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消えた池の主を探し出せ!!

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消えた池の主を探し出せ!!

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第二章 池の主はどこ?

「諸君、くれぐれも池から離れすぎないように調査するんだ。それと、泳ぎに自信のない生徒は池には近付かず、周辺を調査したまえ!」
 池に着いたミリアと生徒たちは、引率のアルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)の注意の後、さっそく池の周辺や池の中へと散らばって主を探している。
 だが、中々その痕跡が見つからないようだ。
「長雨もたまには良い物ですが、そろそろ止んでもらわないと困りますよねぇ」
「そうですね〜洗濯物も乾かないから、不便です〜」
 神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)は、曇天を仰ぎつつミリアに話しかけた。
 彼は、池の近くの森で主の痕跡を探すミリアを心配してついてきたのだ。先ほどの休憩から時間が経ち、足の怪我も治ったとはいえ、さすがにまだ心配なようだ。
 ちなみに、翡翠のパートナー榊 花梨(さかき・かりん)レイス・アデレイド(れいす・あでれいど)は――
「ね、ねぇ……池の主を探すぐらいなら、やっぱり池に入らないと駄目?」
「いや、アメンボは浮くもんだろ? それに、あの先生も、泳げないやつは、池に入る必要はないって言ってるし」
 池の周りで主を探し回っていた。
 ミリアの隣を歩く如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が彼女に尋ねる。
「ミリアさんだったら、どうやってこの雨を止ませる?」
 数秒だけミリアは悩み――
「うん〜……どうしましょう〜? なかなか思いつきませんね〜」
 困った笑みを浮かべた。
「逆に如月さんだったらどうしますか〜?」
「ん? そうだな……俺だったら――雲の中に集まってる雨が振る前に、氷術で凍らせてみるかな。まぁ、雪に変わるだけだろうけど」
「でも、いいかもしれませんね〜これからの季節はきっと涼しくなりますよ〜」
 冗談で言ってみたつもりだったが、ミリアは意外と正悟の意見を気に入ったようだった。
「なぁなぁ、ミリア」
「何ですか〜、馬頭鬼さん〜?」
 翡翠のように、ミリアを心配して一緒についてきた生徒がもう一人いた。影暮 馬頭鬼(かげくら・めずき)だ。
「アメンボって、ジャンプするんだろう?」
「はい〜水の上でも陸の上でもジャンプしますね〜」
「それじゃあ、さ。池の主もジャンプするのかな? かなり大きいんだろう? そんなのがジャンプしたら……」
「そうですね〜そういえば考えたこともありませんでした〜」
 馬頭鬼の面白い着眼点に、ミリアからは笑みが零れた。憂鬱な雨の中の探索も、どこか楽しくなってくる。
「ねぇねぇ、ミリアさん〜」
「どうしました〜葵さん〜?」
 そして、ミリアを心配してもう一人、水色のレインコートとお団子頭の少女秋月 葵(あきづき・あおい)がついてきていた。
「ミリアさんはぁ、池の主がいなくなったのってパラ実が関係していると思う〜?」
「どうなんでしょうか〜? たしかに、パラ実生の皆さんがこの池に来ていた痕跡はあるみたいですけどね〜」
 池に着くと、一番最初に目に付いたのがゴミだ。そのほとんどが食べ物の食いカスで、どれもこれもキマク地方特有のものだった。
「パラ実にだって、良い人はいるんだけどなぁ……」
「たしかに、そうですよね〜。でも今はパラ実生の皆さんが犯人なのかどうか、そうでないのか、がんばって手がかりを探しましょ〜」
「うん。そうだねぇ!」
 こうして、ミリアたちは池の主の手がかりを求めて、周辺の森を探し回るのだった。

