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溜池キャンパスの困った先生達~洞窟探索編~

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溜池キャンパスの困った先生達~洞窟探索編~

リアクション

「行くわよっ!」
 ルカルカ・ルーは気合を入れ【ドラゴンアーツ】と【ヒロイックアサルト】「疾風」を使用。攻撃力、瞬発力、脚力を上昇させる。
「女帝、これを」
 エース・ラグランツが【パワーブレス】をルカルカ・ルーへ向ける。目前には、グレムリンの大群。
「作戦決行っ!」
 ルカルカ・ルーが【最終兵器乙女VSグレムリン〜甘い誘惑〜】のメンバーを振り返り、合図してから持ってきた菓子をばらまく。
 彼女のパートナー夏侯 淵(かこう・えん)もそれを手伝い、飴やガムなどの色とりどりの菓子が足元に広がる。
 エース・ラグランツもそれに応じ、キャンディーをグレムリンの目前へまいた。グレムリンが歓喜の雄叫びを上げ菓子に群がる。
「わーん、なんて酷いことするんだーっ! オイラのおやつなのにー!」
 クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)が悲痛な叫び声を上げた。
「仕方ないだろ。グレムリンを倒すためだ」
「せんせー、教育的にこれってどうなの!?」
 後ろを振り返りクマラ カールッティケーヤが喚いた。えぐえぐといじける。返答が届く前に、ルカルカ・ルーが声を張り上げた。
「ここに集いし勇者集い戦いに臨む〜」
 彼女は【怒りの歌】を歌い、周囲の攻撃力を上げる。さらにその歌声はグレムリンの耳に届き、地面に這いつくばらせる。
「貴様らには往く道も退く道もないと知れ!」
 歌に合わせ恫喝する夏侯淵。【適者生存】を使用し、グレムリンをはじめとした周囲の敵の攻撃力を低下させた。
「うぅ……もったいない」
 そのグレムリンの手の中の菓子を、クマラ カールッティケーヤは恨めしそうに見やって拳に力を込めた。
「おのれグレムリン、食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ。ゆけい最終兵器乙女ルカルカ!!」
「……自分が行くんじゃないんだ、クマラ……」
 びっしとグレムリンの集団を指すクマラ カールッティケーヤにエース・ラグランツが苦笑した。
「最終兵器乙女ではなく、せめて「胸と勇気の美乙女戦士」くらいにしてやれ」
 腕を組み不敵に笑って夏侯淵が言い放った。
「ギギィィイイ!」
「トドメ行くわよ!」
 そのルカルカ・ルーは、起き上がりながら叫ぶグレムリンへ一気に距離を詰め【轟雷閃】を放った。菓子や歌で弱体化したグレムリンはあっけなく倒れる。
 道が開けていく。
 しかし一向に魔物が減る気配はない。
「上からグレムリンが来るぜ!」
 そう告げるのはトーマ・サイオン(とーま・さいおん)。【超感覚】により獣特有の優れた感覚が研ぎ澄まされ、隠れた魔物を察知する。
「不意打ちはさせません」
 にっと笑い【奈落の鉄鎖】を金属の岩陰に放つウィング・ヴォルフリート。【殺気看破】により隠れた敵の位置を把握。
 仲間に攻撃が向かぬための対策。抜かりはない。
「左にアントライオンの流砂があるから気をつけてねぇ」
 言いながら【野生の蹂躙】を使用し、アントライオンに魔獣達をさし向けるのは清泉北都。
 発動している【禁猟区】により、光の届かない魔物の位置も判別が可能になっているのだ。
「魔物は数が多そうだから、こういうのは範囲攻撃を持ってる僕に任せて」
 あとから来る起木保達に呼びかける。
 前を行く者達の攻防が冷めやらぬ中、機械を携えた起木保と同行者達が近づいてきた。

