リアクション
エピローグ
契約者たち、巨大イレイザー、それに思いもよらなかった瘴気を纏うイコン、ドゥケの働きかけにより遺跡へのイレイザー、インテグラルの攻撃は失敗した。スポーンの住む街にも再び平和が戻った。
そして今回レナトゥスがアピスと接触した事で、アピスは幼児の段階から大人に近い知性を持った。アピスがどうやったのかはわからないが、同時に、巨大光条兵器が安置された遺跡に異変が起こった。遺跡の内部に光源のわからない灯りが点り、停止していた機器類のうち、残存していたものが突如作動し始めたのだ。巨大な光条兵器が微かな光を放つ。
それと同時にゴタートを含むその場にいた研究者達、ルカルカをはじめとする契約者たちは、明るい光に包まれ、奇妙な空間を浮遊する。下方に見えるのは、ニルヴァーナ文明以前に存在したというかつての古代ニルヴァーナの都市だった。異国的なその世界は、生命に満ち、人々が行きかい、生活している。そこは地球にもパラミタにもある、都市の活気に満ちていた。そしてそこに突如として空を舞う、光に包まれたヴァルキュリアたちが現れる。彼女たちが何事か、澄んだ声で叫んだ。不意にそこここから大きさも姿もまちまちな、悪夢そのものといった姿の異形の存在が姿を顕した。彼らの放つ閃光が、毒が、炎が、都市を焼き溶かし、暴れまわる異形が建物も生き物も容赦なく引き裂く。そこここで大地が裂け、建物も人々も深淵の奥に吸い込まれてゆく。
輝く女たちが去ったあと、残されているのは溶け崩れ、ひび割れ、砂嵐とそれによる摩擦で生じる稲妻が照らし出す生命の灯りの消えた荒廃した大地のみ。
ビジョンは不意に消え、巨大光条兵器の輝きも消えた。ゴダートも、研究者たちも、契約者たちも、今見た恐ろしい光景にショックを受けていた。
「終末のとき……神に背く……報いだ……うう……うわああああああああああ!!!!!」
ゴダートが顔面蒼白になり、目を見開いて呻き、叫びだした。
創設のころからアメリカに伝わる古い古い伝承――地球が神の怒りに触れ、全ての生命体を巻き込んで消滅する。その伝承で語られる滅びのさまが、そのビジョンそのものとそっくり同じであったため、ゴタートは古い記憶のはてにあった“神”を感じ取ってしまい、恐怖に囚われパニックに陥ったのだ。速やかに医療班が出動し、ゴダートは鎮静剤で眠らされた。
アクリトはそれを聞き、己こそが唯一絶対と信じる人間は、己の存在の小ささを実感したとき、無意識の奥底の臆病さゆえに纏っていた『虚勢』という鎧が剥がれ落ち、狂気にも似たパニックに陥るものだと分析した。
ドゥケは“ヒトガタ”を自分に渡すようにアクリトに迫ったが、アクリトはソウルアベレイターを完全に信用できない、としてその要請を退けた。そもそも、“光条世界”への入り口を開いた後に訪れるだろう、光条世界からもたらされる「滅び」は無視できない、と。アクリトはまた、スポーンやレナトゥス、アピスが人間らしさという不安定な力を宿し始めていることで、ヒトガタに変化がおき始めていることを併せて告げた。それを聞いたドゥケは、レナトゥス、アピスと会見を図った。
「我々は光条世界への攻撃を行うつもりだ。それがかなえば我らとしてはニルヴァーナ大陸を滅ぼす必要はない。
いいか、今、光条世界への道を開かなければ、世界は光条世界の一方的な干渉を受け続けるだろう。
それはいずれニルヴァーナもパラミタも滅ぶということだ。我らの世界と同じようにな。
よく考えておけ。今……私には新たに考えねばならぬことができた。また会おう」
ドゥケはアクリトにそれだけ伝え、再び姿をくらましてしまった。
こんにちは、鷺沼聖子です。連日猛暑だったり、地域によっては災害が起こるほどの豪雨と、とても穏やかとはいえない日々が続いていますね。一刻も早く穏やかな気候になってほしいと願っています。
今回のシナリオでは、街のスポーンたち、レナトゥス、廃棄実験体――アピスが獲得し始めた人間性、瘴気を纏う謎のイコン――ドゥケの意図や正体。それに関わる皆さんのアクションも多種多様で、拝読していて皆様の熱意が伝わってきました。また、以前は敵でしかなかった存在であるはずが、街で暮らすスポーンやレナトゥスが人間性を獲得することで、皆さんに受け入れていただけて嬉しかったです。創造と滅び、そこに住む者の意思など、少し深めのテーマですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
またよろしかったら、私のシナリオにご参加いただけますと幸いです。