リアクション
◇ ――ツァンダから程なく離れた森の上空。村からわずかに離れた場所を飛行している小型飛空挺ヘリファルテに、男が乗っていた。 その男の名は、国頭 武尊(くにがみ・たける)。只、唯一パンツを追い求める漢(おとこ)。 そんな武尊の視界の端に、村から飛び立ったばかりの小型飛空艇が映った。 正確には小型飛空艇に跨ったシズルのスカートが翻ったのを見逃さなかった、だが。 「ははっ、来たァっ!」 そう叫ぶや否や、若干テンション振り切れ気味に、シズルの小型飛空艇を追う。 (埋蔵金? そんな有るか無いか解らん物よりも……そう、俺の宝は今そこに!) キッチリとスピードを合わせながら、ライフルの標準を小型飛空艇へと向ける。 引き金に指をかけ、今まさに撃とうとした瞬間に、視界に影が入り込む。 更にその影は衝撃を伴って武尊のヘリファルテを森へと落とさん勢いで突っ込んでくる。 「何だ!?」 視界を上げ、見上げた先にはピンクのツインテールが輝いていた。 「シズル様が危ないと思って、付いてきてみれば……邪魔はさせませんよ?」 そう言って秋葉 つかさ(あきば・つかさ)が箒に乗って、挑発的な笑みを浮かべる。それを見て武尊も歯を剥き出しにして笑う。 当然、好戦的な笑みなどではなく、位置関係的にバッチリ見えたつかさのスカートの中に対しての表情だ。 武尊は笑顔のまま、ヘリファルテを強引に駆り出し、距離を置くと座席の上に立ち上がり革手袋を鳴らす。 「邪魔するからには、それなりの覚悟はあるんだろうなぁ!?」 「……そう焦らないで下さいませ」 つかさが、器用に箒の上でスカートの中に手を入れ、下着を脱ぐ。日の光に照らされた脚が眩しく輝く。 そして細い指で脱いだ下着をぶら下げると、そのまま森へ落とした。 「さぁ、たっぷり楽しみましょ……え?」 箒の上で脚を組み替え、妖艶な目で見た先に、既に武尊の姿は無い。 さっきまでヘリファルテが居た場所には、直滑降していった小型飛空艇の排煙だけが残されていた。 「間に合えぇえぇ!」 舞い落ちる下着――いや、宝に向かって、武尊は文字通り『堕ちていった』。 振動と爆音で鳥達が飛び去り、炎が上がる森を見ながら、しばらくつかさは固まっていたが、やがて興味をなくしたようにシズルの後を追うのだった。 ◇ 「ねぇ、知ってる?」 派手な帽子を被った道化の口から、それはまるで史実の様に語られる。モヒカン集団の周りを、踊るようにステップを踏みながら、ゆっくりと。 「御神楽埋蔵金を狙う者は、御神楽の呪いにかかって――ナラカへ堕ちるんだって」 白い肌に溶け込みそうな、真っ白な瞳に瞼を伏せて、そう嘯きながらナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)はクルクルと回る。 当然、聞く耳を持たない者もいたが、中には「マジかよ!?」と驚愕の表情を見せる者もいた。恐怖に彩られたモヒカン頭が、辺りを右往左往している。 ナガンはある程度、噂話を振りまくと一歩退いてその集団を見る。一部ではあるが混乱が起きている様子を見て満足そうな笑みを浮かべる。 「クスクス……とりあえずこんな所でいいか」 薄ら笑いを浮かべながら不意に村の隅に建てられた物見小屋を見上げると、首を傾けて楽しそうな表情を色濃くする。 そして、微かに物見小屋から顔を覗かせていた『誰か』を見つめながら、誰ともなしに呟く。 「噂話は、楽しいなぁ、おい。……まぁ、また後でな」 聞こえるはずの無い相手に語りかけ、ナガンは笑顔のまま森の中へと姿を消した。 |
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