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作ろう! 紙ペット動物園

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作ろう! 紙ペット動物園

リアクション

 紙ペット達の鳴き声が、混ざり合って響く。
 クラーク 波音(くらーく・はのん)が多くの紙ペット達を前に、にこにこと微笑んでいた。
 紙ウサギ・紙ゾウ、紙キリン、紙カンガルー、紙ライオン、紙パンダ……それぞれ二体ずつ。
「さぁみんな、パレードの仕方を教えてあげるよっ!」
 楽しげに宣言すると、応じて紙ペット達が鳴いたり、身体を動かす。
「二人共、手伝って」
「はーい、ララ手伝うよぉ〜」
「しっかり教えましょうね」
 ララ・シュピリ(らら・しゅぴり)アンナ・アシュボード(あんな・あしゅぼーど)が呼び掛けに応じ、クラーク波音の後ろにつく。
「あたしが『せいれーつ』って言ったら、こうして一列に並ぶんだよっ!」
 紙ゾウと紙ライオンが鳴き、紙ウサギや紙キリンや紙カンガルーや紙パンダがこくりと頷く。
「次にー、『行進!』って言ったら、こうして進んでね。足を合わせて、右、左、右、左っ!」
 ぱんぱん、とクラーク波音がリズムをとるように手を叩く。
「こんな感じだよ♪ どうかなみんな、できそう?」
 彼女の問いかけに、紙ペット達はそれぞれ反応を見せた。どれも、『できる』と主張している。
「じゃあ、やってみよー!」
 拳を掲げると、動物たちも真似して鼻や手や首を掲げた。
「んふふ〜、かーわいい♪」
 ララ・シュピリがその様子に歓声を上げる。
「いくよー。せーのっ、せいれーつ!」
 クラーク波音の呼びかけに応じ、動物たちが綺麗に一列に並んだ。
「ふふっ、上手、上手」
 アンナ・アシュボードも優しく見守る。
「次、行進っ! 右、左、みぎ、ひだり」
 手を叩くリズムに合わせ、てくてくと紙ペットが進む。ぴったりとはいかないが、幼児が行進する程度に揃っている。
「うまい、うまい! みんな、おりこうさんだね♪」
「ララもやる〜! みんな、太鼓に合わせてお遊戯だよぉ〜」
 おもちゃの小太鼓を取り出し、ララ・シュピリが紙ペット達に呼びかける。
「一回叩いたら、ぴょんって跳ねて回って。こうだよぉ」
 たん、と太鼓を叩いて、彼女自身が跳ねてくるりと回った。
「やってみてねぇ♪」
 試しに、太鼓を叩く。跳ねる高さは違うが、どの紙ペットもぴょこんと跳ねてくるりと回った。
「物覚えが早いですね」
 アンナ・アシュボードが紙ペット達に笑いかける。
「じゃあ次は〜……二回叩いたら、一緒に鳴いてねっ」
 ててん、と叩く。紙ペット達は一斉に鳴いた。
「おっけー♪ じゃあ最後に、並んで御挨拶だよぉー」
 ででででででん、連続して叩き、ぺこりと頭を下げる。促すと、紙ペット達は指示されたとおりに頭を下げた。
「これで一通り教えましたね。あとは、本番に備えて練習あるのみです」
 アンナ・アシュボードの言葉に、クラーク波音もララ・シュピリも頷いた。
「本番に向けて、頑張ろ〜♪」
 クラーク波音が呼びかける。動物達は応じて高らかに鳴いた。

 パレードの練習のすぐ横の、ペンギン池に見立てた青い紙テープを敷き詰めた場所。
 本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)が紙ペンギンたちの集団を引き連れていた。
「よし、準備はいいか?」
 紙ペンギンたちは、ぱちくり目を動かし、ぱたぱたと羽を動かす。
 毛繕いを始めたり、じゃれ合ったり、本物のペンギンと変わらない動きをしている。
「お散歩コースを教えるから、みんな、ついてきてくれ」
 後ろ向きに進むと、紙ペンギンたちがヨチヨチと、ペタペタとついてきている。
 やや羽を広げてちょこちょこと足を進める姿は、本物さながらで、なんとも愛らしい。
「園内を一周しよう。ここをこうして……」
 本郷涼介のお散歩コース案内は、ゆったりと進んでいく。