「おや? 今のは……池の主さんでしょうか☆」
 池の周りを探索していたルイ・フリード(るい・ふりーど)の8.5の視力が、池の底で動く大きな捕らえた。
「どうかしたんですか?」
 同じく池の周りを探索していた朱宮 満夜(あけみや・まよ)が駆け寄ってくる。
「HAHAHA☆ 実は今、池の底で何か大きな影が動いたんですよ☆」
「え!? それってもしかして……池の主ですか!?」
「まだわかりませんが……これは、追ってみる価値がありそうですね☆」
 ルイはニカッと満面の笑みを浮かべた。
「よーしっ。それじゃあ早速池に潜ってみますね!」
 そう言って、満夜は服をバッっと脱ぐ。
 すると――あらかじめ着こんでおいた水着姿に早がわりした。
「えいっ!」
 まるでプールに入るかのような勢いで飛び込んでいった満夜。
「それじゃあ、私も潜るとしましょう! もしもの時のために、用意してきたよかった☆」
 ルイは、ゴソゴソと何かを準備しはじめたようだ。
 ――そして三分後。
「HAHAHA☆ 完璧ですね! 郷に入っては郷に従え。池に入っては池に従えです☆」
 ルイの巨体は緑色の全身タイツ――もとい、緑色の防水スーツで作られた河童の着ぐるみに包まれていた。
「では、行きますよ。おじゃましまぁす!」
 巨大河童は、身体の大きさに似つかわしくない綺麗なフォームで池の中へと飛び込んだ。
 ――そしてそして、十分後。
「ぷはぁ!」
 満夜が、何度目かもわからない息継ぎのために水面へと浮上する。
「う〜ん……何度やっても、池の底に行くまでに息が切れちゃいますね」
 意外と池は深かった。そのため、プールとは違って、底に行くまでに水圧が上がってしまい肺に溜めた空気を消費しすぎてしまうのだ。
 しかし――ルイは違った。
「あれ!? ルイさん、まだ潜ってるの!?」
 満夜は、先ほどからルイが息継ぎをしているのを見ていない。この狭い池で入れ違いになるということはありえない……そう思った瞬間――
「HAHAHA☆」
「キャッ!?」
 豪快な笑い声と共に、ルイが急浮上してきたのだ。
「る、ルイさん……もしかして、今までずっと潜ってたんですか?」
「そうです。こう見えても、肺活量には自信があるんですよ☆」
 肺活量云々の問題では無いと思ったのだが、満夜は言葉を失っていた。
「それより、聞いてください。ついに、池の主を捕まえましたよ。みなさんを呼びましょう☆」
「え?」
 ルイの意外な言葉に、満夜は驚いた。
 そして――
「みなさ〜ん! 池の主さんを捕まえましよ!!」
 ルイの大きな声が、森中に響いたのだった。

