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リアクション
4.ろくりんぴっく委員会
「続いては、『ろくりんぴっく宣伝PV』です」
暗転した画面から、歓声が聞こえてきた。
満員のろくりんスタジアム観客席で、画面におさまりきらないほどの人々がフィールドで繰り広げられる戦いに熱狂していた。
――それらは例えば、三つの種目を三つのペアで駆け抜ける二人三脚トライアスロン。
――小兵の活躍こそが勝敗の行方を決める、シャンバラ版バスケットボール。
――流れるプールの中で行われる水球。
――「コート外での、敵チームへの妨害OK」とする、仁義無用のビーチバレー。
――機体による接触は愚か、攻撃や撃墜も許可される情け無用の小型飛空艇レース。
中には「借り物競走」や「水鉄砲サバイバルゲーム」、「ドッジボール」、「水鉄砲式カヌー団体戦」、「全長20mのムシを使役し戦わせるムシバトル」など、地球で行われるオリンピックのスポーツとは少し方向性の違うものも多かった。
だが、「契約者」が己が力を振り絞り、戦う様もまた、地球で行われるオリンピックとは違うものだった。
炎が躍る。稲妻が舞う。時には火線が中空を貫き、硝煙が渦を巻く。
金管楽器が鳴らすファンファーレをBGMにして、極彩色の紙吹雪が飛び交う中金メダルを掲げた手がアップになった。
そこに、「ろくりんぴっく」のシンボルマークとロゴと、「来年の冬季ろくりんぴっくを成功させよう!」という文字がかぶさった。
――これがパラミタ大陸の「スポーツ」か。すげぇ、血がたぎるぜ……。
――これがパラミタ大陸の「スポーツ」か。ちょっとついていけねぇ……。
観客席の反応は、まっぷたつに分かれた。
「本PVを企画されたキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)さんにお話を伺います。
これらの映像は、去年開催された『ろくりんぴっく』のですよね?」
「そのとおりネ。スポーツの前には国境なんてないノネ。
去年は夏季大会だったけど、いずれは冬季大会も開かれるはずなので、我こそはと思う人は、今からしっかりカラダを鍛えておいて欲しいのネ」
「いきなり檄を飛ばしてますね」
「大会の成功は、参加する選手のガンバリにかかってるからネ!
そして、新入生の皆さんにも、是非とも去年のあの熱狂を知って欲しいのネ。ミーのいる財団法人パラミタオリンピック委員会の記録映像セットのパッケージがあるから、そっちを是非とも見て欲しいノネ」
「そちらの映像は、どうすれば見る事ができるんでしょう?」
「今なら――ッ!?」
――今ならミーに注文してもらえば、大格安の特別売価で提供――と言葉を続けようとした時、客席の彼方から茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね)の殺気の籠もった視線が飛んできた。
(下らない小遣い稼ぎはやめておきなさいな。ねぇ?)
「? 今なら、何ですか?」
「……今なら、各学校の図書館とか、街の中の大きめの図書館に行けば、視聴覚資料として置いてあるはずなのネ。時間があれば、そっちの方に寄ってみるのもいいかも知れないノネ」
殺気が消えた。
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