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御神楽埋蔵金に翻弄される村を救え!

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御神楽埋蔵金に翻弄される村を救え!

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第四章 襲撃

 太陽が頭上に上り、眩しい光が地面を照らし始めた頃。
 目の前に音楽堂があるのに襲撃の機会を伺うに留まり、ならず者達の我慢は限界へ達しようとしていた。
「イかせろやぁ!」
「んだてめぇ! 殺られてぇのか!」
 感情が高ぶった暴漢達は既に仲間内で小競り合いを始めるほどに苛立っている。

「黙れコラ!」
 その一括で、ざわついていた男達が静まり返る。何の意味があるのかは定かではないが、高さが他の者よりも倍はあろうかというモヒカンを携えた男が腕を組み、バイクに跨ったまま周りに睨みを効かせる。時折小さく舌打ちなども聞こえるが、一つ咳払いをすると辺りは静かになった。
 目を閉じていたリーダーに、細身の男が耳打ちをしてから小さな紙切れを渡した。
「ほぉ……そうか。まぁいい。捨て置け」
 受け取った紙切れを握りつぶして、その場に捨てると、リーダーは突然目を見開いて大きく息を吸い込む。
 辺りの空気が高揚感と焦燥感に包まれる。ニヤリ、と歯並びの悪い歯をむき出しにしたリーダーが、次の瞬間手を振りかざして叫んだ。

「てめぇら! やっちまえ!」

 怒号にも似た合図。次の瞬間、辺りはエンジン音や奇声が響いた。

「っしゃー!」
「ヒャッハー!!」
「逆らう者は皆殺しだー! ハッハー!!」
「御神楽埋蔵金は俺達のものだー!!」
 などと、口々に叫びながらスパイクバイクのアクセルを吹かして突撃を仕掛けてくるならず者達。
 村を守る為に、バリケードを張っていた者達に緊張感が走る。残っていた僅かな村人達は、まだ完全に構築が終わっていないバリケード部分を捨ててクド・ストレイフ(くど・すとれいふ)の誘導で避難を始めた。
「こっちこっち。……ったく来るのが早いよ。短気はのんき、って言うのにねぇ」
 村人に避難経路を伝える合間に欠伸を挟みながらぼんやりとクドが呟く。
「それを言うなら、短気は損気、です」
「それに暢気なのは貴様なのだ、クド公」
 ルルーゼ・ルファインド(るるーぜ・るふぁいんど)が業務的に淡々とツッコミを入れた後に、ハンニバル・バルカ(はんにばる・ばるか)が地面に落ちていた小石をクドに向かって投げつける。
 クドは上体を反らして回避を見せながら少し慌てて、ハンニバルに向かって困惑した表情を向ける。
「や、顔面狙うのは止めようよ……もう遅いけど」
 半ば諦め気味に呟いた瞬間に、クド達が待機していたバリケードの辺りに銃弾が打ち込まれている音が聞こえた。



 嬉々としてバリケードに迫るならず者達の前に、御剣 紫音(みつるぎ・しおん)が立ち塞がる。
「正義の味方を気取るわけじゃないが、なすべき力があるならやらなくてはな」
 自信に満ちた言葉と共に握り締めた拳を開いて、迎撃の構えを見せた。
 もちろん相手はスパイクバイクに乗っているので、素手でこの行動を取る事を挑発と捉えて紫音に向けて攻撃を仕掛けてくる。
 ――が、紫音はそれより速く相手に詰め寄り、改心の一打を放つ。乗っていたバイクごと浮きかねない衝撃がならず者を襲う。
「逃げたければ逃げな」
 打ち据えた拳をそのままに、紫音は不適に笑う。
 一瞬の出来事に戸惑いながらも周りのならず者達が紫音に銃口を向けると、発砲をする前に辺りに炎の嵐が巻き起こった。
「主様、バックアップはわらわ達に任せるが良いのじゃ」
 聞き慣れた声に振り向けば、紫音の背後に付く形でアルス・ノトリア(あるす・のとりあ)が、禁忌の書を片手に笑顔を浮かべている。
 頭だけ、とはいえ後ろを見せた状態をチャンスだと思ったのか、血煙爪を片手にモヒカンを振り乱して襲い掛かってきたが、綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)が横合いからの射撃で、振り被られた武器ごと押し戻す。
「私らが紫音の背中を護りますんで、あんじょうおきばりやす」
 ロングの黒髪を風になびかせて、風花は銃口の煙を吹き飛ばしてから、微笑んだ。
 さらに風花の背後からはアストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)が紫音へ歩み寄り、
「我が主よ、無法者どもを懲らしめてやりましょうぞ」
 と言うや否や魔鎧となって、紫音の身体を包み込む。
「我、魔鎧となりて我が主を護らん」



 圧倒たる攻勢の中、数人の敵を吹き飛ばした所で、紫音の顔が微かに曇った。
「……?」
 アルスと風花は、それぞれ紫音の顔色の変化に気が付いて、視線で何事かと訴えかける。
 当然目立った外傷なども無く、これだけの戦闘で疲弊するような人間ではない事を二人とも知っていた。
 だからこそ、この状況で霧が晴れないような顔をしていることに問題がある。
「主、顔色が優れんようだが……?」
 自らが着装している鎧、アストレイアに語りかけられて紫音が小さく口を開いた。
「弱すぎる」
 攻め入って来たのは明らかに雑魚以外の何者でもなく、それに加えて妙に数が少ない。
 背にしているバリケードにも大したダメージが見えない中、よく見てみれば後続のモヒカン達は渋い顔をしながらアクセルを吹かすに留まっている。
「いやしかし、主様。少し毛色が違う猫がまぎれているようですぞ……?」
 紫音に背を合わせたアルスの視線の先では、高らかに上がる笑い声と共に、チャクラム――アウタナの戦輪が宙を舞っていた。

「ハッ! 手ぇ抜いてくれなくたっていいんですよ?」
 強襲。まさに言葉通りに、志方 綾乃(しかた・あやの)は現れた。
 大したモーションも無い中、身の回りで不規則な動きを伴う戦輪が紫音達に襲い掛かる。
 目の前を通り過ぎる円状の刃は、皮一枚の所で回避しているが、合間に挟まれる拳がとにかく重い。
「こちらも好きでやってるんじゃないんです」
 そこまで言って、少しだけズレた眼鏡を直しながら、小さく笑う。
 下から浮遊してきた輪を紫音が回避。防御が開いている綾乃に標準を合わせ、引き金を引こうとする風花の視界に輪が飛翔して阻害する。
 射線を確保しようと動いた風花に向かって外野のならず者達が血煙爪で襲い掛かるが、アルスがこれを迎撃。
「けど……ビジネスとなれば話は別ですよね」
 腰を落として人差し指を紫音へ向けた。迎撃や回避に気を取られて、三人が一直線に並ぶ形になっている。
 そのスキを見逃さずに、綾乃は三人纏めて拳で撃ち抜いた。

「さっくり貰ってちゃっちゃと帰るだけなんで、邪魔しないでくださいねー」
 と、吹き飛ぶ三人に手を振る綾乃の眼前に落雷が落ち、次いで間髪入れずに氷嵐が巻き起こる。
「校長の名のついたものを壊すなど……喧嘩を売っているとみて問題なかろうな」
 眉間に皺を寄せる綾乃の前には、怒りに満ちた表情を隠しもせずにイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が立ち塞がっていた。