「あら〜? 今の声は〜?」
 森の中にいたミリアたちの耳に、ルイの呼ぶ声が届く。
「池の主を捕まえただって!?」
「ミリアさん、行ってみましょう!」
 ミリアと一緒にいた生徒たちは、彼女の手を引き、急いで声のした池のほうに駆けだした。
 すると、そこには――
「HAHAHA☆ みなさん、池の主を保護しましたよ!」
 そこには、巨大な河童が巨大な生物を抱えて立っていた。
「ほら、どうです? 池の主さんですよ☆」
 降りしきる雨を感じさせない満面の笑みで、ルイは生徒たちに抱えていた生物を見せる。
「うっ……そ、それは!?」
 生徒たちは唖然として声が出なかった。
 その中でたった一人、焦ったように駆け寄る人物がいた。アルツールだ。
 そして、普段は冷静沈着な彼がなぜ焦っているのか? それは――
「君! 今すぐソイツを離したまえ! ソイツは、パラミタタガメだぞ!!」
 ルイが抱えているのは、池の主ではなく……それと同等の大きさを誇るパラミタタガメだったのだ。パラミタタガメは、ルイの腕の中でジタバタと暴れている。
「タガメ? これはタガメさんなのですか? HAHAHA☆ はじめて見ましたよ!」
「パラミタタガメの食料は、主に動物の血液だ! しかも、一回の吸血で3リットルもの血を吸うことがある! 今すぐ離したまえ!」
「吸血ですか? でも、このタガメさんは甘えん坊のようです。ほら☆」
 どう見ても、パラミタタガメはルイの太腕に針を差し込んで血を吸っていた。
「き、君……大丈夫なのかね?」
「HAHAHA☆ 大丈夫もなにも、可愛いじゃないですか☆」
 生徒たちは、サッとルイの周りから離れていった。
 そして、数分後。
「おや、なにやら大人しくなりましたね☆」
 ルイの血液を吸っていたパラミタタガメは、あまりの量を吸いすぎたために動きが鈍くなってしまっていた。
「さ、満足したみたいだ……池に返してあげたまえ」
「おぅ、そうなのですか? わかしました☆」
 丸々と太ってしまったパラミタタガメを抱え、ルイが池に近付くと――
「ちょっと待った!!」
 茅野 菫(ちの・すみれ)がルイを止めた。
「そのタガメ、手がかりになるんじゃない?」
「どういうことかね?」
「タガメとアメンボってライバルだって聞いたことがあるんだよ。まぁ、地球での話しだけど。それに、このタガメ……何か伝えたいことがありそう雰囲気なんだよ」
 なるほど。と、アメンボについて知識のある生徒が何人か頷いた。
「なぁ、お前。池の主はどこにいるんだ? 知ってるか?」
 菫は、タガメに話しかけてみる。だが、その言葉を理解できるはずもなく、タガメはジタバタと暴れているだけだ。
 ところが――
「ちょっといい?」
 菫の横に榊 花梨がやってきた。
「あなた、もう一度タガメに話しかけてもらえる?」
「え?」
「あたしはビーストマスターなんだけど、昆虫の声を聞くのは慣れてないの。全神経を集中すれば聞けないこともないんだけど……それだと話しかけることができなくなっちゃうでしょう? だから、あなたにタガメに話しかけてもらって、私がタガメの声を聞くっていうのはどう?」
「なるほど……わかった。やってみるよ!」
 花梨の協力で、菫はタガメと対話を試みるのだった。

「なるほど〜池の主さんは、パラ実生の皆さんが連れていちゃったんですか〜」
 タガメとの対話を終えた菫と花梨の報告で、池の主を連れ去った犯人がわかった。
 やはり、周辺で目撃されていたパラ実生だったようだ。
「でも〜パラ実生の皆さんは、どうして池の主さんを連れて行ったのでしょう〜?」
「それは、タガメにもわからないみたい。ついでに言うと、どこに連れて行ったかもわからないみたいだね」
 タガメとの対話が終わった菫は、悔しげにしていた。
 池の主とタガメは、やはりライバルのような関係で、それを知った彼女はタガメに池の主を必ず連れ戻すと約束したのだった。
 言葉は通じないが、二人には確かに熱い友情が芽生えたのだ。なぜか。
「でも〜パラ実生の皆さんが池の主さんを連れ出したのはわかりましたけど〜どこに行ったんでしょうか〜?」
 パラ実生が犯人だとわかっても、彼ららの行き先がわからなければ追うこともできない。その場にいた全員が、これからの行動を迷っていた。
 と、そこに――
「みなさん! 来て下さい! こっちにゴブリンらしき足跡が有りますよ!」
 影野 陽太の呼ぶ声が聞こえていた。
 生徒達は、また勘違いじゃないのか? と思いながらも、陽太と満夜のいる方へと駆けていった。
「見てください、この足跡はゴブリンのものですよね?」
 陽太が、駆けつけてきた生徒達にたずねる。
「たしかに、この小さくて鋭い爪の形……間違いなくゴブリンだな」
「かなりの数ね……いった、どれぐらいいたのかしら?」
 ゴブリンの足跡は、複数――それもかなりの数がぬかるんだ地面に刻まれていた。
「それに、人間の足跡も混ざってます」
 陽太が指差した場所には、ゴブリンの足跡に混ざって、明らかに靴で踏んだ跡が残されていた。
「この足跡は、これ以外にみつかりませんでした。たぶん、人間は一人なんだと思います」
 靴の跡は、たった一組だけだ。恐らく、満夜の推理は正しいだろう。
「この足跡……サルヴィン川の方へ続いているようです」
 陽太が、森の奥へと続く足跡を見て呟いた。

