨大な口を発見した。
「ブチ込め、御頭領ぁ!」
 イルマタルから、怒濤の勢いで発射された魚雷が三発、股の大口に突っ込んだ。
 次の瞬間、ガーディアンは大爆発を起こし、ばらばらに吹き飛んだ。
「天上天下万民太平!」
 クレインは小さくポーズを決める。