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リアクション
第8章 屋台でお祭り(2)
いつものようにイルミンスールの周りをウロウロしていたら、愛娘が祭りに誘ってくれた。
「父上、内海の村で、マツリがあるんだって! 一緒に行こう!」
目をキラキラ輝かせて見上げてくるニナ・ドラード(にな・どらーど)を見たとき、ゲイル・ドラード(げいる・どらーど)は一瞬、死んでもいいと思った。
いや死ねる。この子のためなら。つーか、この子にこんな目で見つめられて「渡ろ!」とか言われちゃった日には、お父さんってば三途の川だって渡っちゃうかもだよ。
「マツリって何だろ? みんな、面白いって言ってたけど。父上、知ってる?」
「祭りというのは……そうだな。おいしい物がいっぱい食べられる所だ」
本当は違うが、細かく話してニナに理解できるとも思えなかったので、そう言うにとどめた。
「おいしい物!」
ニナの表情が、ますます輝いた。
「おいしい物! おいしい物! おいしい物!
父上、早く行こう!」
「まぁ待て。相手が私でいいのか? 学園の子たちも行くんだろう? 友達と行った方がよくはないか?」
ゲイル的には全然よくなかったが、というより「じゃあそうする」とか言われたら泣いちゃうかもしれなかったが、ニナのためにはその方が断然いいことだった。祭りとかイベントには友達同士で行って、たくさん思い出を共有し、仲を深める方が、ニナのためになる。
ここは心を鬼にして、突き放すべきか? そう、思案していたら。
「父上と行きたいと思ったんだ。父上は嫌なのか? 人間のマツリだしな…。もしそうなら、1人で行くことにするけど…?」
行 き ま す と も !
一緒に行く友達がいないんじゃないか、なんて問題はとりあえず横にポイして。大体、祭りに男友達ではなく私を誘ってくれたということは、彼氏なんぞもいないということで。
……ぃよし!
お父さん、気合入れてお祭りに参加しちゃうぞ!
「父上! なあなあ、あれだろ? キンギョすくいって」
芋を洗うような人混みのすごさから大事な娘を守るため、肩に乗せて移動していたゲイルは、突然たてがみを強く引っ張られて足を止めた。
「痛い。痛いよ、ニナ」
「オレ、聞いたことあるんだ。屋台では、キンギョをすくったら持って帰っていいんだって。キンギョって何だろ? 知らないけど「ギョ」がつくってことは「魚」だよね!」
「まあ、そうだが…」
しかしニナの認識はどこかズレているようで、素直に頷けない。
「人が邪魔でよく見えないけど、あそこに魚がいるみたいなんだ。だからきっとあれだよ、父上! ねぇ、あそこに行ってよ!」
「はいはい」
ニナに促されるまま、ゲイルはそちらへと向かう。
「すくうっていうのは獲るってことだよな。くれるっていうし。くれるんなら食べていいんだよねっ。楽しみだなぁ、キンギョってどんな味がするのかなっ」
あ、ようやく分かった。
「ニナ、あのね、金魚というのは――」
見て楽しむだけの魚で、と説明しようとしたゲイルだったが。
「父上、オレ頑張っていっぱい獲るよ! いっぱい獲って、父上にもあげるから、2人で一緒に食べような!」
ぶわっとゲイル落涙。
「ああ、食べる。食べるとも」
ニナがくれる物なら何だって。腹壊そうが、寄生虫にやられようが、喜んで食べる。
ゲイルの親バカぶりは、底なしだった。
「……だからね、霜月。想像してみてよ。こうして手をつないで2人で歩いているのもいいけど、この手の間に小さな手がぶら下がって、一緒に歩いたら、すてきだと思わない?」