「えーと、パラミタアメンボに関する本は……」
「エース、向こうでこんな本を見つけてきたけど、役に立ちそうじゃないかい?」
 ここは、イルミンスール魔法学校内の大図書館。
 静謐な空気が辺りに漂う中で、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)とパートナーのメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)は、朝からずっとパラミタアメンボに関する文献を探していた。
「2019年度版シャンバラ水生生物図鑑……たしかに使えそうだな。さっそく見てみよう」
 エースは、メシェから受け取った図鑑を広げる。
「えーと……パラミタアメンボ――パラミタアメンボは古代シャンバラ王国の時代には数十種類いたと記録されている。しかし、現在は環境の変化等により数種類だけしか確認されていない」
「たしかに、昔はキマクなんかにもいたんだけどね。今は見かけなくなってしまったよ」
 五千年の時を生き長くパラミタ大陸に住んでいるメシェは、昔を懐かしむように目を細めた。
「そうだ。そういえば昔……と言っても、もう千年近く前の話しになるけど、夜の森で綿飴の匂いがしてきたことがあってね。当時、綿飴は意外と高級品だったんだ」
「綿飴? 森で綿飴なんて、変な組み合わせだな?」
「あぁ、私も最初は何かの間違いじゃないのかと思ったんだけどね。匂いのするほうに言ってみると、パラミタアメンボとパラミタタガメが戦っていたんだ」
 ちなみに、シャンバラ水生生物図鑑にも載っているのだが、パラミタアメンボとパラミタタガメは古代シャンバラ王国時代から敵対していたことが記録されている。
「後で聞いた話しなんだけど、パラミタアメンボは強いストレスを受けると、綿飴に似た匂いを発するんだ。おそらく、パラミタタガメとの戦いが原因だったんだろうね」
「なるほど。日本じゃ、アメンボからは飴の匂いがするっていうけど、パラミタじゃ綿飴の匂いなのか」
 エースは、図鑑の内容とメシェから聞いた話しをメモすると、サッと携帯電話を取り出した。
「――よしっ。今調べたことをルカに伝えなくちゃな」
 そういって、エースはルカルカの携帯に電話をかけたのだった。

「あ、エースから電話だ!」
 ルカルカの携帯が着信を告げる。かけてきたのは、イルミンスールにいるエースからだ。
「もしもし、エース?」
『調子はどうだ、ルカ?』
「まぁまぁって感じ。そっちは何かわかった?」
『あぁ。メシェが協力してくれたおかげで、だいぶ面白いことがわかったぜ。まず最初に、パラミタアメンボは汚い水じゃ暮らせないらしい。池の水はどうだ? 汚れてないか?』
「う〜ん、そうだね……」
 ルカルカは、一度辺りを見回して――
「だいぶ汚れてる……」
 と、池の惨状を伝えた。
「でも、水の汚れがアメンボのいなくなった理由じゃないと思う。実際、パラ実生とゴブリンがアメンボを連れ去ったって情報が入ってきたの」
『本当か?』
「うん。間違いない情報だよ。そして、今から全員でそのパラ実生とゴブリンを追おうって話しになったの」
『そうか、わかった。それじゃあ、手がかりになるかどうかわからないけど、教えておく。パラミタアメンボは、綿飴の匂いがするらしい。こっちもまた何か分かった連絡する』
「綿飴……? う〜んわかった。それじゃ、こっちも何かあったら連絡するから。またね!」
 
