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作ろう! 紙ペット動物園

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作ろう! 紙ペット動物園

リアクション

 小動物が集まる場所で、魔法紙で作った花を、地面に置く朱宮満夜。すぐに紙ウサギが近寄って来た。
「どうぞ、遊んでください」
 にこにこと見守ると……その花を紙ウサギは口にした。
「あ……」
 意外な出来事に、目をぱちくりさせる。
「なるほど……シロツメクサはウサギの好物でしたね。魔法紙でできた物も食べるんですね」
 納得して、今度はちゃんとした遊び道具になるものを作ろうと、魔法紙をまた一枚、折り始めた。
 そのそばでは紙犬に囲まれたミーナ・リンドバーグが、順番に紙犬を撫でていた。
「じゃあ、誰がボールを一番早く持ってこれるか、競争だよっ!」
 そう言って、ボールを投げる。
 紙犬達は一斉にボールめがけて走りだした。
「かわいいー」
 無邪気に笑って、ボールをとった紙犬が戻って来る姿を出迎えた。
「良く頑張ったね」
 頭を撫でて、褒めると紙犬は嬉しそうに「わん」と鳴いた。
「じゃあ、次はキャッチボールしよっ!」
 彼女の遊びは、留まることを知らない。紙犬達も一緒になって、遊び続ける。

 小動物達の脇、【紙ペット同好会】の面々は各々紙ペットに相対していた。
「そうか……紙ペットは魔法で食べてるように見せかけてるだけなんだ。本当に食べられるのは、魔力だけになるってことか」
 魔法紙でできたエサをあげ、持ってきていた食料をあげてみて、緋桜ケイは納得した。
 魔法紙でできた物は、喉を通っている様子が見受けられるが、実際の食品は、口元で消えているように見えたのだ。
「なるほどな」
「おお、上手上手」
 紙ドラゴンが、一羽のツルを折り終えた。
 簡単なものから始めたが、教えたことをどんどん吸収していった結果がこれだ。
「ふむ、学習能力は高いようだ。これなら、客に見せても遜色ない」
 悠久ノカナタは満足げに頷いた。
 その横で、陽気なメロディーが響く。
「みぎ、みぎ、ひだり、ひだり、まえ、うしろ、ジャンプじゃんぷジャンプ!」
 色も種類も色々な紙クマに、行進ダンスを教える雪国ベア。
「可愛いです!」
 小さなクマ達がちょこちょこダンスを披露する様子に、ソア・ウェンボリスは黄色い声を上げる。
「これなら、動物園の人気者間違いなしですね、ベア」
「当たり前だぜ!」
 大きなシロクマは、にっと笑った。

 一方、小動物達のいる場所の端。
「さて、気を取り直して。とってこーい!」
 用意していたフリスビーを、七枷陣が投げる。紙ペット達は我先にと群がる。
 傍にいる仲瀬磁楠はエサを持ち、物欲しそうにそれを見ている紙ツバメ達に差し出す。
「食べるかね?」
 差し出されたエサに、紙ツバメはおずおずと嘴を伸ばした。
 それで大丈夫だ、と感じ取ったのか、小動物達の瞳が仲瀬磁楠を見つめる
「殺気っ!?」
 驚く間もなく、紙ペット達がなだれ込んでくる。
「ま、待て、このようなことは小僧の役目であって私は――うわっ!」
 あまりの力に倒され、なす術もなく固まる。
「俺よりも似合ってるぞ、磁楠」
 心から楽しそうに七枷陣が微笑む。
「うるさい、代われ」
「嫌でーす」
 二人での不毛な言いあいが、始まる。

 小動物が集められた場所のほど近くに、「けんりゅうのひろば」は作られていた。
 芝生が美しく広げられ、垣根とシダは素朴ながらも邪魔にならない装飾となって、広場を彩っている。
「このシダは、剣竜が食べられるものだから、きっと喜んでくれるだろう」
 エース・ラグランツは、仕上がった庭に笑みをこぼした。
「ここで、剣竜とみんなが触れ合ってくれるといいな」
 仕上がりに満足していると、唄声が彼の耳に届いた。
「おさんぽ、おさんぽ♪」
 リードをつけて紙剣竜を連れてくる、クマラ カールッティケーヤの声。彼は、「けんりゅうのひろば」に近付き――。
 通り過ぎようとした。
「クマラ、通り過ぎるな。ここだ」
「おさんぽ、もっとしたかったなー」
 残念そうに言って、広場へやってくる。
「連れて来たぜ」
「よいしょ、と」
 カルキノス・シュトロエンデとルカルカ・ルーもやってきた。
 彼らの両腕には、たくさんの紙剣竜達。
 広場に放すと、各々、のそのそと歩き始めた。
「皆可愛いね」
 そう言うと、ルカルカ・ルーは手乗りサイズの剣竜を持ち上げ、頭を撫でた。
「ここでなら、のびのび暮せそうだな」
 カルキノス・シュトロエンデも嬉しげに目を細めた。
 種を知ってもらうための場所が一つ、出来上がった。

