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溜池キャンパスの困った先生達~洞窟探索編~

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溜池キャンパスの困った先生達~洞窟探索編~

リアクション

「グレムリンの足元……」
 開け始めた道を少しずつ進みながら、起木保がやや先のグレムリンに狙いを定める……。
「先生、ここは私が!」
 急に背後から飛び出してきた遠野 歌菜(とおの・かな)が、ハルバードを使いグレムリンを突く。
 ふらついたその足元を再び火炎放射機が狙うも、
「先生、危ないっ!」
 と言った遠野歌菜に倒されてしまった。
「先生、大丈夫?」
 輝くような爽やかな笑みで遠野歌菜が振り返った。
「あ、ああ……」
 納得のいかない表情のまま、起木保は歩を進めた。
「攻撃が来そうな予感がしますね……」
 顔をしかめる譲葉大和。【先の先】【殺気看破】を発動しているため予知が可能なのだ。
「どうして僕はこんなところに来ることになったんでしょう?」
 そんな譲葉大和の脇から、首を傾げつつ八神 誠一(やがみ・せいいち)が、ゆったりと前に出た。
「せ〜ちゃん、気にしたら負けなのだよ。せっかくの洞窟探検、楽しまないと損なのだよ」
 その背に声をかけるのはオフィーリア・ペトレイアス(おふぃーりあ・ぺとれいあす)。八神誠一は、首を傾げつつも木刀を構えた。
「まあ、いいか。僕は、なんとなく敵を引きつけてみようかなぁ」
 木刀を振りまわし、構えて挑発。グレムリンの攻撃の矛先を自身に向けさせる。
「回復は任せるのだよ」
 オフィーリア・ペトレイアスは後方でメイスを構え、待機している。
「この有象無象め! えーい、切っても切ってもキリがないわ!」
 薙刀を振り、グレムリンに攻撃を浴びせるスヴァン・スフィード(すう゛ぁん・すふぃーど)が叫んだ。その手に光精の指輪が光っている。
「こうなったらやるしかないのぉ」
 薙刀に力を込め【ツインスラッシュ】を発動。近くにいるグレムリン集団の内二体を攻撃する。しかし集団の数に変動はない。
「まだまだ!」
 薙刀を振り上げ、スヴァン・スフィードが攻撃を続けた。

 起木保の前を行く黒脛巾にゃん丸は、金属の壁にロープをしっかりと巻きつけ振り返った。
 すぐ横にアントライオンのいる流砂。起木保は怖々進む。
「前に蟻地獄と戦った時は、穴にさえ落ちなきゃ……って、先生、速くロープ掴んで!」
「あ、危ないな……」
 流砂に足を突っ込みかけ慌ててロープを掴む起木保。一気に抜けようとしてその足がずるりと滑る。
「うわっ!」
 起木保を庇い、黒脛巾にゃん丸が流砂に飛び込んだ。
「先生、俺打たれ強くないんですから無茶やめてください! カバーにも限度が……わっ!」
 アントライオンが迫ってきて慌てて避ける。
「お二人とも、気をつけてください」
 流砂に巻き込まれかけた二人をウィスタリア・メドウ(うぃすたりあ・めどう)が引っ張り上げた。
「朱華、あなたも気をつけてください」
「わかってるよ」
 バスタードソードをグレムリンに振るっていた十倉 朱華(とくら・はねず)が、応える。
「すまない」
「いいえ」
 頭を下げる起木保への対応はそこそこに、ウィスタリア・メドウは十倉朱華のもとへ駆け寄った。
「思いのほか多いね……」
 群れをなすグレムリンに、十倉朱華が顔をしかめる。
「私がサポートしますから、朱華は攻撃に専念してください」
 ウィスタリア・メドウは【禁猟区】を展開し、さらに【パワーブレス】を使用。十倉朱華の攻撃力を上げる。
「わかったよ」
 応えて起木保の攻撃の矛先を見遣る。目前のグレムリンの大群へと火炎放射機を放出させようとしている。
「先生、僕も手伝うよ」
 言って火炎放射機が火炎を放出する瞬間に合わせ【爆炎波】を使用。
 バスタードソードのまとった炎が、火炎放射機の炎と合わさって広がる。固まって攻撃してくるグレムリン達の足元を焼いた。
「ギィイイイイッ!」
「おー、すごい炎」
 十倉朱華は思わず見とれた。【爆炎波】を当てたグレムリンはもちろん、その周りにいたグレムリンまでもが黒焦げになっていく。
 また少し、道が開けた。