「え? ミリアさん、それに……いるみんまで、ここから先は道案内が出来ないってどういうこと?」
 生徒達の意見は、ゴブリン達の足跡を追うということに決まった。おそらく、この足跡を追っていけば、池の主を見つけられる可能性が高いと予想したからだ。
 しかし、ここでミリアとイルミンスール森の精 いるみんは意外なことを言い始める。
 彼女等は、この足跡が続く先――キマク方面にはあまり詳しくないというのだ。
 ミリアは純粋にこの先に行ったことがなく、いるみんはこの先は自分の管轄外――つまり、縄張りの外なのだ。
「いろいろ、人間の知らない所で複雑な縄張り争いってのがあるんだ。すまねぇ……」
 そう言って、いるみんは悔しそうしていた。
「クソッ! どうすればいいんだよ!」
 一人の男子生徒が、吼える。
 このまま足跡を追っていくにしても、途中で足跡が消えていたら、生徒達が迷ってしまう。迂闊に動けない状況だ。
「せっかくここまで来たのに……申しわけありません〜」
 ミリアが申し訳なさそうに頭を深く下げる。
「大丈夫だって! ミリアさんのせいじゃないよ!」
「でも、これからどうしようか……」
 生徒達もどうすればイイかわからず、途方に暮れていた。
 と、その時――
「それなら、あたしが案内する……」
 木の陰から御子神 鈴音(みこがみ・すずね)と、彼女の頭に乗ったパートナーのサンク・アルジェント(さんく・あるじぇんと)が現れた。
「誰だお前!」
 男子生徒の一人が、素早く剣を抜き構える。
「大丈夫、私は敵じゃない……たまたまフィールドワークに来ていたら、あなた達を見つけた……『幸せの歌』が聞こえたから……」
 先ほどのピクニックの時に、メイベル・ポーターと咲夜 由宇の歌った『幸せの歌』がたまたま鈴音の耳に届いていたのだ。
 しかし、男子生徒は納得しない様子だ。
「それじゃあ、どうしてその歌を聴いたときに出てこなかった!?」
「それは……」
 男子生徒の言葉に、鈴音は俯いて黙り込んでしまう。
「なんだよ!? やっぱり何か企んで――」
「違う! スズは話しかけるのが恥ずかしくて、タイミングを待っていただけなんだよ!」
 突然、男子生徒の意見に鈴音の頭に乗ったサンクが猛抗議した。
「スズはちょっと引きこもりがちだから、自分から話しかけるのになれてないんだ! だから――モファ!?」
「喋りすぎ……」
 頭上で暴れるサンクの口を、鈴音は手で覆い隠した。その表情は、どことなく恥ずかしがっているようにも見える。
 だが、男子生徒は納得したようだ。
「そうか……ごめんな。疑って悪かったよ」
 それが本当に納得したのか、同情なのかはわからないが。
 
「それじゃあ、俺達はここに残って池の環境を整えておくからな」
 生徒達の殆んどがパラ実生とゴブリンを追うことに決まったが、七尾 蒼也(ななお・そうや)はここに残ることに決めたのだった。
 彼はエース・グランツの報告を聞いて、パラミタアメンボが戻ってきたときのために、散らかり放題の池の環境を改善しておこうと決めたようだ。
 そして――
「アメンボが戻ってこれるように、私もここに残るね」
「ちょうどこの前、魔法実験部で水の性質を変化させる魔法薬を作成したので、水に浮いた油などはこの薬でどうにかなると思います」
 フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)と、パートナーのルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)も残るようだ。
「みなさん、池に入ってパラミタタガメさんに襲われないよう気をつけてくださいね〜?」
 残る三人を心配するミリア。
「大丈夫だ、ミリア。パラミタタガメは飢えてないと獲物を襲ったりしないから」
「そうですか〜? それならいいんですけど〜……他にも色々と気をつけてくださいね〜」
 最後まで心配するミリアに困った笑みを浮かべながら、三人は作業に取り掛かる。
 そして、他の生徒達も――
「よし。ここからはなるべく急ぐぞ!」
「うん。絶対にパラ実生とゴブリンを捕まえるわよ!」
 パラ実生とゴブリンを追って出発したのだった。