クコ・赤嶺(くこ・あかみね)は夢見るような表情で、2人のつないだ手を持ち上げて見せた。
先日、蒼空学園で起きた謎のメール事件のさなか「子どもがほしい」というクコのサプライズ発言には心底驚かされた。そしてその動揺から覚めないうちに、いつの間にか「男の子と女の子、1人ずつつくろうね」とかいう話になっていて、気がついたら確定事項のように何かとそのフレーズを聞かされることになっていた。
ショップで子ども服を見れば「ああいう服を着せてあげたい」とか、おもちゃを見れば「こういうのもいずれ必要よね」とか言って買い込もうとしたり…。
「霜月にそっくりの男の子。ふふっ、早くほしいなぁ」
そう言うクコは本当に幸せそうで、幸せな彼女を見るのが好きな赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)としては、何も言えなくなってしまい、とうとう今日まで来てしまったのだ。
今のところ「まだ早いから」とかなんとか説得して、思いとどまらせてきたが、そろそろ限界に近い。
「ああほら、見て、あの2人」
「えっ?」
クコが指差したのは、小さな少女を肩に乗せた獣人だった。
「父上、オレ頑張っていっぱい獲るよ! いっぱい獲って、父上にもあげるから」
かすかに、そう言っている声が聞こえてくる。
少女は獣人の肩からすべり下り、金魚が泳いでいるのを見てなぜかちょっととまどっていたが、ホイと容器を渡されてしゃがむと金魚すくいにとりかかった。
「ああいうのって、いいわよね。もちろん本当の親子じゃないんでしょうけど、でも、あと数年もしたら、霜月もああして呼ばれるんだわ。そして親子で金魚すくいをするの」
もう限界だ。やっぱりこれ以上引き伸ばせない。
「クコ、あのね、そのことなんだけど」
意を決して、霜月はここ数日間、ずっと考えてきたことを言おうとしたのだが。
「なぁに?」
「……岩崖に上ってから、話さないか」
幸せそうにほほ笑むクコに、まるでわりばしのようにアッサリ霜月の決意は折れた。
「そうね。あ、そうだ。名前、何にするか考えてくれた?」
「……うん、まぁ…」
まだチャンスはある。岩崖だ。岩崖で話そう。そう思う霜月だった。
「あっ、チョコバナナはっけん〜」
そう言うなり、進んでいた道からはずれて、目標の屋台へぱたぱた走って行く歩。やがて彼女は、わたがしやりんごアメを握り締めた右手にチョコバナナの串まで挿して、ニコニコ笑顔で戻ってきた。
「お待たせ。小夜子さんのおすすめチョコバナナ、見つけちゃった」
さあ行こう、と先まで進んでいた方向に向き直る歩だったが。
「ああ、歩さん、ちょっとお待ちになって。頬にチョコがついてしまってますわ」
「えっ? どこどこ?」
小夜子がちょっと舌先でしめらせたハンカチの先で、頬でこすれたチョコをふき取る。
「ほら、取れた」
「ありがとう、小夜子さん」
(これって、小さな子がお母さんにしてもらうことよね。なんだか恥ずかしいな)
照れつつも、礼を言った。
「……ちょっと水物がほしいわね」
ぽそっと言ったのは、先頭を歩いていた祥子だった。
道に入って早々購入した大袋入りベビーカステラをずっと食べ歩いていたのだから、それはそうだろう。
「うーさん、ボクも欲しいー」
祥子の次にパクついていた円が手を挙げる。
「あら、そう。じゃあこれ持って」
円にカステラの袋を渡し、ひょいと彼女を肩車した。
「ええっ! うーさんっ! 何これっ」
「肩車。知ってるでしょ?」
「知ってる、知ってるけどっ」
なんで〜?