エリザベート・ワルプルギスのいなくなったパラソルの下では、未だに折り紙教室が行われていた。 
「こうして……こう、と」
折り目をつけて、開いて、折って。
 折り紙は、積み重ねから生まれる芸術。
 緋桜遙遠は、一つの折り目、一つの開きを丁寧に折って、芸術を完成させた。
「蝶の完成です」
 満足げに微笑み、緋桜遙遠は出来上がった蝶をみた。
 そして、テーブルに伏している屍……否、蒼澄雪香を見た。
「大丈夫ですか?」
「つかれた〜」
 五分間テントウムシや蝶を折りまくった挙げ句、蒼澄雪香は疲れてのびているのだった。
 作りかけのテントウムシを指先に残したまま、固まっている。
「これ以上無理よ……作れない……」
 最初の五分で集中力と気力と体力を切らし、ずっとこうして突っ伏しているのだ。
「同じ作業の繰り返しは、もう、無理……」
 彼女の周りには、折った蝶と紙ペット化した蝶が散乱している。
「ふあぁー」
 一度起きてまた突っ伏すと、勢いで蝶がひらりと舞い、彼女の茶色の頭の上に輪を作った。蝶の冠だ。
「んー、ちょうちょ、キレイ……」
 寝言かうわ言のように呟いて、蒼澄雪香はそのまま瞳を閉じた。
 ほどなくして、静かな寝息が聞こえてきた。
「雪香さん……」
 苦笑して、上着をかけてやり、緋桜遙遠は魔法紙をまた手に取った。
「遙遠は、折り続けますよ」
 そう告げて、蛇を折り始めた。
「やはり、こうして自分の手で作るのが一番ですね」
 楽しげに微笑んで、折り紙を続ける。

 一方、園の中心でのバトルリングはにぎわっていた。
「最終戦の開始ですぅ〜」
 折り紙教室の面々の状況などつゆしらず、エリザベート・ワルプルギスは告げた.

 第二回戦は、カレン・クレスティア対レティシア・ブルーウォーター、遠野歌菜対シェプロン・エレナヴェート、
 ミスティ・シューティス対ロイ・グラード、エルフリーデ・ロンメル対アーチャー・パジーだったが……。
「さっきは全部引き分けでしたからぁ、今度は勝てですぅ。」
 ぱたぱたと、手を振る。
 リングの上には、カレン・クレスティアと、ミスティ・シューティスとそれぞれの紙ペットが対峙していた。
「はじめるですぅ〜」
「行けっ!」
「頑張って」
 合図から一秒も経たぬうちに、両者が動き出した。
 紙ライオンが爪を露わにして、前足を振り上げた。
「ガァアアオオオゥ」
「そのまま力で押し切れ、行ける……!」
 拳を固く握り、ジュレール・リーヴェンディ が応援する。
 紙ワシも翼を広げる。
 両者の平手が、はたく攻撃が、ぶつかり合う。
 ともすれば火花までちりそうな勢い。平手は相手を叩くことなく、振り下ろされる。
 互角の争いは、終わりを知らない。
「……もういいですぅ」
 深く息をついて、エリザベートワルプルギスは告げた。
「今回の勝負も引き分けですぅ。次こそ、決着を! ですぅ」
 終了すると、ジュレール・リーヴェンディ は大きく拍手した。
「お疲れ様。良い戦いだったな」
 戦いを終えた紙ライオンを撫でる。
「力押しをするのはいいが、その中でも緩急をつけないとならぬのだよ」
 紙ライオンは頷く。
「経験を積み重ねて、強くなるのだぞ」
 握手をして、健闘をたたえる――。
「次ですぅ!」
 エリザベート・ワルプルギスの言葉に頷き、遠野歌菜とエルフリーデ・ロンメルがバトルに臨む。
「始め、ですぅ!」
「いっけぇ! 【フライングはたき】!」
「さっきから技名にフライングつけただけじゃないですか! オビワンっ、ずつきで倒してしまってください!」
 こうして問答無用で、紙フクロウと紙シャチがぶつかり合う。
 ひれで地面を叩いて頭突きをする、紙シャチをひらりとかわし、紙フクロウは羽を広げた。
「今よっ!」
 するとフクロウが広げた羽を、シャチの顔に向け思い切り振った。
 攻撃が避けられた直後の襲撃に、紙シャチはひるんでひっくり返った。
「勝負あり、紙フクロウの勝利ですぅ」
「やった!」
 無邪気に微笑む遠野歌菜。
 肩を落とすエルフリーデ・ロンメル。
 二人は、お互いの健闘をたたえ合い、握手を交わす……。