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イルミンスール湯煙旅情

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イルミンスール湯煙旅情
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11:00 ゆきだるま

 一方、外では四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)が駆け回っていた。
 旅館の入り口に立っているのは霊装 シンベルミネ(れいそう・しんべるみね)、魔法で唯乃の進路上に雪を作る。
「主殿〜どうぞ〜」
 積もった雪道に沿って雪球を転がす唯乃、雪球が次第に大きくなっていく……
「うん、こんなものね、よいしょ」
 手ごろな大きさに育った雪球を重ねてゆきだるまにする。
 一連の作業を数回繰り返し、数体のゆきだるまを配置、そしてシンベルミネが全体に雪を軽く積もらせる。
 あたりはすっかり冬の風景……なのだが……
「なにか、もの足りないわ」
 特に何かを間違えたというわけではないのだが、唯乃は首を傾げる、と、そこに……
「わぁ、すっかり雪景色ですね〜」
 雪に彩られた旅館の風景を見に来た師王アスカだ。
「あ、アスカさん、ちょうどいい所に」
「? なにかしらぁ」
 絵描きのアスカの感性なら何かわかるかもしれない……聞いてみることにした。
「このゆきだるまなんだけど……どう思います」
「小さくてかわいいわね、良いと思うわぁ」
「え、小さい?」
 小柄な唯乃なりにがんばって作ったのだが、確かに少し、小ぶりかもしれない。
「きっとそれだ、旅館の目玉にするからにはもっと大きいのを作らないと……」
 ゆきだるまのひとつを分解する唯乃、とりあえず頭の部分を転がしはじめる。
「大きいのを作るのね〜、なら私も手伝うわぁ」
 と言って胴体の球を掴みあげるアスカ……片手で。
「ええっ!」
 だがアスカはにこやかな表情のまま、それを見て驚くシンベルミネに声をかける。
「ベルミネちゃ〜ん、もっと雪をお願〜い」
「は、はい!」
 雪を作る……先からアスカが雪球に加えていく……雪が追いつかない。
「う〜ん、大きすぎるのもあまりかわいくないのよね〜、これくらいかしらぁ」
 アスカがようやく満足すると、そこには直径2メートルもの巨大な雪球があった。
 そこに頭の部分を転がしていた唯乃がやってくる。
「これくらい大きくすれば……って、えええっ!」
 小柄な唯乃からしたら、それはちょっとした壁だ。
「唯乃ちゃん、もうちょっと大きくしないとバランスが悪いわぁ」
 と言って唯乃の雪球を掴むアスカ、そっちが大き過ぎるんだ、とツッコめる者はいなかった。