手足を突っ張ったまま、グラグラ揺れて、据わりが悪い。
「いいから力を抜いて。こけちゃうわよ」
「ううっ…」
言われるまま力を抜いて、おずおずと祥子の頭を抱っこした。そうすると安定感が出て、少しホッとする。
「大丈夫ですか? 円さん」
心配して見上げてくる小夜子に、円は頷いて見せた。
「怖くないー、怖くないよー!」
そう言えたけど、ちょっとだけ語尾が震えてしまった。
高所恐怖症ではないが、肩車ってなんか怖い。
「よく見えるでしょ。このまま歩くから、円は水物屋を探してちょうだい」
「うっ、うん。えーと……あっち」
「あっちね」
ぎゅうぎゅうの人波だというのに、臆することなく祥子は入っていく。
(こうすると、ほんと、遠くまでよく見えるー。背が高い人っていろんなものが見えてんだなー)
動く祥子にぎゅーっと掴まってベビーカステラをほお張りながら、円はそんなことを考えていた。
「ママ、見て。赤いの3つー」
夜魅は金魚すくいの店主から受け取った吊り下げ袋を、後ろのコトノハに掲げて見せた。
ビニールの中には、赤い金魚が3匹泳いでいる。
「あら、かわいいわね」
釣れなかった参加者への全員サービスだ。それでも夜魅はにこにこ笑いながら、大事そうに胸の前で吊り下げる。
「きちんとお世話できる?」
「うん」
「そう。じゃあ、すみません、そちらの酸素玉もください」
金魚鉢は、ガラスのボウルでなんとかなるだろう。数日間あの金魚が生き抜いたら、夜魅の卓上用に新しく鉢を買ってあげればいい。
「ママ、ママ。早く」
夜魅は上手に人の間を抜けながら、小走りに走っていく。
「待って、夜魅。迷子になっちゃうわよ」
「だいじょーぶー。これ、そーたに見せるのー」
ということは、かき氷屋さんか。
コンテストに出る前に、準備中の店の前を通ってきたから、場所は把握してある。万一のことがあってもそこで会えるだろうと分かって、コトノハは特段あわてることなく、夜魅の数歩後ろを歩いた。
くだんのかき氷屋はそう距離がなく、店の前には4人の浴衣女性がいて、結構繁盛しているように見えた。
「そーたー! これ見てー」
てててっと夜魅がかけ寄る。
「はい、お客さん、お釣り。――おっと夜魅。ちょっと待っててくれよ」
と、お釣りを渡した相手と、壮太はじゃんけんを始める。見ると、壮太の屋台には「ジャンケンで買ったらもう1個!」という張り紙が大きく張り出されていた。
「ったー、お客さん強いなぁ。2個買ってくれたから、2個おまけするよ。何味がいい?」
「わーいっ。歩ちゃん、さっちん、何にするー?」
「そうねぇ。イチゴかな、やっぱり」
「私は白雪を」
「はい、まいど!」
壮太は発泡スチロールから氷の塊を取り出して昔ながらの氷削機にセットするとシャカシャカ削り出し、手慣れた動作でかき氷を2つ作って手渡した。
4人の女性はそれぞれかき氷のカップを持って、うれしげに店を離れていく。
「お待たせ、夜魅。どうしたんだ? それ」
「これ、さっきもらったの。かわいいでしょ。だからそーたに見せようと思って」
「そっか。かわいい金魚だな」
ぽんぽんと頭を叩いて、壮太は後ろに控えているコトノハと目を合わせた。
「よぉ。お疲れ」
「あなたもね。盛況じゃない」
「まぁな」
と、前を流れていく人波を見る。最初は社の言葉でちょっと心配したものの、大勢の人の熱気と、屋台や設置された灯篭からの光熱で、かなり周囲の気温は上昇していた。
