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リアクション
第7章 Pillard d‘egage!-略奪者は出て行け!-
「爽快に吹っ飛んでいったね・・・」
空高く飛ばされたジュゲムをブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)が見上げる。
「まぁいいや、もう1プランあるし」
あっさりと彼を放置し、次なる作戦の実行に移る。
その頃、ジュエリンの屋敷の2階では・・・。
「起きて・・・ねぇ、起きて!」
ジュエリンを起こそうと彼女の肩に手をかけ、ミルディアがゆさゆさと揺する。
「ん・・・ここは?」
「あ、やっと目を覚ましたね。ジュエリンの屋敷の中だよ」
「―・・・あの・・・」
「えっとね。ロリオくんは、あいつらの仲間みたいなやつが連れてきた虫を片付けてる・・・ていうか、もう片付けちゃったかも。とにかく彼も無事だから安心して」
「はい・・・」
まだ目の前で王子がアレに変身した時の恐怖で小さく震える。
「ただ篭城するのも、いまいち盛り上がりに欠けるわね。ていうことで、ジュエリンちゃん。着替え、手伝って♪」
「え?はい、それくらいならお手伝い出来ますわ!」
ランチェスターとエリスを着替えさせてやる。
「2階だし、他の生徒は覗く暇なんてないもの。あの妖怪程度に見られても平気だもの」
覗かれても構わないという態度で、手早く服を脱がしてもらう。
「何か着替えているぞ!?」
「くそっ、近づけねぇーっ」
信長が窓に垂らしたオイルと塩のせいで、妖怪たちは特攻不可能だ。
「あのきゅっと引き締まった腰をよく見たいのに!」
「フフッ。入って来れないなんて。まさに生殺しね♪いい気分だわ」
兵たちの視線を集めつつ、2人は学生運動をテーマに昭和を感じる古式ゆかしい白と黒のセーラー服を着せてもらう。
「ミルディアちゃんも、共闘する者として同じ格好しよう!ここに女の子いないから、気にせず着替えられるわよ」
「えっ、あたしも!?」
「あいつらに見られたくなきゃ、カーテンで見えなくすればいいもの。さぁ・・・、さあさあ!」
「えーっと、ちょっと遠慮したかったりするんだけど・・・。目が本気っぽくって怖いよ!?やだ、ちょっと・・・・・・」
ランチェスターに捕まってしまったミルディアは・・・。
「わぁああぁあ!!?」
-ナレーション-
ミルディア、コスチュームチェンジ!
“セーラー服”
「まさか着せ替えさせられるなんて。とほほだよ」
「細かいこと気にしちゃ負けよ♪」
左腕につけた赤い腕章を見せ、右手はパラミタ共産主義学生同盟と書いた赤旗を掲げる。
もう片方の手にはメガホンを持ち、頭には共学同と書かれたヘルメットを被っている。
「香りで外から近づかないようにしてる人がいるみたいだから。入ってきそうなとこだけ、バリケード作っておいたわよ」
侵入口になりそうな箇所を家財道具で塞ぎ、バリケードを構築したエリスが、ランチェスターたちの元へ戻る。
「おつかれ、エリスちゃん♪」
「それじゃあ例の演説、お願いね」
「任せておいて!―・・・・・・っ」
エリスはめいっぱい空気を吸い・・・。
「あたしたちは、パラミタ共産主義学生同盟よ!愛と、正義と、平等の名の下に!特権階級による搾取は、あたしたちが許さない!横暴なる帝国主義者は、パラミタから出て行けー!」
メガホンで叫ぶように演説を初め、外にいる兵たちにシュプレヒコールで士気を下げようとする。
「うるさいぞ小娘っ!!人間だっていろいろ奪い合いしてるじゃないか!?言われる筋合いなんてなぁあいっ」
「うぐっ、痛いところついていくるわね・・・」
即、反論され返す言葉が見つからない。
「ねぇ、エリスちゃん。外に誰かいるわ」
「ん・・・?」
窓の外を覗き込むとブルタが屋敷を見上げている。
「王子、結婚だけが1つの手段じゃないよ。ジュエリンの両親に、王子が婚約者と認めてくれればいいのさ!彼女の両親に貢物をして王子の財力をアピールしてみるのはどうかな?」
無理やり連れ去るより、彼女を落とす方法はあるとブルタがキブに嘯く。
「う〜ん、そうだね」
「でさ、それを用意してくれれば、ボクが両親にいってあげるから!」
「よし。他に方法もないし、それしか手段はなさそうだね」
キブは兵に命令し、財宝を用意させる。
「お〜凄いっ!じゃあ、ボクが王子の代わりに言ってあげるね。えっと、直接中に入るのはちょっと無理そうだから、屋敷の外で言うしかないかな・・・」
王子のためにブルタがジュエリンの両親に説得を始める。
