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小ババ様の一日

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小ババ様の一日

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「いらっしゃいませ」
 宿り樹に果実では、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)ミリア・フォレスト(みりあ・ふぉれすと)の手伝いをしていました、ここしばらくの休日は、ここで調理やいろいろをお手伝いしているようです。
「どうぞこちらのお席へ」
 トライブ・ロックスターと小ババ様は、ミリア・フォレストによって空いているテーブルへと案内されました。
「うん、これおいしいよ」
 すぐ近くのテーブルでは、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が本郷涼介の料理に舌鼓を打っていました。
「うーん、このサンドイッチとか、ハーブとか何を挟んでるんだろ。あてがいがあるよね」
 セシリア・ライトは、なんとかこの味をモノにできないかと、一所懸命材料や調理法を推理しているようです。
「なんだか、またイルミンスールの森にメイちゃんたちが現れたみたいですぅ。それも、かわいい女の子だったとか。これは、私たちも負けてはいられないですぅ」
 今後の撲殺天使の発展を考えて、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が言いました。でも、セシリア・ライトは、元気に食べ物の方に夢中です。
「あら、小ババ様じゃないですか。こんにちは」
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が、トライブ・ロックスターと一緒にいる小ババ様に気づいて挨拶をしました。
「そういえば、去年のホワイトデーからですから、小ババ様が生まれてからもう一年が経ったのですね。そうだ、ずいぶんと遅くなってしまってはいますが、お誕生祝いをしてあげないと。どうですか、小ババ様。ケーキ食べたいですか?」
「こばこばー、こば!」
 もちろんと、小ババ様が即答します。
「すいませーん、ホールケーキを一つ。ロウソク一本つきでー」
 片手を上げて、フィリッパ・アヴェーヌがミリア・フォレストに注文をしました。
 ややあって、お誕生ケーキが運ばれてきます。ケーキの上には細いロウソクが一本と、本郷涼介が即興で作った、小ババ様のマジパン人形が載っていました。
「こばこばあー」
 楽しげな小ババ様の様子に、他のお客さんたちも集まってきて参加します。
「小ババ様ー、きゃー、ロウソク吹き消すところ、お願いしますのだよ」
 カメラを構えた毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)が、連写しまくります。
「こば、ぷー」
 小ババ様が、ちっちゃな口で、ロウソクの炎を吹き消しました。
 パチパチと拍手が起き、ハッピーバースデーの歌が流れました。
「はい、小ババ様、あーん」
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)が、小ババ様サイズに切り取ったケーキを、スプーン型のコーヒーマドラーの上に載せて食べさせてあげました。餌付けです。
「ああ、巫女さん姿の小ババ様だなんて、なんてなんてレアなのだ」
 写真を撮りまくる毒島大佐でしたが、思わず妄想がそのまま写真にでて、撮った写真の大半がソートグラフィーで他のコスプレ衣装に変化していました。さすがにこれだけバリエーションがあると、後で小ババ様写真集なんかが作れそうです。
「ふふふ、今がチャンスですわ」
 小ババ様が久世沙幸のケーキに夢中になっている隙を突いて、マジックを持った藍玉美海がその背中にナイチチと書こうとしました。藍玉美海としては、書かずにはいられません。むしろ、そのおかげで小ババ様が誕生したようなものなのですから。
「貴様、何をしようとしている」
きゃっ
 後頭部に銃口のような物を突きつけられて、藍玉美海の動きが止まりました。なんのことはない、トライブ・ロックスターが銃型ハンドヘルドコンピュータを押しあてただけなのですが、後ろが見えない藍玉美海は完全にハンドガンだと勘違いしたようです。
「い、いえ、サイン……、そうそう、サインをいただこうと思ったのですわ。あら、色紙はどこに行ってしまったのでしょうか。ほほほほほほほ……」
 藍玉美海が必死にごまかします。
言いたいことは一つだけだ。俺の邪魔をするんじゃねえ!!
 トライブ・ロックスターが思いっきり凄みました。小ババ様のこととなると、歯止めがききません。
「ひーっ」
「もう、ねーさまったら、変なことしないでよね」
 さすがに、久世沙幸が藍玉美海に注意しました。
 
    ★    ★    ★
 
「あちらは、なかなかに盛りあがっているようだの」
 少し離れたテーブルで新入生歓迎会の相談をしていた悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が、小ババ様たちのテーブルをチラリと見て言いました。
「こらカナタ、よそ見をしない。こちらがまとまってからあちらに参加すればいいじゃないか」
 早くまとめてしまおうと、緋桜 ケイ(ひおう・けい)が釘を刺しました。
「べ、別に、混ざりたいとかなんとか、そういうわけではないのだぞ」
 悠久ノカナタが、へたな弁明をします。
「ふっ、俺様以外のアイドルのパーティーなんて、無理に参加する価値なし。祝うなら、俺様を祝え!」
「またベアったら、そんな口を……」
 負けず嫌いの台詞を吐く雪国ベアを、ソア・ウェンボリスが叱りました。
「とにかく、今年もわらわの魔法少女ショーで決まりだな」
やるしかないか……
 問答無用で出し物を決定しようとする悠久ノカナタに、緋桜ケイと雪国ベアが引きつりました。去年の出し物で、調子に乗った悠久ノカナタにあわや殺されかけたことが苦々しく思い出されます。
「そうだ、今年はストレイ☆ソアとスカーレット・カナタのダブル魔法少女というのはどうだ?」
「あっ、それちょっといいかも……。が、がんばりますっ!
 悠久ノカナタの提案に、ソア・ウェンボリスがかなり興味を示しました。
クッ……そうくるか
 緋桜ケイがつぶやきます。
「いや、今年こそは、ゆる族ショーがいいぜ。見てろよ、俺様の大活躍。――小ババ様もそう思うよな、なあ」
 そう切り出した雪国ベアでしたが、誰も賛同してくれないので、無理矢理小ババ様に同意を求めましたが、小ババ様はケーキに夢中で気がつきません。
そこの者、もう諦めよ
 悠久ノカナタが、雪国ベアに言いました。
「うん、ゆる族ショーは却下するとして、他に何かいい案はないかしら。ミファはどう思う?」
 『空中庭園』 ソラ(くうちゅうていえん・そら)『地底迷宮』 ミファ(ちていめいきゅう・みふぁ)に訊ねました。
「そうですねえ、小ババ様に手伝ってもらうというのはどうでしょう。たとえば、小ババ様をモデルにして、大ババ様のスペアボディ試作会なんてどうでしょうか」
「おお、それも面白いかもしれぬ」
 悠久ノカナタが興味を示しました。
「それじゃ、後でキノコで餌付けを試みてみましょうか」
 なぜか、自分で栽培しているキノコをポケットから採りだして、『空中庭園』ソラが言いました。