「夜魅、残念だったな。すごい技出したのに」
「見てくれてたの? そーた」
パッと花のような笑顔になる。
「ああ。ちゃーんと浜で見てたよ。夜魅はすごいなぁ」
「えへへっ。みんな、楽しんでくれたから、いいんだ。あたしもすっごく楽しかったし。
それに、朱里たちが練習に行っちゃったでしょ。あたしまで行っちゃったら、ママ1人でお祭り回ることになっちゃうもん。あたしも、やっぱりママとこうしてる方がいいや」
「そうか。よーし、えらい夜魅に、これはオレのおごりだ。ここに蜜があるから好きな味つけしていいぞ」
と、壮太はかき氷の入ったカップを手渡す。夜魅は「わーい」と声を上げ、イチゴやメロン、ブルーハワイといったシロップで芸術的な絵を描き始めた。
「コトノハもどうだ?」
「あたしはいいわ。さっき浜でもらったし」
「そりゃ残念。これで最後の1個だったんだが」
空のカップを持ち上げて見せる。
「じゃあそれ、俺がもらうわ」
はい代金、と台の上にお金を落とす。そこに立っていたのは、社だった。
「おまえ、なんでここに?」
「お好み焼き屋『やっしー』なぁ、完売御礼で店じまいや。
いやぁ想定外やったで。田舎の祭りもあなどれんなぁ。これやったらもうちっと食材仕入れとくんやったわ」
そう言いながらも心底からうれしそうににこにこ笑っていて、全然くやしそうには見えない。
「……くっ。言っとくけど、オレだって完売だからな」
「分あっとる。俺やて、くたびれて暑いんや。冷とぉて甘いモン欲しいから、それをくれ言うとるだけや」
「……味は?」
「そら、氷ゆうたらイチゴやで」
壮太は黙ってカップを取り、しゃかしゃかかき氷を作って出した。
「ほらよ、壮太特製かき氷マウンテンだ」
どうせカップはもうないのだ。ありったけの氷を使って、山と積み上げた氷にイチゴシロップをたっぷりかける。
「ええんか? これ」
「そのかわり、じゃんけんはなしだ」
ふーん、と社はカップとスプーンを取り上げ、パクッと氷を放り込んだ。
「次はクリスマスやな」
「おう。そのときはオレが先に完売してやる!」
「ははっ。楽しみや」
再戦を約束して、2人は別れた。
「ねぇ佑一さん。シラギさん、どこにいると思う?」
チョコバナナをかじりながら、ミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)が問いかけた。
「えっ? ……さぁ。あのおじいさん、なんだかいろいろちょこまかしているイメージがあるから」
人混みからミシェルを庇うように隣を歩いていた矢野 佑一(やの・ゆういち)が応じる。
「そう! そうなんだよねー。気づいたら、いろんなとこで顔出してるの! 絶対あやしいよ、あのおじいさん」
(ボクのこともひと目で見抜いてたし)
「海が大好きなパワフルおじいちゃんなだけじゃないの?」
「違うよ! もぉ、佑一さんは何も分かってないなぁ」
食べ終わった棒をふりふり、ミシェルは言う。
佑一としては、あれはただの面白おじいさんで、特別不審なところは見受けられなかったのだが、ミシェルの言葉に反ばくするだけの材料もなかったので、黙っていることにした。こんなことでケンカしても始まらない。
ふと流した視線の先、丼物屋とのれんに書かれた屋台にシラギの姿を発見して、佑一はミシェルの肩を取った。
「佑一さん?」
ミシェルが足を止める。
「ほら、あそこ。シラギさんがいるよ」
「えっ!」
パピュン!