 広い洞窟の中、ライトを使用し進むのは黒脛巾にゃん丸。
「奥はこっちな気がしますよ、先生」
 方向感覚を失わないのは【トレジャーセンス】により機晶姫がいるであろう場所を感知しているからだ。
「先生、先に行くんだ!」
 緋桜 ケイ(ひおう・けい)が起木保の背を押した。
「汚名返上するなら先生も頑張らないとな!」
「あ、ああ……そうだな」
 視界の先で展開される攻防の激しさに、呆気にとられていた起木保は頭を振って気を取り直した。
「いざとなったらオレが受け止めるから大丈夫だ」
「わっちも脇から護衛するってぇことで」
 日比谷皐月が起木保の右隣、蚕養縹が左隣に付いて頷いた。
「分かった。よろしく頼む。それでは……」
 起木保は背負っていた火炎放射機の先端、ホース状のもの手に取った。近付いてくるグレムリンに向け、スイッチを入れ――。
「洞窟内で火炎放射機なんて使ったら、皆酸欠で倒れますよ! ボッシュート!」
 叫び声と共に火炎放射機が起木保の手から離れる。
 風森 巽(かぜもり・たつみ)が火炎放射機を取り上げたのだった。
「き、君、やめてくれ! 僕の機械に手荒なことはするな!」
 手を伸ばし、起木保は火炎放射機を取り戻そうとする。
「この機械は火炎を放射すると同時に酸素を作り出すから大丈夫だ!」
 起木保が必死で叫んだ。
「それにこの洞窟は所々小さな穴があいていて空気の流れもあるから心配無用だ!」
「……本当ですか?」
 疑いの眼を向ける風森巽に、起木保は必死で首を縦に振った。
「……わかりました。返します」
 ほっと息をつき、火炎放射機を受け取った起木保は、グレムリンにホースを向けスイッチを入れる。
 ブォオオオオオオ
 勢いよく飛び出した炎はグレムリンを焼く。
「ギイイッィイイイイ!」
「わああっ!」
 炎で腕が黒焦げになったグレムリンが、起木保に向かってくる。
「下がってください!」
 起木保の前に出た本郷 翔(ほんごう・かける)が【ガードライン】を使用。剣をふるい、グレムリンを両断する。
「もう一匹来ますよ!」
「オレに任せろ!」
 雨宮七日の警告に日比谷皐月が反応。噛み付こうとする牙を剣で弾き押し戻す。
「このっ!」
 起木保は再び火炎放射機をグレムリンに向け、発射。勢いよく飛び出た炎は確実にグレムリンを捕え、炭に変えた。
「先生、今のはちょっとかっこよかったぜ!」
「そ、そうか?」
 緋桜ケイの励ましにまんざらでもない表情をして、起木保は頭を掻いた。その背後で蚕養縹が唸り声を上げる。
「……こんな物騒なことができるからくりだぁ、なんかのひょうしにぶっ壊れちまったらてぇへんだぁ」
 蚕養縹は起木保の背に背負われた火炎放射機を見た。敵への注意もさながら、機械へ注意を向ける。
「そういえば、グレムリンって炎は得意でないんでしたねぇ」
 ゆったりとやってきた譲葉 大和(ゆずりは・やまと)が、ぽつりと呟いた。【博識】を使用しているが、その様子は微塵も見せない。
「なんだか足もとが覚束ないように見えますね」
 その呟きに、ぴくりと反応する起木保。進行方向にいるグレムリンの足元へ火炎放射機のホースを向けた。
「……手がかかりますねぇ……」
 ふう、と息を吐きつつも、譲葉大和は【火術】を発動するため小声で詠唱を始めた。
「はいはい、邪魔だよぉー」
 前に出た佐々良縁は進行方向を塞ぐグレムリンの集団へ【スプレーショット】を放った。ばらまかれる弾がグレムリン達に着弾。
「ギイィイッィィ!」
 鋭い鳴き声を上げてグレムリンが蠢く。逃げる者、倒れる者、向かってくる者、同じグレムリンでも行動は様々だ。
 起木保が攻撃したグレムリンは、土に伏した。
「よし、この調子でやっていけば、僕でもなんとかできそうだ……」
 譲葉大和のアドバイスと火術のおかげとはつゆ知らず、起木保は自身が一発でグレムリンを倒したことに、自信を持ち始めていた。
「名誉挽回のためにも、頑張らないとな」
「自分から何か行動する心意気、良いと思います」
 そう言って起木保に笑いかけた九条 風天(くじょう・ふうてん)は、妖刀村雨丸を構えた。
「ボクに出来る限りお手伝いしましょう」
 言って【奈落の鉄鎖】を前方に展開。重力に干渉し、敵の動きを制限する。グレムリン達が砂の地面に押し付けられる。
 起木保を囲むメンバーの後に、大野木 市井(おおのぎ・いちい)マリオン・クーラーズ(まりおん・くーらーず)が続いた。
「とりあえず誰かと一緒に、だよな」
「もちろんです。市井さんは盾にもなりませんから」
「……それはヒドくないか?」
 話しつつ、大野木市井は、誘導する黒脛巾にゃん丸を見た。
「あの人に付いていけば大丈夫そうだ。援護に回るぜ」
「わかりました」
 頷きあってそれぞれ【光条兵器】、メイスを構えて駆けだした。