 建設に励む者達が作り上げた木製の檻の中へ、紙ペット達が放たれていた。
 時刻は正午。腹を空かせた紙ペット達が鳴く。
 紙イタチや紙タヌキ、紙キツネ、紙ヒョウや紙トラのいるそこへ、バケツを持って七枷 陣(ななかせ・じん)が足を踏み入れた。
 片手に魔法紙でできた肉や野菜を持ち、差し出す――。
「ほ〜ら、餌の時間やぞって、ちょ……おまっ!」
 彼が餌を持っていると知るや否や、柵の中に散らばっていた紙ペット達が群がる。
 獲物を見つけた肉食獣さながら、飛びかかる。
「落ちつ……ぎゃぁああ!」
 手乗りサイズといえど、大量の紙ペットに飛び掛られてはなす術もない。七枷陣は、草の生えた地面に背中から倒れる。
 構わず飛び掛り、餌を求めて四方八方から紙ペットが飛びかかってくる。
「ひぃ、そこは国宝級の価値が……」
 身をよじっても、逃れられそうにない。
「らめぇええ!」
「……阿呆が」
 ため息をついて、同じくバケツを持った仲瀬 磁楠(なかせ・じなん)が七枷陣を一瞥する。
 そしてふい、と顔を背けると、餌を手に取った。
「ほら餌だ」
 そう言って餌を持った手を伸ばすが、紙ペット達はぴくり、と身体を震わせ、くるりと背を向けて逃げ出した。
「…………」
 持て余した餌を差し出したまま、仲瀬磁楠が固まった。
「紙ペットこわい紙ペットこわい紙ペット怖い」
 餌がなくなり、紙ペット達から解放された七枷陣が逃げ出してきた。
「なんという食欲……」
 髪はぼさぼさに乱れ、衣服には汚れが目立つ……ぼろぼろの姿に成り果て、彼は身体を震わせた。
「小僧まで餌に見えたのであろう」
 鼻で笑う仲瀬磁楠。
「お前も食われればいい」
 乱れた髪を掻き上げながら、七枷陣は呪いの言葉を吐いた。


 秋の冷たい風が、葉を揺らしていく。
 草に覆われた地面に腰かけ、朱宮 満夜(あけみや・まよ)がのんびりと魔法紙を折っている。
 ボートの形、紙風船の形、ボールの形……など、色々な形の遊び道具が出来上がった。
「さて、おもちゃ完成ですね」
 立ち上がって伸びをし、向かうのは小動物が納められた檻の中。
「いきますよ」
 ボールを投げると、紙オコジョと紙猫が競うように追いかけていく。
「このボートはどうですか?」
 やや大きめに作ったボートに、紙ネズミ達がチュウチュウ鳴きながら乗り込んだ。
「気に入ってくれたようですね」
 朗らかに微笑んで、傍の紙ウサギを撫でた。
 紙ツルも飛んで来て、紙風船を嘴でつついた。
「うぅーん、こんなのんびりした日もたまにはいいですね」
 紙ペット達の様子を見守りつつ、ほう、と朱宮満夜は息をついた。
 暑さから暖かさに変わった日光が降り注ぐ。

 数の増え始めた紙ペット達を見やりながら、冴弥 永夜(さえわたり・とおや)が餌のバケツに手をかけた。
 その中には、紙ペット達の口のサイズに合わせた、様々な餌が入っている。
 魔法紙の肉、リンゴ、キャベツ、人参などなど。
「パンダはササしか食べないからな……」
 言いながら、紙パンダのもとへ。
「餌だ」
 すっとササを取り出し、紙パンダに差し出す。ごろん、と転がっていた紙パンダは、そっとササに手を伸ばし、ざくざく噛んだ。
「遊んでくれるといいが」
 そう言って、魔法紙製のタイヤを差し出した。パンダはタイヤを持ち上げ、穴に顔をうずめた。
 他の紙ペット達にも、程よいサイズの餌とおもちゃを振る舞う。
 同じ肉でも固いもの、柔らかいものもある。
 野菜も切り方で食べやすさも変わってくる。
「あまり汚すなよ。動物園の開園はこれからだからな」 
 呼びかけつつ、紙ボールを緩く投げてやる。
 思いやりのある飼育員は、餌と遊具両面で、紙ペット達を支えていくのだった。

「かわいいかわいい〜わ〜い〜♪」
 骨や肉などの餌を持って、紙犬達に囲まれるのはミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)だ。
 紙犬達に囲まれ、飛び掛られ、半分襲われるような形だが、本人は気にしていない。
「よしよし〜」
 餌を食べている紙犬の頭や背中を撫でると、紙犬はわおぅと気持ち良さそうに鳴いた。
「そうだ、ボール持ってきたよ」
 ピンポン玉を取り出し、弾くように飛ばすと、腹を満たした紙犬達が一斉に追いかけて行った。
「楽しいな♪」
 機嫌良く微笑んで、ミーナ・リンドバーグは紙ペット達を優しく見守る。