ミシェルは残像だけ残して、屋台に突撃していた。
「うーーむ。おいしそうじゃのぅ」
「牛丼、カツ丼、焼肉丼、天丼。どれもお安くなってますよ!」
屋台の向こう側から、にこにこ笑顔でリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)が応対する。
「このほかに、スペシャルメニュー、スイカデローン丼というのもございます!」
メニューに載せた写真を指差した。
「これは?」
「デザートです。切ったスイカをごはんに見立てたかき氷の上にのせて、上からスイカシロップをかけた物でございます。とっても夏らしいひと品となっております」
にこにこ、にこにこ。
本当は、リースとしては明倫館特製デローン丼を作りたかったのだが、残念ながら管理協会ボスからお許しが出なかった。そこで考え出したのがこの「スイカデローン丼」である。
中身は先ほどシラギに説明した通り、かき氷のスイカ味だ。ただし、そこにリースの魔法でひと工夫入る。
それは、ちょっと省略した。最初のうちは素直に話していたのだけれど、それを聞いたとたん、スイカのかき氷に興味を持っていたお客も敬遠しだしたからだ。
(食べ物をおいしくするのは隠し味なんだから。隠し味をばらしちゃ駄目だよね〜)
後ろに回した両手の人差し指で、こっそりバッテンを作る。
「ふむ。そりゃうまそうじゃ。じゃあそれを1つ――」
そこへ、ミシェルが乱入した。
「シラギさーーーーんっ!」
どすん! 勢いそのままシラギの背中に飛びかかろうとする。そんなミシェルをひょいと背中に担いで、シラギは笑った。
「ミシェルちゃんか。久しぶりじゃの」
「こら、ミシェル。失礼でしょう?
お久しぶりです、シラギさん」
「佑一くん、じゃったかの」
シラギの背中からミシェルを受け取って下ろした佑一は、あいさつの会釈をする。
「お元気そうで何よりです」
「おまえさんたちもの。会えてうれしいよ」
「シラギさん、シラギさん、一緒に遊ぼう」
自分に注意を向けさせようと、ミシェルが袖を引っ張って提案をする。
「ほうほう。して、何で遊ぶ?」
「うーん……射的!」
ちょうど隣が射的屋台なのを見つけて、ミシェルが言った。
「いいとも。おまえさんもやるかね?」
「いえ。僕は遠慮させていただきます」
普段銃を扱っている者が、遊びとはいえこういうことをするのはフェアじゃない気がして、佑一は遠慮した。
それに、2人が対決するのを後ろから見ているのも楽しそうだった。
「お客さん…?」
このまま忘れられては困ると、リースがちょっと遠慮がちを装って声がけをする。
「おう。こりゃすまんかったの。それじゃ、そのスペシャルなんちゃらと、天丼をもらおうか。
ちょっと隣で射的しとるから、その間に用意してもらえたらありがたいんじゃが」
「はい、結構です」
リースは嬉々として、スイカデローン丼に込める魔法を練り始めた。
「シラギさん、射的!」
「ほいほい」
「シラギさん、輪投げ!」
「ミシェルちゃんは何が欲しいんじゃ?」
「シラギさん、風船吊り!」
金魚すくい、ボールすくい、etc……はてはべっこうアメでの龍作りから竜神様の型抜きまでしたが、軽くシラギの圧勝だった。
「ミシェルちゃん、大丈夫かの?」
カラになったサイフを手に、肩を落としているミシェルの背中を見て、心配そうにシラギが言う。
「大丈夫です、自業自得ですから」
にこやかに佑一が答える。
「佑一さんっ…!」
ミシェルはちょっと半泣きだ。
「面白く拝見させていただきました。それにしても、お強いんですね」
「祭りはワシの一番好きなモンじゃ。物心つく前から屋台で遊んどった。おまえさんらとは通う年季が違うとるよ」
そう答えたシラギは、笑顔なのに少しだけ、さびしそうに見えた。
何か、遠いものを思い出している、そんな目。
「シラギさん…」
「ほい、ミシェルちゃん。これはおまえさんにあげようかの」
勝負で手に入れた景品の山で膨れたビニール袋を3つ、ミシェルに手渡す。
「えっ? でもシラギさん」
「ミシェルちゃんのおかげで、楽しかったわ。こんなに笑うたのは久しぶりじゃ。
これはそのお礼じゃて。それに、こんな年寄りでは、これだけたくさんのお菓子は食いきれんからの。お友達と浜で食べなさい」
ひょこひょこ、杖をついて去っていく。
ミシェルの手には、あやしげな光を放つスイカデローン丼の袋までが下がっていた。
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