「よし、この調子で行こう」
 段々と自信をつけてきた起木保が、楽しげに火炎放射機を使う。
 嬉々としたその表情にソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が顔をほころばせた。
「前の事件で、伐採ロボットの話をした時も思いましたけど……先生って、本当に機械がお好きですよねー」
「ああ。僕は自分で作った機械を人のために使うことが何より嬉しい。今のところ裏目に出てしまっているが、ここで汚名返上して、再び人の役に立つものを作っていきたいと思っているんだ」
 起木保は眼鏡の下の瞳を輝かせた。と、その背後に白い影が近づいた。
「……汚名返上を張り切ってるところ悪いが、どう見ても先生は『無自覚にトラブルを起こすタイプ』だぜ!」
 背後から雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が起木保をとん、と叩いた。起木保は顔をしかめて雪国ベアを振り返る。
「う……やはりそう思うか?」
 雪国ベアがうんうん頷き、ソア・ウェンボリスも遠慮がちに頷いた。緋桜ケイも同意する。
「今回もそうだと思ったけど、先生は一人だと危なっかしいぜ」
「そうそう、先生にはお目付け役のパートナーが必要なんじゃねーのか? ご主人をあらゆる危険から守る俺様のようにな!」
「……たまに、ベア自身がトラブルを運んでくる気がするんですが」
「そ、そんなことはないぜご主人! 気のせいじゃねーの?」
「そうでしょうか……?」
 言い合う二人を見ながら、起木保は目を細めた。
「……パートナー、か」
 そして洞窟の奥へと視線を送る。光の届かない、奥の奥へ。
「先生、敵がまた来たぜ!」
「あ、ああ」
「援護するから、先生も頑張れよ!」
 言って緋桜ケイが【弾幕援護】を放つ。
「俺様も手伝ってやるぜ!」
 雪国ベアも銃弾を撃ち込み【弾幕援護】を展開。二重の【弾幕援護】に起木保が護られる。
「アントライオンは固そうだな……よし」
 緋桜ケイは【氷術】を使用。一瞬紅く変色した瞳がアントライオンを睨む。冷たさにアントライオンの動きが止まる。
「先生、アントライオンに火炎放射機を頼むぜ!」
「わかった」
 起木保が頷いて流砂の中心、アントライオンへホースの矛先を向け、スイッチを入れる。
「私もサポートします!」
 ソア・ウェンボリスが【火術】を合わせる。 それに気付いた御凪真人が詠唱を始めた。
「これより直接火力支援を行います。効果範囲の方々は回避してください!」
 叫び、合わせて【ファイアストーム】を放つ。三種の炎が一つになった。
 ゴオオオオオォ
 高温になり青色に変化した炎がアントライオンを打つ。固かったはずの外殻が割れ、アントライオンの柔らかな肉が露わになる。
 未だ衰えることを知らない炎はアントライオンを丸焼に変えた。

「こういう戦い方もあるのか」
 頷いて火炎放射機を構えた起木保の肩が、とんとんと叩かれた。
「? 何かな?」
 起木保は朗らかな笑みで振り返る。
「お久しぶりです。土建屋ハーレック興業です」
 スーツ姿で頭を下げるのはガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)だ。
「水没事件の時はご利用ありがとうございました」
「あ、あぁ、あのときの。どうも」
 起木保はどこか上の空で頭を下げた。と、その目前に二本角のブルドッグ顔が現れた。ネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)だ。
 悪魔に似た翼を生やしたドラゴニュート。上半身裸の筋肉質の体が、その強さを物語っている。
「で、ローンの支払いはどうしたんだ?」
「うっ……」
「変な機械の製作にばかり給料をつぎ込んでいるのですか? 支払いが滞っているのに!」
「す、すみません……払います。ちゃんと払いますが……僕は今、それどころではなくて」
 話す間にも、グレムリンが飛んでくる。その攻撃を、ガートルード・ハーレックが避けネヴィル・ブレイロックの拳が打つ。
「仕方ないですね。死なれたら困りますから、護衛しましょう。……が、もちろんタダとは言いません」
「護衛料金も上乗せして請求するからな。覚悟しやがれ」
「は、はい……」
 ネヴィル・ブレイロックの睨みに委縮しながら、起木保は頷いた。
「早く魔物を倒さないとローンが増える!」
 慌てて火炎放射機をグレムリンに向けスイッチを入れる……が。
「? 炎が……出ない」
 何度かスイッチを入切するが、反応はない。起木保は仕方なく火炎放射機をそっと地面に置いて、背負っていた雷発生装置を抱える。
「今度は雷だ……」
 一息ついて、起木保が雷発生装置の電源を入れる。