「ジュエリンのご両親!コスプレイヤーの甲斐性なしのロリオより、一国一城(?)の主である王子の方が娘さんを幸せに出来るよ!実は・・・王子は、イルミンスールの悪い魔女の呪いで、ゴキブリに変えられてしまっただけなんだ。本当の姿こそが、変身した状態の可愛い〜少年の王子様なんだよ!!」
少年の財力をアピールしつつ力説する。
「こらぁあ、でたらめ言うんじゃないわよ!」
屋敷の中で聞いていたエリスがぶちキレる。
「うっさぁあぃい!ボクがでたらめ言ってる証拠なんてどこにいるのさっ」
「だったら。丸ごとの玉ねぎやビールを差し出して、ご両親の目の前でどうするか反応を見てあげようか!?」
「その見た目の少年が、お酒なんて妙だものね」
エリスに続けてランチェスターが妨害する。
「まさか、キレイな水がないから。代わりにビール飲んでるっていわないわよね?財力があるなら、お水くらい買えるし。少年がビールを一気飲みとかしたら、ビックリだわ」
「持ってるそれが、自分の物なら・・・だけど?盗品をすぐに使っちゃったら、すぐ警察に捕まっちゃうもの♪」
「ぐぬぬぬっ。言いたい放題言ってくれちゃって〜っ」
本当のことだもの♪と、酷い言葉を並べる2人を睨む。
「それにジュエリンちゃんの恋人のクラスは魔法少女よ?まぁ、ジュエリンちゃんのご両親に、そんなやつ会わせないけど」
「姉でもなんでもないくせに、そんな権利があるのかい!?」
「エリスちゃんと私たちは、彼女と屋敷を守りにきただけよ。別に姉とかじゃないけど、守ってあげたいから来ただけ。人の住処を脅かす者を追い出すのは当然よ!」
「そうそう、私たち何も悪いことしてないもの」
「えぇ、そうよねエリスちゃん♪」
「ボクを見下ろしてないで、外へ出てきなよ?」
「いやよ、行くわけじゃない?」
「つまり、出て行けってことだね」
「そういうことっ」
ミルディアのまとめの言葉にエリスが頷く。
「くぅうっ、ムカツク〜!!」
2人に好き勝手言われまくり、ブルタは悔しそうに地団駄を踏む。
「ランニングチョコレート・・・私の目の前から・・・消えろぉおお!!」
ギュァアァアッ。
アスカがベースを弾き、王子を凍死させようとする。
「うわぁあん、寒いよー!!」
「キブ王子、ここは一旦退こうっ」
ブルタは王子の手を掴み、アスカから逃れようと必死に走る。
「待てぇええ、ランニングチョコレート。この私から逃げられると思うなーーっ」
ベールを弾きながら2人を追い掛け回す。
ブルタとキブ王子。
2人の命がけのデスランニングが始まった。
「こういうのって、袋持ちを殺す時が厄介やね」
屋敷へ入り込んだ七枷 陣(ななかせ・じん)は、煙幕ファンデーションを広場に巻き、ドライアイスを水に入ったポリバケツにとぼとぼと入れる。
カササササササササッ。
「ちょうお手軽な白い煙にパニクッてるな」
隙間にまだ隠れていた者たちが現れ、柱の陰から様子を見る。
「(この騒動でずいぶんと警戒しているようですね。でも、警戒しすぎて出てくるとは・・・。自爆もいいところですね)」
煙に紛れて小尾田 真奈(おびた・まな)は、妖怪の現れた箇所へ本物の白い煙の缶をセットしていく。
「何だ?あの白い煙じゃないな。もう一度隠れるか」
カササササ・・・・・・・・・。
「足に何か引っかかったようだけど?―・・・こ、これは本物の白い煙だぁあ!?」
ブービートラップの糸に引っかかり、煙がシュゥウウッと噴出す。
ブビィイイーーンッ。
羽音と騒ぎ声が広間に響く。
数分後、煙を吸った者たちは、ぽっくりと息絶えてしまった。
「わ、何ですかこの煙!」
ジュエリンの様子を見にきたロリオが思わず口を塞ぐ。
「お〜ちょうどよかった!まだその辺に残ってそうやから、これで退治しようや」
“害虫ジェノサイドスプレー”を、ロリオに手渡すと扉を閉めた。
「うぐぐぐっ、人間め〜っ」
生き残った妖怪が人型に戻り、よろけながら襲いかかる。
「15匹!?しぶとすぎっ!しかも同じツラ・・・」
「ご主人様・・・鳥肌が・・・」
全身に鳥肌を立てる陣を、真奈がちらりと見える。
「―・・・とりあえず、その様子だともうすぐナラカいきやな?おまえらなんて、これで十分やっ!」
プシイィイイッ。
陣は害虫ジェノサイドスプレーを噴射して留めを刺す。
「逃げんな、この害虫野郎!」
妖怪の背中を踏みつけたロリオが、スプレーを容赦なくかける。
「うわっ、なんか口調違くない?」
「そうですか?いつも通りだと思いますけど」
「ご主人様、リビングにもまだ生き残りがいます」
「煙で駆除しきれなかったか。おりゃおりゃおりゃ、完膚抹殺や!!」
ピシュゥウウッ。
「まいったか!」
「おまえが言うなっ」
自分が仕留めたかのように言う彼に、陣がビシッと突っ込みを入れる。
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