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イルミンスール湯煙旅情

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17:00 風呂上りに

「じゃ、そろそろ上がるか……」
 ひとしきり温泉を楽しんだ客が上がっていく。
「おい、まだだ、最後の仕上げが残っているぜ」
 着替え終わって部屋へ帰ろうとする皆を呼び止める壮大、その目の前には古めかしい自販機が立っていた。
 自販機にお金を入れ、ボタンを押す……ガコン!
 ……出てきたのはコーヒー牛乳だった。
「くぅ〜、やっぱりコレがないとな!」
 腰に手をあてて一気に飲み干す。
「これはまた、ずいぶん美味しそうに飲んでますね」
 その飲みっぷりにエメが興味を持ったようだ。
「当たり前だ、風呂上りのこいつは格別だぜ、お前も飲んでみな」
 ここぞとばかりに勧める壮大、自販機にはフルーツ牛乳やいちご牛乳もあったが、男ならコーヒー牛乳の一択だ。
「こ、こうですか?」
 先程の壮大の見よう見真似で腰に手をあてる。
「おう、飲み込みが早くて助かるぜ、そのまま、一気だ、飲み干せ」
 ……ゴクゴク……
「……くぅ〜! 確かにこれは美味しいです!」
 新鮮な感動がそこにあった。
「そうだろうそうだろう」
 壮大も満足そうだ。
 この様子に遠巻きに見ていた者達も、せっかくだからと自販機に群がる。
「せっかくだから、もう一杯……」
 と再び自販機に向かうエメを、すかさず止めに入る壮大。
「おっと、それはダメだ、あくまで風呂上りに一杯、二杯目は邪道だぜ」
 一杯だけというのが味を格別なものにしているのだ。
「それは残念……あ、ひょっとしてもう一度温泉に浸かれば飲めますか?」
「そうきたか……なら大丈夫だ、俺も付き合うぜ」
 再び温泉に向かう二人だった。